インテルが“半導体売り”からの脱皮を宣言 シフトチェンジで大切にしたこととは?
インテルが新しいコーポレートスローガン「it starts with Intel(始まりはインテルと)」を発表した。このスローガンには、顧客重視姿勢の強化と、Intelグループ全体の変革を推進する意味合いが込められているようだ。
インテルは8月1日、同社のマーケティング活動に関する説明会を開催した。その中で、コーポレートスローガンを「Do Something Wonderful」から「it starts with Intel」に切り替えることを発表した。その狙いは何なのだろうか。
「顧客重視姿勢」を世界中に
インテルの新しいコーポレートスローガン(メッセージ)は、より顧客志向の企業となり、新しい企業文化を醸成していくことを内外にアピールすることを目的としている。鈴木国正社長によると、パット・ゲルシンガー氏が米Intel(インテルの親会社)にCEOとして復帰してからの取り組みに変化への“伏線”が盛り込まれていたという。
半導体の研究/開発から生産までを“一貫”して行っていたIntelは、「IDM 2.0」と銘打って、半導体生産の一部を他社に委託するだけでなく、逆に他社の半導体生産を受託するようになった。また、「ムーアの法則」の再構築を目的とする研究/開発活動や、AI(人工知能)関連技術への投資も積極的に投資を行っている。
これらの変化は「およそ5年前(のIntel)からは考えられないこと」(鈴木社長)で、ゲルシンガー氏がCEOに就任したことによる大きな“変化”といえる。「半導体メーカーのリーダー」として、今までの立ち位置にとどまらない変革を求められていることの証左でもある。
Intelの日本法人であるインテルでは、鈴木社長のもとで独自の取り組みとして「DcX(Data centric Transformation:データの利活用を機軸としたデジタルトランスフォーメーション)」を打ち出してきた。半導体を機軸とする技術力をもって、あらゆるデータを利活用できるソリューションを提供するという方針だ。
このDcXにおいて重要だったのが、インテルの“中立性”だったという。半導体メーカーとして、いろいろな企業や団体とつながりを持てたからこそ、同社が発するメッセージを業界内外に届けやすくなったというのだ。
鈴木社長は、インテルの取り組みを「Value Based Selling(VBS)」としてIntelグループ全体に広げていきたいと考えているという。
日本語に直訳すると、VBSは「価値基準の販売」という意味だ。要するに「こんな半導体(製品)がありまっせ!」という売り方から、「顧客(ユーザー)の抱える課題を解決するには、何を用意したらいいのだろう?」という売り方への転換を進めるということである。
日本独自の取り組みが、世界規模に広がる――it starts with Intelは、そのことを象徴するスローガンでもあるようだ。
いろいろなパートナー“と”一緒にやることが何より大切
今までのコーポレートスローガンには「素敵なことを始めよう」という日本語訳が付いている。新しいスローガンには「始まりはインテルと」という日本語訳が付く。インテルの上野晶子マーケティング本部長いわく、日本語訳にある“と”には、非常に重要な意味があるという。
「始まりはインテル」でも、新しいスローガンの言わんとする所は伝わる。そこに“と”を加えることで、あらゆるパートナーがインテル“と”課題を解決していく(物事を進めていく)というイメージを強調できるのだ。
インテルは、個人を含むさまざまな分野のパートナー(ユーザー)との対話を積極的に行いつつ、パートナー“と”寄り添う技術(製品やソリューション)を紹介する取り組みを推進していくという。先般発表されたCoreプロセッサのリブランディングもその一環で、自分のPCにピッタリなCPUを探しやすくするために実施される。
新しいスローガンのもと、同社はさらなる革新を進めていく。
関連記事
- 2024年に「ムーアの法則」が再び走り出す? Intelが「PowerVia」の近況を報告 Meteor Lake(仮)のEコアをベースに実証実験
Intelが「Intel 20A」プロセスから採用する予定の裏面電源供給技術「PowerVia」の近況を報告した。Meteor Lake(仮)のEコアをベースに本技術を適用したCPUの稼働について実験に成功したといい、6月中旬に京都市で開催されるイベントで論文が公開される。 - 第13世代Core/Intel Arc/大規模投資でリーダーシップへの復権を目指すインテルの取り組みを鈴木国正社長に聞く
コロナ禍以降も、経済環境や社会情勢が激変する昨今。さらに急激な円安が進む中でIT企業はどのような手を打っていくのだろうか。大河原克行氏によるインタビュー連載の第3回はインテルだ。 - 半導体生産で「委託」「受託」を両にらみ Intelが「IDM 2.0」構想を発表
Intelが、新しい半導体生産方針「IDM 2.0」を発表した。自社生産を基本とする方針は堅持しつつ、ファウンドリーを活用した製品生産を拡大し、自らがファウンドリーとして生産を受託する事業も開始する。 - さよなら「i」 こんにちは「Ultra」――Intel Coreプロセッサが15年ぶりにリブランディング Meteor Lakeから適用
2023年後半に登場する新型CPU「Meteor Lake(開発コード名)」に合わせて、IntelがCoreプロセッサのリブランディングを実施する。モデル名に含まれる「i」を省く他、「第○世代」という表記を廃止することでブランドそのもののシンプル化を進める一方で、最先端モデルには新たに「Core Ultraプロセッサ」というブランドを導入するという。 - Intelが次世代CPU「Meteor Lake」の概要をチラ見せ 全モデルに「AIエンジン」を搭載
Intelが「Meteor Lake(メテオレイク)」というコード名で開発を進めているCPUの概要情報を公開した。同社初の7nmプロセスCPUは、全モデルにCPUコアとは別体の「AIエンジン」を搭載するという。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.