35億ドルの新規ビジネスを獲得できた――HPが“サステナビリティー”に注力する理由:HP INNOVATION SUMMIT 2022(2/3 ページ)
日本HPがリアル/オンラインのハイブリッドイベント「HP INNOVATION SUMMIT 2022」を開催。米HPのエンリケ・ロレスCEOがリモート登壇し、HPグループのサステナビリティー(持続可能性)に関する取り組みを重視する理由を対話形式で語った。
HPのサステナビリティーへの取り組み
HP Sustatinalble Impact Reportは、SDGsの前身である「MDGs(ミレニアム開発目標)」が国連の会合で採択された2001年から毎年発行されている。「サステナビリティーへの取り組みについて、具体的に目標を設定し、進捗(ちょく)を公開することが重要」(ロレスCEO)だからだ。
その推進に当たって、同社は「気候変動対策」「人権」「デジタルエクイティ(公平性)」の3分野を特に重視しているという。
気候変動対策では、例えば「製品の素材と梱包(こんぽう)材について、2030年までに循環資源の利用率(リサイクル率)75%を達成する」という目標を掲げている。2021年時点では、この目標は重量ベースで39%に到達しているという。
使い捨てられるプラスチックを削減する観点では、プリンター用のインクカートリッジやトナーの回収プログラムを実施している。加えて、製品のパッケージを再生紙由来のパルプ素材に置き換えている。海洋再生プラスチック(※2)も積極的に活用しており、2019年に発売された「HP Elite Dragonfly」では、ボディー素材の一部にこのプラスチックを採用した。
それ以来、2022年現在で300種類以上の自社製品に海洋再生プラスチックを活用しているという。
(※2)海岸に打ち上げられたプラスチック(ペットボトルなど)をリサイクルして作られたプラスチック
ただ、HP“単独で”このような取り組みを行うのには限界もある。外部企業を巻き込んだ取り組みも重要といえる。
例えば、同社は同社の業務用プリンターの用紙を供給するサードパーティー企業に対して、環境負荷が低い製品を認証するプログラムを実施している。
加えて、サステナビリティーを推進するための企業買収も行っている。HPは2月、英Choose Packageingを買収した。Choose Packageingはプラスチックの代わりに繊維素材を使った飲料ボトルを設計/開発してい企業で、HPの有する3Dプリンティング技術を活用して、より効率的かつカスタマイズ可能な容器を作れるようになるという。
以下は、Sustatinalble Impact Reportから目標として掲げられている項目を抜粋したものだ。
- 気候変動
- 2030年までにバリューチェーンの温室効果ガス排出量を2019年比で50%削減し、2040年までに排出量ネットゼロを達成
- 2030年までに製品と梱包材において、循環利用率75%を達成
- HPの製品とプリントサービスで使用されるHP以外の用紙による森林破壊を抑制
- HP製品の用紙と紙製梱包材は、持続可能な繊維のみから調達
- 人権
- 2015年初頭から2030年までに「労働者エンパワーメントプログラム」を通して100万人の労働者を支援
- 2030年までに、主要な契約製造サプライヤーとリスクが懸念される二次サプライヤー全てに対して労働関連の人権尊重を保証
- 2030年までにHPの幹部職において男女比率50%のジェンダー平等を達成
- 2030年までに、技術職およびエンジニア職における女性の割合30%以上を達成
- 2025年までに経営層のアフリカ系アメリカ人の比率を2020年比で2倍に
- デジタルエクイティ
- 2015年初めから2025年までに、1億人により良い学習の機会を提供
- 2021年初めから2030年までに、1億5000万人のデジタルエクイティを推進
- 2016年から2030年の間に「HP LIFE(スキル開発プログラム)」の登録ユーザーを150万人に
- 2025年までに社員がボランティアに関わる時間を150万時間に
- 2025年までにHP財団および社員による寄付を1億ドルに
先述の通り、サステナビリティの確保は自社だけが取り組んでも難しい面もある。それだけに、パートナー企業やサプライヤーはもちろん、自社の従業員に関する目標も多く設定されている。
ロレスCEOは「サプライチェーンやサポートモデルの設計において、いかにサステナビリティーを“一体化”させるかも重要だ」と強調する。「経営方針そのものに完全に統合する必要がある」のだ。
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