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OpenAIのお家騒動の実際とMicrosoftのAI開発の今後Windowsフロントライン(4/4 ページ)

突如沸き起こった、OpenAIを巡るCEOの解任からMicrosoftのサティア・ナデラCEOの登場を振り返り、この騒動と今後の影響を考察する。

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騒動の今後とAIアクセラレーター

 Microsoftが迅速にアルトマン氏とブロックマン氏を取り込み、おそらく現在OpenAIで働く従業員らも少なくともその一部はそのまま追随していくと見られることから、後者の「スキャンダル」の可能性は低いとみている。

 そうした問題は騒動が起こる前から周囲で情報が共有され、追い出されたメンバーを受け入れる企業も事前に審査しているはずだからだ。むしろ、そうした情報を事前に察知できないレベルでMicrosoftが動かざるを得なかった点で、「突然の内部クーデター」のようなものであった可能性が高いとみている。

 前述のように、Microsoftとしては一番ダメージの少ない形で事態を終息させたと考えられるが、それでも業界をリードしていると見られていたOpenAIに対するイメージの悪化は避けられない。

 以前のレポートにもあるように、もともとOpenAIは非営利の技術開発集団としてスタートしたもので、研究開発に膨大なコンピュータリソースを必要とすることから、外部の出資を受け入れる枠として「OpenAI Globalという商用サービスの会社が誕生している。

 出資しているMicrosoftはOpenAI Globalには関与できるものの、その親組織であるOpenAIとその取締役会の意向には逆らえない座組となっており、今回はこの体制がMicrosoftら出資者に対して裏目に出てしまった。

 出資にあたって、具体的にOpenAIとMicrosoftの間でどのような契約が交わされているのか不明だが、現時点ではMicrosoftはOpenAIへのコミットは継続し、一連の騒動で被ったダメージについては不問にする形になっているように見える。

 ただ、今回の件でOpenAIのガバナンスについては危険性を感じているのは確かで、新CEOのシアー氏にはその点を明確にするよう要請しつつ、究極的にはOpenAIから一歩引いた形で徐々にフェードアウトしていく形になるのではないかと考える。

 結局のところ、今後のOpenAIの命運を握っているのはAPI使用などに関する独占契約を保持しているMicrosoftであり、膨大なコンピュータリソースを必要とする以上、もし乗り換え先を探すのであれば、Microsoftに尻尾を握られつつも新たな提携先を探さなければならない。

 今回の一連の騒動を受けてOpenAIで活動していた開発者らの散逸も考えられ、OpenAIとしての枠組みは遠くないタイミングで形骸化する可能性がある。厳しい話だが、競争が激化するAI開発において出資者に泥を塗った落とし前をつけなければならないだろう。

 一方でMicrosoftの今後についてだが、これを期に新たな飛躍を遂げる可能性がある。The VergeでTom Warren氏も触れているが、アルトマン氏はCEO在職時代にさまざまなアイデアを潜在的な出資者らに積極アピールしていたという。

 例えばNew York Timesは、下記のようにNVIDIA対抗となるカスタムAIチップを開発する計画について語っていたと報じている。

Mr. Altman has pitched a number of ideas for new projects to investors and other outsiders in recent months. During a fund-raising trip last month where he met with potential investors from the Middle East, Mr. Altman spoke about A.I.-related projects, including a plan to develop custom chips for A.I. that would compete with Nvidia, according to four people familiar with his travel who spoke on the condition of anonymity because they were not authorized to speak on the matter.

 同紙の記事では潜在的な出資先として、ソフトバンクグループの孫正義氏にも声を掛けていたという話を紹介しており、こうした活動を支援して軌道に乗るようであれば、Microsoft自身にとっても大きな収穫になるかもしれない。

 Microsoftはアルトマン氏解任劇が起きた週に米ワシントン州シアトルで開催されたIgniteカンファレンスにおいて、Azureのサーバリソースを強化するAIアクセラレーター「Maia」やArmベースの独自プロセッサ「Cobalt」を発表している。

 ディープラーニングの学習プロセッサの世界で、ほぼ独占的地位にあるNVIDIAをターゲットにした製品開発が進められており、LLMの開発と合わせてデータセンター分野での活動が今後さらに活発化してくるだろう。

AIアクセラレーター「Microsoft Azure Maia 100 AI Accelerator」
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