同じ「4コア8スレッド」でも中身が違う? AMDが説明する「第3世代Ryzen 3」の秘密
AMDが、5月23日(日本時間)に発売するメインストリームデスクトップPC向けRyzenプロセッサとそれに対応する新型チップセットに関する説明会を開催した。この記事では、その内容を簡単に説明する。
AMDが4月23日に発表したメインストリーム(普及価格帯)デスクトップPC向けCPU「Ryzen 3 3100」「Ryzen 3 3300X」が5月23日、日本でも発売される。税別の想定販売価格は、Ryzen 3 3100が1万1980円、Ryzen 3 3300Xが1万3980円となっている。
両CPUを含むRyzen 3000シリーズプロセッサをサポートする新型チップセット「AMD B550」を搭載するマザーボードも、6月16日(米国太平洋夏時間)から順次パートナー企業を通して発売される予定だ。
このほど、AMDがRyzen 3 3100/3300XとB550チップセットに関する技術説明会を実施した。この記事では、その内容を分かりやすく解説する。
「Ryzen 3 3100」と「Ryzen 3 3300X」は“中身”が違う
Ryzen 3 3100とRyzen 3 3300Xは、共にZen 2アーキテクチャに基づいて設計された4コア8スレッドCPUで、キャッシュメモリは合計で18MB、TDP(熱設計電力)は65W……と、数値だけ見れば「動作クロック(周波数)以外は同一仕様なのではないか?」と思えてしまう。
しかし、両CPUは、内部の構造が異なる。
Zen 2アーキテクチャのCPUは、CPUコアとCPUキャッシュを一体化した「CCX(Core Complex)」が、各種入出力を担う「I/Oダイ」と連結することで“1つのCPU”を構成する構造を取っている。
第3世代RyzenプロセッサのI/Oダイは、最大で2基のCCD(Core Complex Die:CCXモジュール)を連結できる。CCDには2基のCCXが搭載されているが、製品によっては、CCXを1基のみ有効化したCCDを用いる場合がある。
動作クロック以外は同じような構成に見えるRyzen 3 3100とRyzen 3 3300Xだが、両者は搭載するCCDが異なる。
Ryzen 3 3100のCCDは「2コア4スレッド/8MB L3キャッシュ」のCCXを2基備える構成となっている。CCX内のL3キャッシュは、それぞれのCCX内でのみ利用できるため、それぞれのコアが使えるL3キャッシュは最大で8MBということになる。
一方、Ryzen 3 3300XのCCDは「4コア8スレッド/16MB L3キャッシュ」のCCXを1基のみ有効化した構成となっている。Ryzen 3 3100との大きな違いは、全てのコアが16MBのL3キャッシュにアクセスできることにある。全てのコアが1基のCCXに集約されていることで、コア間のレイテンシー(遅延)も極限まで抑制できることもメリットだ。
簡単にまとめると、Ryzen 3 3300Xは、Ryzen 3 3100よりもピーク性能を引き出しやすい設計となっている。
なお、SMT(同時マルチスレッディング)に対応していることや、PCI Express 4.0を利用できることなど、CCDの構成以外はRyzen 3 3100とRyzen 3 3300Xとの間に仕様上の差異はない。
AMDは、Ryzen 3 3100の対抗製品は「Core i3-9100」(3.6G〜4.2GHz、4コア4スレッド)、Ryzen 3 3300Xの対抗製品は「Core i5-9400」(2.8G〜4.1GHz、6コア6スレッド)として性能比較している。同社によるベンチマークテストによると、一部のアプリケーションを除き、おおむね対抗製品よりも良好なパフォーマンスを発揮できたという。
なお、Ryzen 3 3100/3300Xの実力については別の記事で検証しているので、合わせて確認してほしい。
Ryzen 3 3300XとCore i5-9400とのゲーミング性能の比較(1080p、高画質設定)。「Deus Ex: Mankind Divided」(スクウェア・エニックス)を除く全てのゲームでRyzen 3 3300XはCore i5-9400と同等か、より高いパフォーマンスを発揮できたという
CPUとの接続を「PCI Express 3.0」としたB550チップセット
AMD B550は、PCI Express 4.0に対応する「AMD 500シリーズ」チップセットのメインストリームPC向け製品だ。先行するハイエンドPC向け「AMD X570」と同様に、第3世代Ryzenプロセッサ(※)と、現在開発が進められている「Zen 3アーキテクチャ」のCPUをサポートする。
(※)内部的に第2世代RyzenプロセッサがベースとなっているAPU(Ryzen 3 3200GとRyzen 5 3400G)を除く
グラフィックスカード用PCI Express 4.0 (16レーン)、汎用(はんよう)PCI Express 4.0(4レーン)、USB 3.1(4ポート)といったCPU直結ポートと、デュアルGPUサポート機能は、B550でも利用できる。X570との差別化要素は、CPUとチップセットをつなぐダウンリンク接続の規格にある。
第3世代Ryzenプロセッサでは、ダウンリンク接続用にPCI Express 4.0ポートを4レーン確保している。X570ではこのダウンリンク接続をPCI Express 4.0規格で行うのに対して、B550ではPCI Express 3.0規格で行う。ダウンリンクのスペックを抑えることで、価格を抑えた格好だ。
なお、B550の先代に相当する「AMD B450」ではチップセット側の汎用PCI ExpressポートがPCI Express 2.0規格だったが、B550ではPCI Express 3.0規格に“アップグレード”されている。
B550が備えるポートは、PCI Express 3.0(4レーン)、PCI Express 3.0(2レーン)または追加のSerial ATA(2ポート)、Serial ATA(6ポート)、USB 3.1(2ポート)、USB 3.0(2ポート)、USB 2.0(6ポート)となっている。
汎用PCI Expressポートは、CPU直結とチップセット経由で合計10レーン用意される。この10レーンを使って、どのようなポートを用意するかは、マザーボードによって異なる。AMDによると、B550を搭載するマザーボードは60種類以上が開発中だという。
新たな廉価CPU「Ryzen 5 1600AF」も登場
AMDは5月16日、「Ryzen 5 1600AF」(3.2G〜3.6GHz、6コア12スレッド、合計19.6MBのキャッシュメモリ)を日本で発売する。税別の想定販売価格は9980円となる。
Ryzen 5 1600AFは、既存の「Ryzen 5 1600」のCPUコアを「Zen+」アーキテクチャ(12nmプロセス)のものに置き換えた製品で、消費電力とパフォーマンスを改善。コアのアーキテクチャ変更に伴い、付属するCPUクーラーも「Wraith Stealth」に変更されている。
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