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次世代CPU「Lunar Lake」でIntelが目指す“AI PC”とは? 驚くべき進化点と見える弱点、その克服法(2/4 ページ)

COMPUTEX TAIPEI 2024に先立って、Intelが今後発売される予定のCPUに関する技術説明会を開催した。この記事では、2024年第4四半期に登場する予定のモバイル向けCPU「Lunar Lake」(開発コード名)の技術的概要を紹介する。

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Pコアでハイパースレッディング廃止 今後のCPUにも影響するか?

 Lunar LakeのComputeタイル(CPUコア)は、高性能コア(Pコア)が4基、高効率コアが4基の計8コア構成となる。第12世代以降のIntel CPUのノリで考えると、「ということは合計8コア12スレッドなのかな?」と思ってしまう。

 しかし、このLunar LakeではPコアがマルチスレッド動作(SMT)、Intel風にいうと「ハイパースレッディング」に対応していない。つまり8コア8スレッドのCPUということになる。

8コア8スレッド
Lunar LakeのCPUはPコア4基/Eコア4基の計8コア構成となるのだが、PコアがSMTに対応しない。「8コア8スレッド」のCPUだ

 「なぜハイパースレッディングを廃止してしまったの?」という疑問に対する詳細は、別の記事で解説したいと思っている。しかし、読者の皆さん的には関心が高いと思うので、本稿でも簡単に説明したいと思う。

 結論からいうと、「Pコアにおけるハイパースレッディング廃止」という方策は、「機能面での妥協」ではなく、「現状では引き出せる性能と消費電力のバランスを最適化しやすい」という理由から導き出された。

 つまり、微細化が進んだ現状までのプロセスノードにおいて、ハイパースレッディング機能を実装するために必要なトランジスタ数と、これらを動かすための消費電力、そしてハイパースレッディングによって得られるパフォーマンス向上率のバランスが割に合わなくなりつつあるのだ。

Pコアの設計
Pコアはシングルスレッドにおける実行効率を一層重視するようになった。こうすることで、ゲームアプリ(プログラム)との相性はむしろ高まる
Eコアの設計
Low Power Islandに置かれるEコアも、通常タスクをかなり高速に処理できるようになっている

 CPUを始めとする各種プロセッサに「ある機能」を実装するためには、プロセッサダイにおいて、一定の面積を専有して、機能を実現するための「トランジスタロジック」を形成しなくてはならない。通常、その面積占有率はトランジスタの数と比例するため、消費電力の増大に直結する。

 特にハイパースレッディングの実装に当たっては、演算器のセットはCPU1基分でも、「レジスタファイル群」、命令実行用の「キューイングバッファ」や「スケジューリング機構」は2基分必要となる。これらがあるがゆえに、SRAMロジックの占有面積はどうしても大きくなってしまう。

 最近のCPUでは、パフォーマンスの向上率を「IPC(1クロックあたりの命令実行数)」で算出することが多いが、ハイパースレッディングはまさにIPCを向上するために生まれた技術だ。

 Intelが「Pentium 4」で初めてハイパースレッディングを実装したのは2002年。当時は「シングルスレッドにおけるIPCを向上させる」よりも、「互いに独立した無関係な2スレッドを並列実行させる」ハイパースレッディングの方が、全体としてのIPCを向上しやすかった。しかし、時代が流れて技術が進歩すると、シングルスレッド処理のために盛り込まれたIPC向上の仕組み(順不同のスーパースカラ実行/条件分岐予測精度の向上)が、ハイパースレッディングで得られるIPC向上効果と大差ない状況となった。

 要するに、昨今はハイパースレッディング機構の搭載によって、トランジスタや消費電力が増える代わりに得られるメリットが薄くなったのである。

 むしろ、ハイパースレッディング処理に伴い生じるオーバーヘッド(レジスタファイルの総入れ替えなど)が、シングルスレッドのパフォーマンスを阻害するケースも出てきている。特にゲームアプリのコアプログラムは、逐次処理の塊であるためシングルスレッド性能がパフォーマンスを左右することが多いので、Pコアのマルチスレッド非対応化はむしろ歓迎されるだろう。

 もっと極端にいえば、「ハイパースレッディングに対応させるくらいなら、Eコアを増やした方がマシなんじゃね?」という状況なのである。

ハイパースレッディング
最新のアーキテクチャ/プロセスで開発したCPUコアでは、シングルスレッドに“専念”させるとIPCが30%向上するという

 ハイパースレッディングの実装によって増えるトランジスタの数だが、先に触れたPentium 4の場合が「1コアあたりプラス5%」程度だった。しかし、近年のCPUではこれが「1コアあたりプラス10〜20%」程度にまで達している。

 EコアのサイズがPコアの4分の1程度にとどまることを考えると、「面積を考えてもEコア増やした方がいいよな、そうだよな!」的な状況になっているのだ。

ハイパースレッディング
仮にこのCPUコアでハイパースレッディングを有効化してマルチスレッド処理を行ったとすると、IPCの向上は15%にとどまる。「それならハイパースレッディングを非対応とすることで、浮いたトランジスタのスペースと消費電力を別のことに使おう」と考えたのが、今回のLunar LakeのPコアなのだ

 今回のイベントの質疑応答において、Intelは「サーバ向けCPUにはなら、面積と電力のバジェット(予算)をある程度多く取ることをためらわない設計ができるので、ハイパースレッディングを引き続き搭載するかもしれない」と語った。

 少し遠回りな表現にも思えるが、この言い方から察するに、優れた省電力性能と絶対的なシングルスレッド性能を追求する観点から、クライアント向けCPUではハイパースレッディング機構を順次なくしていく可能性は高い

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