「Mac Studio」の製品アイデンティティーは2世代目にして確立された(2/2 ページ)
新たに登場したプロ向けデスクトップPC「Mac Studio」。上位モデルの「Mac Pro」がApple Silicon化したことにより、製品としての立ち位置が明確になった格好だ。まさにプロ向けの標準機と言える第2世代Mac Studioをチェックしよう。
プロフェッショナルユーザーの新しいスタンダード
さて、そんなMac Studioを発売する前にレビューする機会を得た。検証期間が極めて短い上に、プロユースとなると4K/6K/8Kといった高品質のビデオ編集なのか、映画などで使われるようなオブジェクト数の多い高度な3Dモデリング/レンダリング、あるいは「Apple Vision Pro」の発表でこれから増えそうなバーチャル空間の製作なのか、はたまた大量のデータを用いたデータ分析や機械学習なのか、生楽器のサンプリングサウンドを大量に使った音楽制作なのかなど、用途に応じて性能差の出方に違いがあり、全てのケースについて検証することはできない。
そこで、いつものように一般的な性能検証ソフトやベンチマークツールを使って試してみた。
今回、貸し出しを受けた検証用モデルはM2 Maxの最大構成(12コアCPU/38コアGPU/16コアNeural Engine搭載)に96GBのユニファイドメモリ、4TBのストレージという60万6800円の構成だ。
2022年もMac Studioをレビュー(M1 Ultra/128GBメモリ)したが、こちらはM1 Ultra搭載モデルだったので、今回のM2 Maxと同グレードでの構成ではないが、それでも両者の比較から分かってきたこともある。
新旧Mac Studioのベンチマークテストのスコア比較 | ||
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モデル | 新型Mac Studio(M2 Max) | 従来モデル(M1 Ultra) |
Geekbench 5(Single-Core) | 2072 | 1792 |
Geekbench 5(Multi-Core) | 15115 | 24023 |
CINEBENCH R23(Multi Core) | 14884 | 24198 |
CINEBENCH R23(Singe Core) | 1747 | 1536 |
Disk Speed Test(書き込み) | 毎秒7089.2MB | 毎秒6347.3MB |
Disk Speed Test(読み出し) | 毎秒58344.7MB | 毎秒5359.2MB |
プロセッサを構成するコアの1つ1つの処理能力は、やはりM1世代と比べて圧倒的に速い。CINEBENCH R23のシングルコアではスコアが1747で、M1 Ultraよりも約14%高速だった。一方のGeekbench 5(最新バージョンは6だが、前モデルとそろえた)ではシングルコアで約16%速かった。一応、みなさんが手元のマシンと比較できるように最新版Geekbench 6のスコアを書いておくと、シングルコアのテスト結果は2846、マルチコアの結果は1万5122だった。
M1 UltraはM1 Maxプロセッサを2基連結した、いわばお化けプロセッサである。マルチプロセッサでの性能では、やはりプロセッサコアの数が今回のM2 Maxの12コアに対してM1 Ultraは20コアというバランスの取れない勝負になり、M1 Ultraの方が圧倒的に性能で上回る結果となった。ただそれでもコア数が約半分だがスコアは62%ほどにとどまった。
CPUコア、GPUコアの数がそのまま作業効率に直結するような人ならば、新製品発表後に在庫処分価格で販売されたM1 Ultra搭載のMac Studio購入という手があるかもしれないが、もしそこまでの価格差がないならばM2世代の最新製品をお勧めしたい。
デジタルアーティストの友人が多い筆者的には、いざという時、サッカーボール1個分ほどの大きさほどしかない本製品をボストンバッグに入れて持ち歩けば、HDMI接続できる8K HDR映像の再生機として使えたり、最大8台の4Kディスプレイを接続してインスタレーションだったり、大型プロジェクションマッピングだったりができてしまう持ち歩けるアートインスタレーションとして、インタラクティブキオスク端末としての可能性にも心が躍ってしまう。
MacBook AirとiMacがそこかしこで見かけるようになったカジュアルなMacユーザー、MacBook Proがアクティブなプロフェッショナルユーザーの象徴だとしたら、これからMac Studioと「Apple Studio Display」の組み合わせは、しっかりと仕事場に腰を落ち着けて作業をするクリエイターの新たな定番として、さらに広まることになりそうだ。
Mac Studioは、もちろん多彩なディスプレイと接続可能だが、個人的にはApple Studio Displayとの併用を強く勧めたい。5K解像度(5120×2880ピクセル)でHDRに対応した27型サイズのディスプレイには、確かにもう少し手頃な代替モデルもあるだろう。
しかし、そのディスプレイに6基のスピーカーを内蔵して空間オーディオを楽しめる機能や高性能なマイク、センターフレームに対応した超広角でなおかつ明るいカメラまでが統合されたことによる体験は、安価なディスプレイに空間オーディオ対応スピーカー、超広角カメラをバラバラに接続して得られる体験とは全く比較にならないからだ。
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