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写真の“素性確認”でフェイクニュース対策 アドビとニコンが一眼カメラの「来歴記録機能」を実機デモ仕組みゆえの課題もあり(1/2 ページ)

アドビとニコンが共同で試作した「来歴記録機能カメラ」。その詳細の説明会が改めて開催された。撮影者の情報や編集(修正)者の情報を合わせて記録することで「フェイク」「無断転載」対策を進められると期待されているが、その仕組みゆえの課題もある。

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 アドビとニコンは12月14日、写真や動画の編集履歴を電子証明書として保存(添付)する「来歴記録機能」に関する記者説明会を開催。試験的に来歴記録機能を実装した一眼カメラ「Nikon Z 9」と、既に同機能にβ対応している「Adobe Photoshop」を用いてデモンストレーションを行った。

C2PA
アドビとニコンが「来歴記録機能」に関するデモンストレーションを実施

「来歴記録機能」が生まれた背景

 AI(人工知能)による画像編集技術は近年著しく向上し、2022年にはテキストから画像を生成するAIサービスがいくつも登場した。その影で深刻な社会問題となりつつあるのが、改ざん画像によるフェイクニュースだ。加えて、SNSの普及により、著作権を侵害するような画像の盗用も多く見られるようになっており、その抑止も課題となっている。

 こうした課題に対して、Adobe(アドビの親会社)、Twitter、New York Timesの3社は2019年、任意組織として「CAI(Content Authenticity Initiative)」を立ち上げた。CAIではデジタルコンテンツの“身元保証”を担保する仕組みの開発を目指しており、会員にはBBCやAP通信などのメディア企業、AdobeやMicorosoftのようなソフトウェアサービス提供企業、ニコンやLeica(ライカ)のようなカメラメーカー、ArmやNVIDIAのような半導体企業、GettyImagesなどのストックフォトサービス提供企業が名を連ねる。

 加えて、2021年には来歴記録機能の技術標準化を目指す「C2PA(The Coalition for Content Provenance and Authenticity)」がCAIの派生団体として発足した。運営委員会の顔ぶれはAdobeの他、Twitter、Micorosoft、Intel、ソニー、Arm、BBC、Trupicと各業界を代表する企業が並んでいる。2022年3月にはC2PA規格のバージョン1.0が策定されており、実用化に向けた研究が進められている。

C2PA
Adobeが推進するCAIは、デジタルコンテンツを認証するための技術標準「C2PA」の策定を進めている
C2PA
CAIとC2PAにはメディア、ソフトウェア事業者、半導体メーカーなど800以上の会員が参画している

 Adobeが10月に開催した「Adobe MAX 2022」では、ニコンとLeicaの2社がカメラメーカーとして初めてCAIに参画すると発表された。この発表に合わせて、ニコンはミラーレス一眼カメラのフラグシップモデルであるNikon Z 9にC2PA規格に準拠する来歴記録機能を追加したプロトタイプ機を公開している。

C2PA
ニコンはフラグシップ機「Nikon Z 9」をベースに、C2PA規格準拠の撮影データを記録する試作機を開発した
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