iPhone 15 Proでようやく対応の「Wi-Fi 6E」って何? 「Wi-Fi 6」と何が違う?:改めておさらい(1/3 ページ)
ハイエンドのAndroidスマートフォンから遅れること約2〜3年、iPhoneにもようやく「Wi-Fi 6E」の波が来た。「Wi-Fi 6」と何が違うのか、改めておさらいしつつ、その長短を確かめていこう。【訂正】
9月13日(日本時間)に発表された「iPhone 15 Pro」「iPhone 15 Pro Max」では、無線LAN(Wi-Fi)の機能において久しぶりのアップデートがあった。「Wi-Fi 6E」に対応したのだ。
一方で、同時に発表された「iPhone 15」「iPhone 15 Plus」は、ここしばらくの既存モデルと同様に「Wi-Fi 6」への対応にとどまっている。
Wi-Fi 6Eを利用するには、Wi-Fi 6Eに対応するルーター(アクセスポイント)が必要がある……のだが、「“E”が付くだけで何が違うの?」と思っている人もいるはずだ。「わざわざ、ルーターを買い換える必要があるの?」とも。
そこでこの記事では、Wi-Fi 6Eとは何なのか、どのようなメリットがあるのか改めて解説していく。自宅の無線LAN環境のアップデートをするかどうか、検討する際の参考になれば幸いだ。
【訂正:9月14日10時25分】記事中の無線LAN規格の仕様表について、一部数値に誤りがあったため修正いたしました
「Wi-Fi 6E」とは?
端的にいうと、Wi-Fi 6EはWi-Fi 6を“拡張(Extended)”したものだ。正式な規格名はどちらも「IEEE 802.11ax」と変わらない。何を拡張したのかというと、通信に利用できる電波の帯域である。
IEEE 802.11axは、新たな無線LAN通信規格として2019年に策定された。この規格は従来規格と同じく「2.4GHz帯」と「5GHz帯」の電波で通信を行うこととされたが、将来的に規格を“拡張”して「6GHz帯」でも通信できるようにする準備が盛り込まれた。
この準備は、2020年に正式な規格として追記された。これを受けて、日本でも各種検討と法令改正を行い、2022年9月2日から6GHz帯の通信が“合法化”され、現在に至っている。
よく見聞きする「Wi-Fi 5」「Wi-Fi 6」「Wi-Fi 7」という呼称は、IEEE 802.11シリーズの無線LAN規格をユーザーに分かりやすく浸透させるべく、Wi-Fi Allianceが定めた“ブランド名“だ。
IEEE 802.11ac、IEEE 802.11axやIEEE 802.11beといった規格名を出されても、よほど詳しくなければどの規格が“上位”なのか分かりづらい。Wi-Fi 5、Wi-Fi 6、Wi-Fi 7と呼んだ方が数字が世代(≒新しさ)を示していて分かりやすい。
規格名から世代を想起しづらいIEEE 802.11シリーズの課題を解決すべく、Wi-Fi AllianceはIEEE 802.11n以降の規格に世代をもとにしたブランド名を付けた。起点となるIEEE 802.11nは第4世代に相当するため「Wi-Fi 4」となる。現行のIEEE 802.11ax規格は第6世代で「Wi-Fi 6」、次世代のIEEE 802.11be(2024年確定予定)は「Wi-Fi 7」となっている(出典:Wi-Fi Alliance)
Wi-Fi Allianceによるブランド名は、IEEE 802.11ax規格の策定に合わせて運用が始まった。Wi-Fi 6ことIEEE 802.11ax規格は、先述の通り当初は2.4GHz帯と5GHz帯を規定しており、後から6GHz帯に関する規定が追加された。何でもかんでも「Wi-Fi 6」と呼んでしまうと、6GHz帯での通信に対応するか、ユーザーが判別することが難しくなる。
そこで同団体は、6GHz帯での通信に対応するデバイスには「Wi-Fi 6E」という呼称を与えることにした。6GHz帯に対応するかどうかは「E」があるかどうかで判別可能というわけだ。
違いは6GHz帯に対応するか否かのみ――そうなると、ますます「メリットがあるのか?」と疑問に思えてくる。しかし、この6GHz帯対応は想像以上にメリットがある。
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