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雷シーズンも怖くない PCやNASの家庭向け停電対策に「ポータブル電源」の“パススルー充電機能”を活用する“ポータブル電源”活用でお手軽UPSを実現(第1回)(2/2 ページ)

夏の停電対策として、ポータブル電源のパススルー充電機能を使った方法を全2回で解説する。

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停電対策と言えばUPS(無停電電源装置)だが……

 企業で行われているサーバやNASの停電対策を参考までに確認してみよう。一般的にはUPS(無停電電源装置)を導入することで、落雷による雷サージ(一時的な過電圧や過電流)や、バッテリーを使って停電が起きた直後にシャットダウンする猶予時間を確保するといった対策が取られている。

 UPSは企業利用にも耐えうる製品なので、予算に一切制限が無いのであればUPSを選べば良いのだが、そもそもUPSには方式がいくつかあり、専門用語や知識が前提の製品説明となっているため導入するハードルが非常に高い。さらに、交換用の鉛バッテリーの交換や廃棄などのことを考えると、家庭用として導入するにはかなり厳しいところがある。

家庭向け停電対策の味方、ポータブル電源

 となると、家庭向けに気軽に導入できる停電対策は無いのか、というと決してそんなことはない。一昔前であればUPSしか選択肢がなかったが、幸い最近は家庭でも気軽に使える製品が登場してきた。それがポータブル電源だ。

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Anker 535 Portable Power Station(PowerHouse 512Wh)

 ポータブル電源は、簡単に言うとスマートフォン向けのモバイルバッテリーを更に大きくした物で、USBケーブルしか接続できないモバイルバッテリーとは違って、ACアダプターも挿せるようになった大容量のバッテリーだ。

 コンセントから充電するだけでなく、ソーラーパネル等からも充電できるため、昨今では災害時に備えるために導入する人が増えてきている。昨今の災害に備える意識の高まりや、新型コロナウイルスの影響により、少人数でアウトドアを楽しむ際の電源利用需要の高まりなどから、ニュースでよく取り上げられている。ECサイトのセール対象によく登場していることもあって、一度は目にしたことがある方が多いのではないだろうか。

 ポータブル電源がここまで今注目を集めている大きな理由としては、モバイルバッテリーと違って、コンセントを備えているためスマートフォンやタブレット端末の充電以外にも使えるという点と、燃料を使った発電機と違って、あらかじめ充電しておくだけで利用できるその気軽さにあるといえる。

 その製品の性質上から、災害対策やアウトドア用の製品というイメージが付きがちだが、ACアダプターが接続できるのであれば、PCやNASなどの電子機器をつなげても問題ないのではと感じる人も居るのではないだろうか。

 とはいえ、普段から利用しているPCやNASを満充電したポータブル電源に接続し、ポータブル電源のバッテリー容量が減ってきたら一度シャットダウンし、ポータブル電源を充電するといった利用は現実的ではないし、ポータブル電源を充電しながら機器を接続するとモバイルバッテリーの発熱や、破損につながりそうなので気が引ける。しかし、最近そんな悩みを解決する画期的な機能を搭載したポータブル電源が登場した。それが、パススルー充電対応のポータブル電源だ。

パススルー充電とは何か

 パススルー充電機能とは、コンセントからポータブル電源に出力される電力を、ポータブル電源に接続したPCやNAS等の機器に優先的に給電する機能のことを指す。ポータブル電源を充電しつつ、ポータブル電源に接続した機器にも電力を供給できるため、通常時はコンセントから供給される電力を使ってPCやNAS等を動かし、停電などでコンセントから電力が供給されなくなると、ポータブル電源から接続先の機器に電力を供給して簡易的なUPSとして活用することが可能だ。

あくまで簡易的なUPS

 簡易的なUPSとして活用できるので、停電時もポータブル電源を用意しておけば絶対安全と言いたいところだが、あくまで簡易的なUPSとして利用できるだけなので過信は禁物だ。例えば、通常交流電源は常に100Vの電圧で提供されているわけではなく、常に電圧は上下するようになっており、電気事業法において標準電圧100Vでは101V±6Vの範囲で維持して提供するよう定められている。

 しかし、落雷や電力需要が逼迫(ひっぱく)電力供給が不安定になると、一時的にこの範囲を超えて電圧低下することがある。UPSであれば、ラインインタラクティブ方式と、常時インバーター給電方式の物に限るが、電圧が降下してもAC電流の電圧や周波数を整えて機器に出力するため、大きな影響は出ない。しかし、ポータブル電源の簡易UPS機能にはそのような機能は搭載されていないため、もろに影響を受けて機器の誤動作を引き起こしたり、最悪の場合電源が落ちることも起こりうる。

 さらに、ポータブル電源は停電時にバッテリーからの出力に切り替わる際にわずながらタイムラグが発生するため、ワークステーションやサーバなどの機器には利用できないという点も注意しておきたい。ただし、一般的なPCや家庭向けNASであれば影響のない範囲に抑えられている。

接続する機器についても注意したい

 先ほどパススルー充電とは、コンセントからポータブル電源に出力される電力をポータブル電源に接続したPCやNASなどの機器に優先的に給電する機能のことを指すと説明した。これは逆を返せばポータブル電源の最大出力を超える機器を接続した場合、コンセントから供給される電力が全て接続した機器に回されてしまうため、肝心のポータブル電源を充電できなくなる。

 この状態をオーバーロード状態と呼ぶが、接続する機器に寄っては購入すべきポータブル電源が限られてくるということに注意しなければならない。次回はそのような注意点も踏まえながら、適切なポータブル電源の選び方を解説していく。

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