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インタビュー

「会計の民主化」で中小企業の業績向上に貢献 弥生の前山社長が描く日本と弥生の未来IT産業のトレンドリーダーに聞く!(3/3 ページ)

コロナの5類感染症変更以降も、経済状況や社会情勢の激変は続いている中で、IT企業はどのような手を打っていくのだろうか。大河原克行氏による経営者インタビュー連載の弥生 後編をお届けする。

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中小企業を帳簿作成業務から解放して日本が変わるきっかけに

―― 具体的には、どんなことができるのでしょうか。

前山 例を挙げると、東京都の西地区エリアで5人の従業員で経営をしている八百屋があるとします。その条件に近い八百屋は、弥生の310万いるユーザーを調べれば多くのデータがヒットします。これらの八百屋を比較すると、うまくいっている八百屋と、そうでない八百屋があることが分かります。

 その中から業績が好調な八百屋の経営内容を分析し、ベストプラクティスを抽出し、人件費の改善や、広告宣伝の取り組みなどのアクションを提案します。こういった分析結果や提案、ヒントを元に経営を改革することができます。

 弥生の310万ユーザーを匿名で分析し、有用なデータに転換し、そこから見えてくる次のアクションを提案するのが弥生Nextとなります。売上げ増加に直結する提案や、コスト削減の提案、資金繰りを改善する提案などが可能になります。

 これは、大企業が億単位のIT投資を行って構築したERPの役割や、上場企業が経営コンサルティング会社の支援によって毎日のように行っている経営分析を、弥生の310万ユーザーのデータを活用することでカバーできるといえます。中小企業が業界のデータを集めようとしても、その量には限界がありますし、数年前の統計データを参考にしなくてはならないというように、質にも課題があります。

 弥生Nextでは最新の数字を捉えることができますし、それをリアルのデータとして活用できます。日本の99%は中小企業であり、99%の企業がデータを活用した企業経営の改善が行えていないというのが実態です。そこを変えていかなくてはなりません。

 弥生Nextではデータによって経営を可視化/分析し、それを元にしたアクションを提示することで、中小企業の経営を支援します。これは、日本が変わるきっかけになるとも思っています。

 弥生Nextのサービスは開始したばかりですし、これから製品ラインアップが広がり、機能も進化します。成果が出るのは少し先になりますが、どんな成果が出せるのかといった事例も紹介していきたいですね。

弥生 大河原克行 会計 前山貴弘 社長 NEXT
弥生Nextシリーズは、周辺サービスと連携してさまざまな領域に展開していく予定だ

―― 弥生Nextの登場は、会計事務所の役割にも変化を及ぼしますか。

前山 その可能性はあると思っています。ただ、多くの会計事務所では、経営者と一緒になって経営を良くしたい、笑顔にしたいと思っていても、帳簿を作ることに多くの時間が割かれているのが実情です。

 弥生Nextを使って業務をなるべく自動化し、帳簿作りに手を動かしている時間を減らしてもらい、さらに弥生Nextで分析したデータを見ながら会計事務所が相談に乗り、経営を改善するための実行支援を行い、より伴走していくといったところに、会計事務所の役割がシフトしていくことも考えられます。

 経営の観点で支援するという、会計事務所本来の役割に立ち返ることができるきっかけになるのではないでしょうか。会計士の仕事は、生成AIの浸透によって無くなる職業で常に上位にランクされています。

 私自身は、会計士の仕事が無くなるとは思ってはいませんが、会計事務所が行っている業務の一部はAIに置き換わるのは明らかです。その代表格が帳簿を作るという作業だといえます。会計事務所には、企業を改善するためにプロジェクトマネジメントを行う役割や、それを回すことができるスキルが、今後求められることになり、そこにも弥生Nextが貢献できると考えています。

弥生 大河原克行 会計 前山貴弘 社長 NEXT

―― 今後、どんな弥生を目指していくことになりますか。

前山 弥生を、「クラウドとAIの会社」にしていきます。弥生の全ユーザーのデータを、全員で共有することで、新たなサービスを創出することを目指しており、そのためにはクラウド化の推進が必須です。

 クラウドはさまざまなサービスとつながり、ユーザーができることが広がります。より便利な体験をしてもらうために、クラウド比率を高めていきたいと思っています。

 既に当社の確定申告ソフトでは、クラウドサービスの利用の方が多い状況にあります。また、弥生は日本で最も多くの中小企業の会計データを蓄積している企業です。これは、日本一のAIシステムを作ることができる立場にあるともいえます。AIに対する投資は、これまで以上に行っていきます。

 「○○経済圏」という言い方がありますが、その仕組みを見てみると、お互いが繁栄し合うというものではなく、運営者だけが成長していくという構造がほとんどです。弥生が目指しているのは、匿名ではありながらも、お互いのデータを共有し、お互いに学び、お互いに経済を引き上げていくものになり、弥生がそのハブとしての役割を果たすことになります。中小企業が、弥生を使っていれば業績が上がるという世界を作りたいと思っています。

 弥生は、常に「挑戦者であれ」と思っています。私自身、挑戦することには貪欲に挑みますが、もし社員から「もっとアグレッシブな挑戦をした方がいい」という声が挙がるようになれば、いよいよ「挑戦するというマインドが弥生に定着した」と判断できるかもしれませんね。

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