Microsoftが提唱する「AI PC」とは何か:Windowsフロントライン(1/3 ページ)
Microsoftが、「AI PC」の普及に向けて着々と手を打ちつつある、その具体的な内容を見ていこう。
以前より話題になっているWindows 11の次期大型アップデート「Hudson Valley」こと「24H2」だが、このたびMicrosoftより正式に「Windows 11 version 24H2」の名称が与えられ、文字通り“Windows 11の次期大型アップデート「24H2」”となった。Windows 12の名称のウワサなども流れた次期バージョンだが、結局のところWindows 11を“(内部的に)大幅に”入れ替えるアップデートとなる見込みで、見た目で言えばWindows 11の“ガワ”をそのまま継承する形となる。
一方で、PCを業界的に盛り上げるというMicrosoftやOEMメーカーらの使命を考えると、この枠組みではマーケティング的に新機能や新製品をアピールしづらいという問題がある。
そこで出てくるのが、以前のレポートでも触れた「AI PC」というキーワードなのだが、分かるようでいてフワッとした表現であり、何をもってAI PCなのかが分かりづらい。今回は、5月以降にやってくるイベントや発表会での話題も含め、この辺りを考察したい。
「AI PC」が意味するもの
まずスケジュール感からみていこう。IntelがNPUを内蔵したCore Ultraプロセッサを搭載するPCが既に出始めているが、実際にAI PCをキーワードに各社のWindows PCが出回ることになるのはもう少し先の話になると考えられる。
具体的なタイミングは、もう告知されている。2024年5月20日に開催されるSurface PCとAIのイベントだ。The Vergeのトム・ウォーレン氏によれば、同イベントの招待状には「Microsoft's “AI vision across hardware and software.”」について同社CEOのサティア・ナデラ氏が話すと書かれており、ハードウェアとソフトウェアの両面から同社の最新のAI戦略について語られると考えられる。
なお、翌5月21日から23日にかけては米ワシントン州シアトルで開発者会議の「Microsoft Build」が開催される予定で、同開発者イベント開催前の前哨戦的な意味合いがある。
Buildについて、このイベントは以前よりもその性格が明確化されつつあり、本来であればWindowsクライアントやPCハードウェア回りの話題にはほとんど触れず、どちらかといえば開発プラットフォームとしてのWindowsと、Azure回りの情報提供や意見交換が中心となる。
それにもかかわらず両者が一体化したのは、“開発プラットフォームとしての”Windowsの役割が変わることを改めて宣言しておきたいからなのではと予想する。
Windows 11には、今後さらにCopilotの機能が統合されていくことは、本連載も含め各所からさまざまな形で説明が行われているが、現状のCopilotはあくまでAzure上で動くWebサービスの1つだ。それ故、Officeを含む既存製品との連携がいくら進んだとして、アプリケーションの基本はAzureもしくは企業システム内に蓄積されるデータとGraphの組み合わせ、あるいはBingなどの検索エンジンを組み合わせた、AIを“フロントエンドのUI”とした、Webサービスを利用するための“シェル”という位置付けに過ぎない。
これもAI PCを構成する要素ではあるが、おそらく5月に開催されるメディアイベント並びにBuildでのテーマはこれだけでは半分でしかなく、残りの部分が「AI vision across hardware and software」のうちの「Hardware」に当たるのだと考える。
より具体的には、現在はAzureなどのオンライン上で動作している大規模言語モデル(LLM)が、Microsoftらが想像するAI PCの世界ではオンデバイス、つまりローカルPC上に搭載されるようになり、究極的には画像認識や音声認識なども含めた「マルチモーダル(Multimodal)」での処理をある程度ローカルPC内で完結処理できるようになるのではないかと考える。
Microsoft自身はChatGPTなどのAzure上での動作に必ずしもこだわっているわけではなく、将来的にLLMを含むAIの推論エンジンの多くがオンラインからローカルへと移ってくることを否定していない。
この際に必要となるのがパフォーマンスで、さらにいえばオンデバイスでのAI動作により、アプリケーション側もUIの作り方が変わってくる。この辺りが2024年のBuildのテーマになるのだろう。
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