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「Copilot+ PC」って何だ!? 「AI PC」は早くも第2世代へ(3/3 ページ)

6月18日、ついに「Copilot+ PC」が一般販売される。ここでは、移ろいゆく「AI PC」の歩みをまとめた。

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MicrosoftのローカルAIアプリはNVIDIAのGPUでも利用可能に

 Copilot+ PCの流れで浮上する疑問が「NVIDIAのGPUで、Microsoftが提供する新しいローカルAIアプリは高速化できないの?」ということだ。

 NVIDIA GeForce RTXリシーズにはAI推論に特化したTensorコアが統合されており、対応アプリでは、AI推論を利用した超解像処理や特殊効果処理などを利用できる。その性能は、初代のGeForce RTX 20シリーズから40TOPSという水準を軽く超えており、NVIDIA GeForce RTX 4090では1321TOPSにも上る。エントリー向けのNVIDIA GeForce RTX 3050でさえも71TOPSである。ハードウェアのパフォーマンスだけでいえば十分だ。

 残念ながら、現状ではNVIDIA GPUのハードウェアリソースをMicrosoftが提供するローカルAIアプリで利用することはできない。しかし、将来的にはNVIDIAのGPUもWindows Copilot Runtime利用できるようになるよう、MicrosoftとNVIDIAが開発を進めており、2024年後半にプレビュー版をリリースする予定だという。

 なお、NVIDIAはこうした処理ができるdGPU搭載PCを独自に「RTX AI PC」と定義し、アピールしていく構えだ。

NVIDIAのGeForceシリーズの主なスペック比較
NVIDIAのGeForceシリーズの主なスペック比較。Copilot+ PCの基準を大きく上回っているのが分かる

リアルタイムでパーソナルなAI活用が解禁 しかも使い放題

 ローカルでAIを処理するのか、ということについてもフォローしておきたい。

 「サーバ側でAIが使えるなら、それでいいんじゃない?」と思う人がいるかもしれない。しかし、ローカルでAI処理を行う理由としては、リアルタイム性(レスポンス)、パーソナル(プライバシー)、サーバリソース(コスト)、電力効率などが挙げられる。

 リアルタイム性については、Windows Studio Effectsによるカメラ効果が分かりやすい例だ。カメラの映像をいちいちサーバに送ってAI処理をしていては遅すぎるし、ネットワークのトラフィックも膨大になってしまう。こうしたリアルタイムのAI活用はローカルAIでしかできない。

 また、個人情報などパーソナルなデータをサーバに送信しなくて良いというのもローカルAIのアドバンテージだ。リコールのような機能も(それでもセキュリティの課題はあるとはいえ)ローカルAIだからこそできることだ。

 サーバ側の負荷の問題もある。AIサーバの運用には膨大なコストがかかり、アクセスが集中すれば遅延やサービス停止のリスクもある。Dall-E 3による画像生成も1日に利用できる回数が制限されているように、回数制限や利用料金を課しているサービスは多い。その点、ローカルAIであれば、サーバの負荷は気にする必要がない。OSに統合されたMicrosoftのアプリであれば、無料で使い放題だ。

 サーバとの通信が不要な点は、電力効率についてもメリットがあるだろう。前述したように、AI推論用に特化したNPUのメリットと合わせれば、AIを活用する前提での電力効率のアドバンテージはかなりのものになると思われる。

ついに登場したCopilot+ PC!

 6月18日から販売が開始されるCopilot+ PCの第1弾は、全てQualcommのSnapdragon Xシリーズを搭載している。Snapdragon Xは、Arm64アーキテクチャのCPUコアを搭載したSoC(System On Chip)であるので、少々注意も必要だ。

CPU-Zで見た、Snapdragon X Eliteの概要
CPU-Zで見た、Snapdragon X Eliteの概要

 Windows 11では32bitのx86アプリに加えてx64アプリのエミュレーション機能も搭載しているため、x86やx64アプリも大抵は動作するようになっているが、性能的にはネイティブ対応アプリに見劣る。

 ただ、Microsoftは既にTeams/PowerPoint/Outlook/Word/Excel/OneDrive/OneNoteといった主要アプリのArm64ネイティブ対応を済ませている。また、サードパーティー製品では、アドビのPhotoshop/Lightroom(Premiere Proは開発中)、ChromeやZoom、Blender(α版)、DaVinci Resolve(β版)などがネイティブ対応しており、今後増加していく見込みだ。

 なお、ドライバはエミュレーションできないので、Arm用のドライバが用意されていない周辺機器は動作しない。そのあたりの互換性やパフォーマンスについては、実機でのレポートで明らかになっていくだろう。ぜひ注目してもらいたい。

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