2024年は「AI PC」の年になることを自ら示すMicrosoft:Windowsフロントライン(1/3 ページ)
Windows 10の延長サポートが2025年10月に終了するのを前に、Windows 11移行状況はどうなっているのだろうか。同時に、「AI PC」なる物がどのような影響を与えるのか。その辺りの情報をまとめた。
前回のレポートで、2024年後半に登場するとみられる“Windows 12”について、その機能的な特徴など現在判明している事案から推察される情報を整理して紹介した。
キーワードは明確に「AI」なのだが、「Copilot」の名称で提供されるAzure上で動作する大規模言語モデル(LLM)をベースにした“検索”などのWebサービスのみならず、次の世代のWindowsにおいてはローカルデバイス、つまりPC上においても直接実行されるAIの学習済みモデルの種類が増加し、結果としてPCそのもののAIに対する実効性能が求められる時代が到来しつつあるようだ。
今回はハードウェア方面から、もう少しだけこのあたりを掘り下げたい。
AI PCがリファレンスモデルになる世界
前回の記事では「AIに最適化されたプロセッサを搭載したPCは、まだメインストリームの普及ラインまでは到来しておらず、次期Windowsの機能をアピールするための差別化要因の1つにとどまる」と述べた。
「Hudson Valley」こと“Windows 12”では、従来のWindows 11(Sun Valley)のアップデートや“Moment”とは異なり、OSコアの“世代”が一気に飛んで内部的な変更点も多岐にわたるとみられている。
ユーザーインタフェースの面では、Copilotの機能がよりWindowsの“シェル”へと統合され、MicrosoftがGUIに大きく舵を切った38年以上前の時代以来の変革となる。また、Windows MLの形で細々と実装が進んできた学習済みモデルの実行環境は、Windowsの標準アプリからサードパーティーのアプリまで、さまざまな動作に“フック”する形で機能拡張を行う。
前回紹介した例では、動画などの自動アップスケーリングやライブキャプショニングなど、PC単体の機能のみで最小限の負荷をもってこうした拡張機能が利用できるようになるとした。
ただ、メインストリームのPC、特にプロセッサ内蔵のGPU環境で動作するノートPCにおいては拡張性の問題もあり、必ずしもこれら機能を最適な形で利用できるわけではない。そのため、Microsoftの戦略として「最新PCであれば、こんなことができるようになる」という形で次期Windowsの特徴をアピールし、「最新PCでなければ動作しない」というようなメッセージは出さない可能性が高い。
重要なのは、こういったアピールが認められることによってローカルで実行するAIを活用したWindowsアプリケーションが今後徐々に増えていくことで、数年先のPCの買い換えサイクルを経て、少しずつ既存の環境の代替わりが進むことだ。
ただ、Microsoftとしてもこの流れを説明するための“PC”が必要であり、そこで白羽の矢を立てたのが「Surface」なのではないかと筆者は考えている。パノス・パネイ氏が退任し、自社製デバイスを開発するMicrosoftのハードウェア部門が縮小され、Surfaceの製品ラインも大幅に整理が行われることになったと複数の報道は報じている。
現在、Microsoftでは主要製品ラインに絞った形でSurface事業を再編していると言われているが、次期Windowsの機能をアピールするためのデバイスとしてのSurfaceに再び着目している可能性がある。
もともと、Surfaceは「タブレット型PC」という新しいカテゴリーを業界に広くアピールするために、一種のリファレンスモデルとして、Windows PCを開発/製造するサードパーティーベンダーの批判を振り切ってハードウェア事業に参入してきた背景がある。新しいWindowsの形をアピールするため、今再びSurfaceが“リファレンスモデル”としての役割を与えられつつあるのかもしれない。
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