コロナ禍でも過去最高の売上を記録! 全米50州を1年掛けて行脚したアイコム 中岡社長が大切にするもの(3/4 ページ)
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ワンチーム、ワンプラン、ワンゴールのスローガンを掲げた理由
―― 米国で大きな仕事をする中で、仕事の取り組み方などに変化はありましたか。
中岡 今振り返ると、日本にいたときは今でいうパワハラ上司だったと思っているんですよ(笑)。もともと体育会系出身でしたし……。ただ、現地法人の社長から、多くのことを教わりました。
例えば、「褒めるときはみんなの前で、叱るときは個室で」といわれたときに、私は全く逆のことをしたことに気づかされましたし、今では日本の企業でも常識となっている「社員の話をよく聞く」ということの大切さも、約40年前に学ぶことができました。
50州を回った経験は、やはり自信につながりました。確かに50州を回った営業担当は他にいないですから、話のきっかけになりますし、日本人でありながら、米国のどんな州の話もできるというのは大きな武器になりましたね。
―― 1999年にアイコムアメリカの社長に就任して、約8年間で売上と社員数を2倍にしました。このときは、どんなことに力を注いだのですか。
中岡 アイコムアメリカの社長時代に、「ワンチーム、ワンプラン、ワンゴール」というスローガンを打ち出しました。実はこれはフォード・モーターのCEOを務めたアラン・ムラーリー氏が、「ワンフォード、ワンプラン、ワンゴール」というメッセージを打ち出したことを参考にしました。
企業を束ねることで、米国のビッグ3の中で、唯一、政府の支援を得ずに復活したのがフォードです。その話を聞き、ぜひアイコムアメリカでも使いたいと考えました。実は、アランとはテニスをしたり、食事をしたりといったプライベートで付き合いがあり、このスローガンを使わせて欲しいと直談判したのですが、なかなかOKが出ずに、3回目にようやくOKが出ました。
「ワンチーム、ワンプラン、ワンゴール」というスローガンを掲げたのには理由があります。私が米国に赴任して最初に驚いたのは、日本とは異なる仕事に対する考え方でした。日本であれば、仕事が忙しくて、残業している同僚がいたら、「手伝おうか」ということになりますが、米国では手伝ってもらうと、「自分には能力がない」「できの悪い人間が、できる人間の邪魔をしている」という見方をされるというのです。チームワークという考え方がないということを感じました。
アランと話をしてもフォードは伝統がある会社で、優秀な人が多く、いい会社なのだが、社員の数だけ会社の数があるような状況だった、というのです。そこでワンフォードというキャンペーンを推進し、社員の結束を強化しました。規模も、業界も違いますが、私もこれをぜひやりたいと思い、承諾を得たスローガンの元で、アイコムアメリカならではのワンチーム作りを目指しました。
フォードのような大きな会社ではありませんが、それでもベクトルをあわせることの難しさを感じていた時期でした。同じ方向に進まなくてはならないのに、社内の中に自然と利害関係が生まれ、そこで意味のない争いが起きてしまう。これは規模を問わずに、多くの会社で発生していることではないでしょうか。
実際、スローガンを掲げてから、社内が変わっていく手応えがありました。
今でも、この姿勢は同じで、例えば経営会議は、会長や社長に報告するというセレモニーのようなものではなく、会長や社長が参加していなくても、活発に議論を行い、方向性を決めるということが行われています。
また、執行役員だけで形成される経営推進チームが定例会を行い、役員に提案したり、課長係長会議を通じて議論をしてもらい、それを経営会議にあげてもらったりといったように、単に上意下達ではなく、課長や係長の視点や考え方も反映できる仕組みにしています。
多くの社員が、自分たちが出したアイデアが全社で採用されていると感じることができるプロセスを採用しているのも、ワンチームの観点において、重要な取り組みの1つになっています。
ただ、その一方で、私は社員一人ひとりが、それぞれに自分のゴールを持つことが大切だと思っています。それらのゴールが会社としてのゴールにつながればいいわけです。
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