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インタビュー

「会計の民主化」で中小企業の業績向上に貢献 弥生の前山社長が描く日本と弥生の未来IT産業のトレンドリーダーに聞く!(2/3 ページ)

コロナの5類感染症変更以降も、経済状況や社会情勢の激変は続いている中で、IT企業はどのような手を打っていくのだろうか。大河原克行氏による経営者インタビュー連載の弥生 後編をお届けする。

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「弥生Next」はデータ活用の専門家がいない中小企業の未来を支える

―― 「会計ソフトを民主化する会社」から、「会計を民主化する会社」にシフトする上で、弥生自らはどんな変化が必要ですか。

前山 まずは、お客さまとのコミュニケーションの仕方が変わってきます。例えば、これまではソフトウェア1本に対する対価をお支払いいただくという形でしたが、今後は、ソフトウェアを使うとどれぐらいの価値を提供でき、それを元に費用が決まるといった仕組みになります。

 弥生自身も、そういった新たな仕組みを実現するためのスキルや経験値、社内インフラの構築など、さまざまなものを変える必要があります。ただ、正解が何かということは分かりませんから、ここにも、挑戦と失敗があると思っています。

 開発体制は、よりアジャイル型へとシフトし、お客さまの声や社内の気づきを製品開発にすぐに生かせるような体制作りが必要だと思っています。ただ、インボイス制度や電子帳簿保存法、各種法令への対応などはウォーターホール型の開発が適していますから、従来型の開発手法も残します。これまでのやり方と、新しいことを両立することが大切だと思っています。

弥生 大河原克行 会計 前山貴弘 社長 NEXT
次世代を担う「弥生Next」を発表する前山社長(2023年10月の発表会にて)

―― 「弥生Next」はどんな位置づけの製品になりますか。

前山 これまでの「弥生」シリーズとは異なる製品ラインに位置づけていますが、機能という点では弥生が提供している機能をワンパッケージとして包み込みます。そして、その機能は包み込むだけでなく、解き放つものだといえます。

―― 解き放つとは?

前山 単に基本機能を包含しているだけでなく、データを活用し、企業の業績の向上を支援する新たな機能を提供することになります。弥生Nextのコンセプトは、「つながる、はじまる、もっといい未来」であり、サービス同士がシームレスにつながり、事業がスムーズに進み、バックオフィス業務が完全自動化されて中小企業の価値を大きく広げることを目指します。

弥生 大河原克行 会計 前山貴弘 社長 NEXT
弥生Nextのコンセピト

―― なぜ「Next」という名称にしたのですか。

前山 理由は2つあります。1つは、弥生にとって次世代の製品であるという意味でのNextです。そして、もう1つは弥生自身のあり方、お客さまの業務のあり方も、一緒になって次の次元に行きたいという思いを込めました。

 弥生Nextでは、機能を比較する製品ではなく、体験を比較する製品にしたいと思っています。デスクトップ製品の弥生シリーズは、多くの方々に使っていただいていますが、「弥生シリーズにはこの機能がついているが、弥生Nextにはこの機能がない、あるいはその逆」といったように、機能の有無を比較しながら開発するのではなく、ユーザー自身がストレスなく、いつの間にか、会計の業務をやってくれるといった体験ができるように進化させていくことにこだわりたいと思っています。

 弥生Nextでは、会計や給与計算、請求書発行という3つの基幹業務をカバーし、これらが有機的につながります。まずは第1弾として、「弥生給与Next」と「やよいの給与明細Next」を発売しました。今後は勤怠管理の機能も追加する予定です。また、2024年には財務会計や管理会計、確定申告といった「会計」、eコマースやCRM、リーガルテックといった「商取引」でも、弥生Nextシリーズの製品を投入します。

―― どんな人に使ってほしいですか。

前山 既存の弥生ユーザーはもちろん、あらゆる人たちに使ってほしいと思っていますが、中でも起業して間もない人には、ぜひ弥生Nextを使ってもらいたいですね。

 デジタルネイティブの経営者には共感してもらえる機能が数多く搭載されています。また、他社製品を利用しているユーザーにとっても、私たちが提供する「体験」に共感してもらえるのではないでしょうか。

 これまでの弥生シリーズは、中小企業や個人事業主などが中心となっていましたが、弥生Nextでは、そこにこだわらずに多くの企業の方々に使っていただけるソリューションになっています。

弥生 大河原克行 会計 前山貴弘 社長 NEXT
弥生Nextの想定ユーザー

―― 中小企業は、弥生シリーズを使うよりも弥生Nextシリーズを使った方がいいのでしょうか。

前山 中小企業の方々には、弥生Nextシリーズを使ってもらった方がいいと私は思っています。もちろん、何が何でも弥生Nextに移行してほしいということは決して言いませんし、これからもデスクトップ製品の弥生シリーズは進化を続けますから、帳簿を簡単に入力できればいいという場合には、弥生シリーズで十分です。

 ただ、弥生Nextは会計ソフトから経営プラットフォームへと進化しますから、なるべく多くの企業に会計ソフトを超えた新たな体験をしてもらいたいと思っています。弥生に蓄積されたデータを元に同業他社との比較が可能になり、分析を元にしたアクション提案も行われるのが弥生Nextです。そこに価値を感じていただける企業が、これから増えると確信しています。

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