「VAIOは成し遂げたい人のブランドに」 設立7年の到達点とこれからをVAIO Z総責任者に聞く:本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/2 ページ)
設立7年を迎えたVAIO。その到達点とも言えるフラッグシップモデル「VAIO Z」を投入し、これからどこへ向かおうというのか。PC事業を率いる取締役執行役員の林薫氏に話を伺った。
何かを成し遂げたい人のために
では次の仕掛け、次の共同開発パートナーは? という疑問につながるが、そこは当然ながら「まだ話せない」という返答だ。しかしながら、新しいVAIO Zを頂点にして、新しいラインアップを作り上げていく中でのコンセプトについては話してくれた。
林氏 スマートフォンやタブレットといった選択肢がある中、ではPCにはどんな役割があるのかを考えてみると、目標が明確に存在する人のための製品になっていることに気付きました。言い換えれば「何かを成し遂げたい人」のための製品です。
かつてソニー時代のVAIO全盛期。PCはデジタルエンターテインメントを楽しむための先端ツールという時代もあった。しかし、今となってはコンシューマー向けのコンピュータとしてコンテンツを消費、楽しむ道具としてスマートフォンやタブレットの方が定着している。
一方でPCは仕事や勉強の道具であると同時に、さらに一歩踏み込んで写真、アート、音楽、動画、あるいはさらに発展してCADを使いこなして造形物を作ってみたり、アプリやWebの制作などを行ったりもできる。
林氏 スマートフォンやタブレットとは異なる「明確な成果」を出したい人のためのデバイスがPC。これはVAIOが掲げてきた「挑戦に火をともそう」というキャッチコピーとも重なります。VAIO自身が新たな挑戦をし続けることで、クリエイティブな人の挑戦をサポートするブランドになっていきたい。そんな気持ちで商品を作り上げています。
新型VAIO Zも既成概念の中にある13〜14型クラスのモバイルノートPCという枠組み、搭載するCPUファミリーの枠内で作るノートPCに期待される成果を逸脱した、異なる立ち位置の製品を目指したという。
林氏 VAIOの事業規模はまだまだ小さい。しかし、こうしたブランドとしての考え方を理解してくれている方も少なからずいらっしゃいます。そうしたブランドコンセプトを共有していただけてるファンの方々の思いを大切にし、自分の子供たちや知人に「それをやりたいならVAIOがいいよ」と勧めてもらえるメーカーが理想ですね。
数量増ではなく共感される製品を
もっとも、ドライカーボンを用いた3D造形のシャシーなどは、よりカジュアルな製品には使いにくい。コストや生産性の問題もあるからだ。Zのコンセプトを生かしながら、ユーザーの裾野を広げる取り組みも考えているという。
林氏 まだ具体的に開発が進んでいるわけではありません。しかし単に安くなっただけで、VAIOのエッセンスが感じられない製品では意味がありません。数を狙うのではなく「○○だから」といった明確な理由で指名買いをしてもらえる要素を内包しつつ、価格は求めやすい。そんな製品になるよう、Zの先にあるラインアップを練り込み始めたところです。
先日、Windows 11が発表されたが、Windows 10と同様にArm版も用意される。AppleのM1プロセッサの例が代表的だろうが、今後はArmアーキテクチャを採用するPCクラスのパフォーマンスを持つSoC(System on a Chip)も選択できるようになるだろう。Intelも将来、Coreプロセッサのライセンスや独自回路を組み込んでのファウンダリ(半導体生産委託)サービスを受託すると発表している。
数年先までを考えた場合、あるいはVAIOのアイデアが盛り込まれたSoCを調達できる可能性も出てくるかもしれない。
林氏 これまで本当に多くのVAIOが生まれてきました。その中にはPCの概念を破るものも多かった。VAIOのファンだというオーナーさんと話すと、うれしそうに過去のVAIOの思い出を、まるで自分の子供のように語ってくれます。VAIOが人生のストーリーに組み込まれているように感じました。販売の規模を追うのではなく、VAIOに共感してくれるPCで何かを作り出したいという熱量の高い人たちと互いに影響しあえる。そんな物作りを目指していきます。
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