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AppleがiOSアプリ外での決済方法を提供 App Store小規模開発者と7つの方針で合意(1/2 ページ)
Appleが8月26日、米国での小規模開発者らによる集団訴訟の解決と、中小のアプリ開発者を支援する方針を発表した。
Appleが8月26日、App Storeでビジネスを行う開発会社らの意見に耳を傾け、アプリの提供料金などApp Storeの規約の一部を見直したり、年間透明性レポートを出したりすることなどを発表した。また、コロナ禍で苦しむ小規模開発者やニュース配信サービスに対しての手数料見直しなども含まれている。
米国内の小規模開発者を支援
これはAppleに対して訴訟を起こしていた小規模開発者のドナルド・キャメロン(Donald R Cameron)氏らによる裁判を通して、Appleと原告側の建設的な話し合いを経てまとまった和解案で、7つの合意事項がある。この合意は、訴訟を担当する裁判官に提出され、既に承認を得ている。
- App Store Small Business Program:Appleは、2020年11月以来、年間収入が100万ドル未満の企業に対して実験的に従来30%の手数料を15%に減額してきたが、このプログラムを今後3年間継続することにした。なお、対象外の大手開発者に対しては従来通りの30%の手数料がかかる。
- App Store Search:App Store内でユーザーがアプリの検索に用いる検索機能では、特定の開発者が有利にならないように、ダウンロード数、星評価、テキストの関連性、ユーザーの行動信号などの客観的な評価に基づいて検索結果を表示しているが、少なくとも今後3年間はこの状態を維持する。
- 電子メールを使った顧客の連絡:開発者がより柔軟に顧客に連絡できるように、開発者が電子メールを使って顧客に連絡することを許可(なお、電子メールなどを通して徴収された追加料金などについては、App Store外での出来事として、従来通り手数料を取らない)。これまで、Appleはプライバシーなどへの配慮から、開発者が顧客の電子メールアドレスなどを収集したり、直接連絡を取ったりしないように勧告してきたが、今後、開発者はユーザーの同意を得て電子メール情報を取得することが可能となる。ただし、ユーザーには後からでもオプトアウトする権利が保証される。
- 価格帯:App Storeでのアプリの価格、サブスクリプション、アプリ内課金の価格などは、外貨相場などの変動に柔軟に対応できるように、250円、490円など100種類以下の料金が設定されており、それぞれの価格帯で他の通貨での対応価格が設定されている。今回、開発者の要望に応えて、この価格帯の種類が一気に500以上まで増やされることになった。
- 不服申し立てプロセス:App Storeではユーザーの安全を守るために、アプリを1つ1つ審査した上で提供しており、Appleが課した安全性の基準に見合わないアプリが落とされ、App Storeを通した提供ができなくなることがある。開発者が不本意だった場合、異議を申し立てることができるオプションがあるが、この機能を今後も継続するとともに、異議申し立ての方法がわからない開発者のために、App Reviewのウェブサイトにて詳しい方法などの情報提供を行う。
- 年間透明性レポート:Appleはこれまで同社公式サイトにてApp Storeに関しての詳細な統計情報などを提供してきたが、今後はこれを年間透明性レポートという形でまとめる。レポートでは、さまざまな理由で却下されたアプリの数、無効化されたユーザーおよびデベロッパーのアカウントの数、検索クエリおよび検索結果に関する客観的なデータ、App Storeから削除されたアプリの数など、アプリ審査プロセスに関する意味のある統計情報を共有する。
- 小規模開発者支援基金:AppleはCOVID-19の影響で世界が苦しんでいる中、米国の小規模開発者を支援するための基金を設立。対象となるデベロッパーは、2015年6月4日から2020年12月31日までの全ての暦年において、米国のストアフロントで全てのアプリを対象に100万ドル以下の収益を上げていることが条件だ(米国のデベロッパーの99%を網羅。詳細は後日公開)。該当開発者は事業規模に応じて250から3万ドルの間の支援金を受け取る。
これら7つの合意事項の他に、iOSのニュース配信サービス「Apple News」を通してニュースを配信している米国の報道機関向けに「News Partner Program」の提供も開始する。
厳格なジャーナリズムと自由で独立した報道の重要性を認識し、Appleによるジャーナリズムへの支援を拡大するための新しい取り組みで、Apple News Formatでニュースを配信しているニュース機関の手数料を15%にするというものだ。
App Store Small Business Programと合わせ、報道機関がAppleの顧客にコンテンツを提供する複数の手段を提供したり、地域ジャーナリズムを支援したりすることが目的だという。
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