現実のゲームユーザーにロックオン! AMDの「Radeon RX 7600」はフルHDゲーミングに最適? 徹底的に試して得た結論:日本では5月26日11時発売(4/4 ページ)
AMDが、Radeon RX 7000シリーズの新しいメインストリームGPUを発表した。米国では5月25日に発売され、搭載グラフィックスカードは269ドルから購入できる。「フルHDゲーミングに必要十分な性能」とのことだが、本当かどうか、実際に使って試してみよう。
サイバーパンク2077
Radeon RX 7600は「フルHDでのゲーム体験には必要十分」なのは確かである。しかし、負荷の高い傾向にある「AAA(大作)ゲーム」でも、そのメリットは生かしきれるのか、という疑問が生じる。
そこで、負荷の高いAAAゲームを代表して、「サイバーパンク 2077」のベンチマークテストモードを使って平均フレームレートを計測してみた。
サイバーパンク 2077は、Radeonシリーズで利用できる超解像技術「FidelityFX Super Resolution(FSR)」にも対応している。今回はネイティブ解像度(=FSRオフ)で画質プリセット「ウルトラ」とした場合と、FSRをオンにして画質プリセット「パフォーマンスウルトラ(フレームレート優先)」とした場合のレートをフルHD、WQHD、4Kの解像度で測っている。結果は以下の通りだ。
- フルHD
- FSR 無効:14.81fps
- FSR 有効:79.93fps
- WQHD
- FSR 無効:6.68fps
- FSR 有効:44.57fps
- 4K
- FSR 無効:2.25fps
- FSR 有効:25.47fps
FSRが無効の場合、どの解像度も「紙芝居」になってしまう。ネイティブ解像度でプレイする場合、平均60fpsを実現するには設定変更が必須となる。
それに対して、FSRを有効にするとフルHDであれば平均80fps弱となった。動きの激しいシーンでも、カク付きも見られない。これなら、一般的なフルHDディスプレイ(60Hz駆動)で十分快適に遊べる。
一方で、WQHDや4Kではフレームレートは改善するものの、少し低めである。フレームレート優先の設定でもこの結果なので、若干厳しい。シーンによってはカク付きも見られた。
フルHDでFSRを有効にすれば、しっかり遊べるという感じである。コンセプトに忠実なGPU(グラフィックスカード)といえそうだ。
Microsoft Flight Simulator
ついでにもう1本、超重量級のゲームタイトル「Microsoft Flight Simulator」を過不足なく遊べるのかもチェックしてみよう。
今回は、ディスカバリーフライトの「モナコ」をAI操縦とした上で、「CapFrameX」で2分間の平均フレームレートを計測した。設定で「DirectX 12」を有効にした状態での計測結果は以下の通りだ。
- フルHD
- FSR 無効:71.9fps
- FSR 有効:80.5fps
- WQHD
- FSR 無効:51.1fps
- FSR 有効:76.4fps
- 4K
- FSR 無効:8.6fps
- FSR 有効:23.4fps
サイバーパンク2077とは異なり、こちらはフルHDであればネイティブでも十分に遊べそうである。FSRを有効にすれば、WQHDでもスムーズなプレイを期待できそうだ。
FSR(もっというとRadeon)への最適化の具合にもよるが、Radeon RX 7600はAAAタイトルでもフルHDであれば結構いい感じで遊べる。日本の価格次第だが、コストパフォーマンスを重視するPCゲーマーには良い選択肢となるはずだ。
動画のエンコード速度もチェック!
GPUはゲームだけでなく、動画の書き出しなどクリエイター向けアプリケーションでも活躍するシーンは多い。
特に重たい動画データを書き出す場合は、GPUに内蔵されたハードウェアエンコーダーの効果は大きい。新しいGPUを使うことで書き出し速度の向上に期待する人は多いだろう。
そこで今回は「Adobe Premierer Pro」を使って、4K動画のエンコードに要する時間を比較してみよう。「GoPro HERO 10」で撮影した数本の4K動画を30分ほどにまとめて書き出すのに要した時間をまとめた。
なお、このテストにはRadeon RX 6600 XTでの計測データが存在しなかったため、筆者が過去に実施した「Radeon RX 7900 XT/XTX」と、競合のGeForce RTX 4070シリーズの計測結果と比較する。結果は以下の通りだ。
- Radeon RX 7600:7分31秒
- Radeon RX 7900 XTX:4分44秒
- Radeon RX 7900 XT:4分52秒
- GeForce RTX 4060 Ti:7分54秒
- GeForce RTX 4070:7分47秒
- GeForce RTX 4070 Ti:7分40秒
Radeon RX 7600にはAV1対応の動画エンコーダーが搭載されているが、Radeon RX 7900XT/XTXと比べると若干パフォーマスが低い。しかしGeForce RTX 4070/4070 Tiと比べると、僅差ではあるがRadeon RX 7600の方が速い。
GeForce RTX 4070シリーズがドルベースで2倍近い値付けとなっていることを踏まえると、Radeon RX 7600はコストパフォーマンスに優れた動画エンコード用GPUとしても受け入れられるのではないかと思う。
素性の良いグラボであることは間違いない 問題は「日本価格」
米国では「269ドルから」という価格設定のRadeon RX 7600。純粋に日本円換算して4万円弱で買えるなら、グラフィックスカード市場の“風雲児”となるポテンシャルを秘めていることは間違いない。
消費電力も、公称値ベースでは先代のRadeon RX 6600よりも増えている。しかし、今回検証したPCではアイドル時は81W、3DMarkの「Time Spy Extreme」実行時のピークでも249Wと、先日レビューしたGeForce RTX 4060 Ti(8GB)よりも消費電力を抑えられている。消費電力重視のユーザーにもよい選択肢といえるだろう。
現状、日本での販売価格が明確でないので断言はできないが、Radeon RX 5000/GeForce GTX 16シリーズ以前の旧ミドルレンジ世代のGPUから乗り換えといったゲーム用途だけでなく、動画制作の面でも注目できる存在になりそうだ。それだけに、日本での実売価格には注目したい。
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