ディスプレイの再設計で生まれ変わった「Apple Watch Series 7」 その隠された魅力:細部に神を宿らせたデザイン(1/2 ページ)
Appleのスマートウォッチ「Apple Watch Series 7」が10月15日に発売される。新たに採用されたフラットな画面や表示領域を拡大したことで何が生まれるのか、林信行氏が読み解いた。
ケースの端いっぱいまでに広がって今にもこぼれ落ちそうな水――真横から見た新しい「Apple Watch Series 7」。その湾曲したディスプレイの縁にはそんな美しさがある。
このディスプレイこそが、新製品の特徴の全てと言っていい。
ディスプレイの縁が丸みを帯び斜めから見ても数字が見える「Apple Watch Series 7」。この水たまりのような形状のディスプレイに合わせて、Appleは新たに「Contour(輪郭)」という縁をいっぱいに使った文字盤を作った(手前)。タップすると水のような揺らぎを見せる。
変わったのはディスプレイだけだがそれこそが大きな変化
他にも、付属のUSB Type-Cケーブルを使っての高速充電により、従来よりも33%速く、たった8分で8時間の睡眠トラッキングに十分な充電が、そして45分で0%から80%までの充電ができるといった特徴もあるが、この充電以外の進化のポイントは全てディスプレイに集中している。
中には、「それだけ?」と驚く人もいるかもしれない。これは小さいように見えて非常に大きな変化で、使う人の体験も変わってくれば、アプリの作り方も少し変わるかもしれない。
これまでのiPhoneの歴史などをひも解いても、ディスプレイサイズの変化など重要な変化があるとき、「やり過ぎ」を嫌うAppleは、その変化だけに集中して、あえて多くの機能を追加しないことがある。Apple Watch Series 7の進化は、まさにそんな感じの進化だ。
以下では、今回のディスプレイの進化がどれくらいすごいものかを解き明かしていこう。
まず、ディスプレイのサイズについてだ。新ディスプレイはただ美しく湾曲しただけでなく、大型化も果たしている。
縁取り部分をわずか1.7mmまで縮めたことで、表示領域が2020年のSeries 6と比べて20%も大型化している(併売されるSeries 3と比べると50%も大きい)。
だから、画面に表示できる文字量も増加し、スクロールせずに読み終える情報が増える。
付属の「計算機」アプリのボタンも、わずか12%大きくなっただけというが、少なくとも45mmケースのモデルでは、「間違えて隣のボタンに触れないように」と注意しながら操作する気疲れが、ほぼ無くなって快適に使えるようになった。
さまざまな形の選択肢がある中で、新しい製品が正しい方向に進化したかの1つの指標は、「もう昔の製品に戻れない」と感じられるか否かだ。2020年モデルのSeries 6は、Appleが2020年時点でできるベストを尽くした製品で、この上なく美しいApple Watchだったが、Series 7の登場で、その「上」ができてしまい、しばらくSeries 7に見慣れた後で振り返ると、少し古く感じるようになってしまった。
Series 6(左)とSeries 7(右)で計算機アプリを起動した状態で画面サイズを比較をした。バンドを外してみると、超小型計算機のようでかわいらしい(目の錯覚がなくなり、この方がボタンの大きさの違いが伝わりやすい)
新ディスプレイの特徴は大きさだけではない。見ただけでは違いが分かりにくいが、作りの頑丈さという点で見ても、これまでのディスプレイから大きく進化している。
Apple Watchでは文字などの情報は有機EL(OLED)のパネルに表示される。これまではそのOLEDの上にタッチセンサーの層があり、その上にパネルを保護する前面クリスタルの層が載っていた。
Series 7では、薄型化のために新たにタッチセンサーと一体化したOLEDを開発した。前面クリスタルは最も厚い部分がSeries 6に比べて2倍になり、クリスタルの土台の形状も見直して亀裂などの破損が起きにくくなっている。
不思議なのは、最大2倍の厚みながらも、文字などの表示は、これまで通り画面の表面に浮かんでいるように見えることだ。Appleのデザインによるマジックだろう。おそらく、画面の見ている側と反対端の絵や文字が、クリスタルの縁と共に湾曲して消失していることがそのように感じさせるのだと思う。
古い安物のスマートフォンなどを見たことがある人は分かると思うが、文字が分厚い保護ガラスの下に表示されているように沈んで見えるディスプレイは、それだけで操作がしづらく、ユーザー体験も悪いケースが多い。
Apple Watchでは、それがない。確かに、細かに観察すると見る角度によっては、情報表示面の上にあるガラスの厚みが見えないことはないが、普段使っているときはほぼそれを意識しない見た目だ。ボタンを押した際の動きや効果音で、画面上の情報に直接指で触れているような感触を生み出している。
新ディスプレイの頑丈さについて付け加えると、既に水泳でも使える防水性能(潜水には非対応)でも評価があったが、今回、そこにIP6X等級の防じん性能も備えた。つまり、泥土や粉じんが飛び交う環境でも安心して使えるのだ。
もちろん、ほとんどの人は普段の生活で、そんなことまで意識しないだろう。意識するのは、このディスプレイが大きくなって操作もしやすくなり、次に紹介する画面の特徴を生かしたSeries 7専用の新しい文字盤などが誕生したことの方だ。
しかし、そうした人々もApple Watchをつけたままアウトドアのアクティビティーをすることもあるだろうし、その際に事故で水をかけたり、泥をかぶったりすることもあるだろう。そうした場合でも安心ということだ。
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