自分の環境にピッタリなUPSを選ぶ――重要なのは「供給電力」と「運転時間」 お勧めモデルも確認しよう!:転ばぬ先の「UPS」選び(第3回)(3/3 ページ)
PCやサーバ/NASを不意の停電から守ってくれる「UPS(無停電電源装置)」。過去2回の記事では、UPSを選ぶ上で必要な知識を解説してきたが、今回はその“まとめ”として、SOHO環境を想定して具体的にUPSを選んでいく。
SOHOを想定して、必要なUPSを選定してみよう!
では、ここからは今まで解説してきた内容を踏まえた上で、SOHO環境(小規模オフィスや個人事業主)にちょうど良いUPSを選定してみようと思う。
今回は、以下の機器があるオフィスを想定して、どのようなUPSがピッタリなのか考えてみる。なお、消費電力は最大値を取っている。
- デスクトップPC×1(消費電力:200W)
- 24型液晶ディスプレイ×1(消費電力:18W)
- ノートPC×2(消費電力:45W×2)
- NAS×1(消費電力:85W)
- Wi-Fiルーター×1(消費電力:30W)
- ネットワークスイッチ×1(消費電力:15W)
- モノクロレーザープリンタ×1(消費電力:430W)
初回で解説した通り、UPSには何でもつなげるわけではない。「比較的電力消費の少ない機器にとどめる」という観点と、停電発生時のリスクの低さを鑑みると、上記のうち「モノクロレーザープリンタ」はUPSにつなげる機器から除外できる。
また、自らにバッテリーを搭載している「ノートPC」も、原則としてUPSにつなげる必要はない。ただし、バッテリーを取り外している、あるいは寿命を迎えているという場合はその限りではない。
加えて、今回のリストにはないが、その役割を考えると、ONU(光回線終端装置)を始めとするインターネットに接続するためのモデム類は原則としてUPSにつなげなくてよい。一方、手元のデータを保護する観点から、NASと、NASとPCをつなぐ上で必要なWi-FiルーターやネットワークスイッチはUPSに接続しよう。
ただし、シャットダウンに当たり、インターネットまたは専用線(VPNを含む)を介して外部サーバとの通信が求められるなど、特段の事情がある場合はモデム類も保護対象に含めても構わない。
ということで、UPSにつなげるべき機器を整理すると、以下の通りとなる。
- デスクトップPC×1(消費電力:200W)
- 24型液晶ディスプレイ×1(消費電力:18W)
- NAS×1(消費電力:85W)
- Wi-Fiルーター×1(消費電力:30W)
- ネットワークスイッチ×1(消費電力:15W)
合計の消費電力は384W。最大出力容量に1.1〜1.3倍の余裕を持たせるとすると、UPSの最大出力容量は422〜499Wが適正となる。
その上で、つなげる機器のシャットダウンにかかる時間を計測した所、デスクトップPCはOSの月例更新があると3分ほど必要なことが分かった。余裕時間を加味すると、選ぶべきUPSは384Wの機器をつないだ場合に6分以上のバックアップ時間を確保できるものである。
ということで「最大出力容量が422〜499W」かつ「384Wの機器をつないだ場合に6分以上のバックアップ時間を確保できる」UPSを選ぶと、以下のような選択肢が浮上する。
シュナイダーエレクトリック BK750M-JP
シュナイダーエレクトリックの「BK-750M-JP」は、APCブランドのラインインタラクティブ方式のUPSで、最大出力容量が750VA/450Wというスペックを有している。税込みの実売価格は2万7000円程度〜4万3000円程度と販路によって若干のばらつきがある。
今回の想定環境では、このスペックで必要な最大出力容量と6分以上の稼働を余裕で確保できる。また、商用電源の整流も行えるラインインタラクティブ方式なので、接続する機器の安定性向上にも資する。
ただし、BK750M-JPは自分でバッテリーの交換ができない。バッテリーに寿命が来て交換する場合、あるいはバッテリーにトラブルが発生した場合はサポートに連絡する必要があるので注意しよう。
なお、このUPSには「BR1000S-JP」という上位モデルもある。こちらは自分でバッテリー交換が可能な設計で、税込みの実売価格は3万6000円程度〜6万3000円程度となる。ただし、最大出力容量は1000VA/600Wとなるため、今回の想定環境では少しオーバースペックで、過剰投資となる。自分でメンテナンスしたいという場合、あるいは将来的に接続すべき機器が増えそうな場合は、こちらを検討してみても良いだろう。
シュナイダーエレクトリックのUPSは、さらに上位の「Smart-UPSシリーズ」も展開しており、そのこともあってか、容量だけでなく機能面でもさまざまな選択肢が用意されている。自分のニーズに合ったUPSを選ぶという観点ではよいことである。
オムロン BN50T
オムロン ソーシアルソリューションズの「BN50T」は、モノクロ液晶ディスプレイを備えるタワー型ラインインタラクティブ方式のUPS「BN-Tシリーズ」のエントリーモデルで、最大出力容量が500VA/450Wというスペックを有している。税込みの実売価格は3万2000円〜6万4000円程度と、こちらも販路によって若干のばらつきがある。
BN50Tは、本体の液晶ディスプレイで動作状況を一目で確認できる他、万が一自身の制御回路が停止するようなトラブルが発生した場合でも、接続機器への電源供給を継続できる「無停止バイパス機能」を備えていることが特徴だ。もちろん、今回想定している環境での最大出力容量やバックアップ時間も余裕で確保できる。バッテリーが寿命を迎えてもバックアップ時間は5分ほど確保できるので、余裕時間が削られるが何とかなる。
加えて、先に紹介したBK750M-JPとは異なり、BN50Tはバッテリーを自分で交換可能だ。商用電源につなげておけば、UPSをシャットダウンしなくてもバッテリーを交換できる「ホットスワップ」にも対応する。
なお、BN-Tシリーズは最大で3000VA/2700Wの機器を保護できるモデルを取りそろえている。容量が大きくなるほどサイズも大きくなるのだが、必要な容量に応じて必要なスペックを備えるサイズを選びやすいこともポイントである。
オムロン ソーシアルソリューションズでは「UPS選定ツール」を用意している。プルダウンメニューから自分の環境に合致する選択肢を選んでいくと、画像のようにピッタリ(と思われる)UPSを一覧で表示してくれる
ここまで、3回に渡って適切なUPSの選び方を解説してきた。今回の想定では、電源供給を確保する機器を絞って、極力コストを抑える形で機器やデータを停電から保護することを想定している。
もしも保護する対象機器が増えたり、より電力消費が大きいサーバを保護対象に加えたりする場合は、より容量の大きいUPSを選ぶ必要があるが、その場合もここまで紹介してきた選び方に従えば問題ない。
最近は、悪天候を含む自然災害による停電が増加傾向にある。また、今は幸い顕在化していないが、世界情勢の影響を受けて、電力供給に関する不安も高まりつつある。
万が一、このようなリスクに遭遇してしまった場合でも、UPSがあれば停電による損害を極小化できる。皆さんの環境にピッタリなUPSに出会えることを祈りながら、3回に渡る連載を締めたいと思う。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「価格」と「機能」のバランスはどう取る?――UPSの“仕組み”を理解する
PCやサーバ/NASを不意の停電から守ってくれる「UPS(無停電電源装置)」だが、大きく分けると3つの方式があり、それぞれに長短がある。より適切なUPSを選ぶために、その“長短”をしっかりと学ぼう。
意外と重要なパソコンやサーバの「停電」対策――UPSの基礎知識をチェック
PCやサーバ/NASにおいて「データのバックアップ」の重要性が説かれる一方、「電源のバックアップ」については若干見過ごされがちである。万が一の停電に備えて「UPS(無停電電源装置)」の導入をお勧めしたい……のだが、その前に、UPSの役割や、導入に当たって気を付けたいポイントを解説しようと思う。
新しい時代の選択肢! ChromebookとGoogle Workspaceでハイブリッドワーク環境を構築する方法
あらゆる場所で仕事を行える「ハイブリッドワーク」では、どこでも仕事をこなせることが何よりも重要である。そんな時代において、Windows“以外”の有力な選択肢として上がってくるのが「Chromebook」を業務利用することだ。この記事では、Chromebookに「Chrome Enterprise」「Google Workspace」を組み合わせてハイブリッドワークを実現する可能性を模索する。
「Microsoft 365」でWindows PCを快適に! 利用者も管理者もスマートなハイブリッドワークを実現する方法
ハイブリッドワークを前提にPCを導入する場合は、どのようなことを考慮すべきなのか――既存のWindows環境を生かしたい場合は「Microsoft 365 Business Premium」を組み合わて環境作りをすることをお勧めしたい。ハイブリッドワークに最適なWindows PCを選ぶポイントと合わせて紹介しよう。
「ウチは無理だから……」と諦めるのは早い! 悩める情シスが知っておくべきビジネスPCの選び方
新型コロナウイルス感染症を受けて急速に広がった「テレワーク(リモートワーク)」は、そこから一歩進んで働く場所を選ばない「ハイブリッドワーク」に進みつつある。そんな時代にビジネスで使うPCはどう選べばいいのだろうか? 具体的な機能から機種を検討する前に、デプロイメント(展開)の方法から検討するべきではないだろうか。


