「Copilot+ PC」って何だ!? 「AI PC」は早くも第2世代へ(2/3 ページ)
6月18日、ついに「Copilot+ PC」が一般販売される。ここでは、移ろいゆく「AI PC」の歩みをまとめた。
Qualcommが先行してIntelとAMDも続く
現在、Microsoftに承認されている発表済みのCPUは、QualcommのSnapdragon X EliteまたはX PlusシリーズとAMDのRyzen AI 300シリーズ(開発コード名:Strix Point)の2種類だ。
Snapdragon X Eliteは45TOPSのNPU、AMDのRyzen AI 300シリーズは最大50TOPSのNPUを統合している。
Intelが開発中の次世代CPU(開発コード名:Lunar Lake)は、45TOPSのNPUを搭載し、CPUコアとGPUコアを合わせた全体では、最大120TOPSの処理性能を持つことが明かされている。
- →QualcommがPC向けハイエンドSoC「Snapdragon X Elite」を発表
- →50TOPSの新型NPUを搭載! AMDが新型モバイルAPU「Ryzen AI 300シリーズ」を発表
- →次世代CPU「Lunar Lake」でIntelが目指す“AI PC”とは?
Microsoftが新たに提供するローカルAIアプリ
これまでNPUのメリットを実感できる場面は、Windows Studio EffectsによるWebカメラのエフェクトのみだったが、Copilot+ PCではこれが大きく変わる。
Microsoftは「Windowsの再構築」に取り組んでおり、Copilot+ PCと合わせて、ローカルAIで動作する数々の新機能を盛り込んでいる。
リコール
ファイル/画像/テキストなど、PC上で見たもの、操作したものを簡単に探し出すことができる。見つけたいものの手がかりを入力するだけで、PCが候補を探し、表示してくれる。リコールの機能はユーザーの行動を「セマンティックインデックス」という新しい仕組みを利用して記録することで実現される。
ただ、この機能は便利な反面、プライバシーやセキュリティの確保に課題を抱えている。二転三転した後、当面はWindows Insider Programでのみ提供されることになった。
コクリエイター
「ペイント」アプリで利用可能になる生成AI機能で、キャンバスに描いたスケッチを洗練されたアートに変えてくれる。スタイルの選択とテキストでの指示が行え、どの程度スケッチを残すかは「創造性」のスライダーで調整できる。
Restyle Image
写真のスタイルをAI機能で修正、加工する機能だ。スタイルの選択やテキストプロンプトでの指示により背景や前景を変更したり、写真全体の雰囲気を変えたりすることができる。
ライブキャプション
ビデオやオーディオをリアルタイムで英語に翻訳し、字幕を生成する機能。44カ国語に対応している。ただし、現時点では「英語から他言語への翻訳」「他言語から他言語への翻訳」には非対応だ。
Windows Studio Effects
カメラの映像にリアルタイムに適用されるエフェクト。以前より機能が拡張、整理された。人物や背景の照明を自動調整する「ポートレートライト」、画面のコンテンツを読んでいる時でもカメラ目線を維持できる「アイコンタクト/テレプロンプター」、映像の雰囲気を変える「クリエイティブフィルター」といった機能を使える。
Windows Copilot Runtimeで「AI OS」へと進化したWindowsがAI開発を加速
Microsoftは、Build 2024において、Windows用のAI開発プラットフォーム「Windows Copilot Runtime」も発表し、APIを利用したローレベルの開発からライブラリーを利用した機能の組み込みまで、さまざまなレイヤーでAIを利用したWindowsアプリが開発しやすくなる環境を整えた。
Copilot+ PCで利用可能になる新しい機能も、このプラットフォームがベースになっている。Windows Copilot Libraryとして、OS標準AIアプリのベースとなっているリコール(セマンティックインデックス検索)やStudio Effects(映像効果)、Text Recognition(OCR、画像からのテキスト抽出)、Phi Silica(小規模言語モデル)などが提供される他、DirectML(DirectX同様のローレベルAPI)、PyTorch(Pythonのライブラリー)、WebNN(Web用ブラウザ用API)などもサポートされる。
これにより、開発者はPCにローカル搭載されたNPUやGPUを活用するAI機能を組み込んだアプリを開発しやすくなる。今後、NPUやGPUを活用するWindows用AIアプリが積極的に開発されるための下地が整ったことで、40TOPS以上のNPUを搭載するCopilot+ PCのアドバンテージはどんどん大きくなっていきそうだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
「Copilot+ PC」なら最高のAI経験を得られる? リコールやコクリエイター機能を使ってみた
6月18日から、40TOPS以上のNPUを搭載する「Copilot+ PC」の出荷が始まる。それに先駆けて、日本マイクロソフトがCopilot+ PCの特徴的な機能を紹介するイベントを開催した。
Microsoftのイベントと「AI PC」で一気に上昇する要求スペック 大きく変化するAI PC時代のPC選び
Microsoftのスペシャルイベントが開催目前に迫っている。次世代のSnapdragon搭載PCを始めとして、“AI PC”の新たな姿が提示されるだろう。
なぜASUSは「Copilot+ PC」を他社に先駆けて数多く用意できたのか? 同社幹部に聞く
COMPUTEX TAIPEI 2024の期間中、台湾ASUSTeK Computer(ASUS)の幹部が日本のメディア向けにグループインタビューを行った。同社の気になる動きをウォッチした。
次世代CPU「Lunar Lake」でIntelが目指す“AI PC”とは? 驚くべき進化点と見える弱点、その克服法
COMPUTEX TAIPEI 2024に先立って、Intelが今後発売される予定のCPUに関する技術説明会を開催した。この記事では、2024年第4四半期に登場する予定のモバイル向けCPU「Lunar Lake」(開発コード名)の技術的概要を紹介する。
50TOPSの新型NPUを搭載! AMDが新型モバイルAPU「Ryzen AI 300シリーズ」を発表 Copilot+ PCを含む搭載モデルは7月から順次登場
AMDが、NPUの性能を向上したモバイルモバイル向けAPU「Ryzen AI 300シリーズ」をリリースした。NPUのピーク性能は50TOPSで、Microsoftの定める「新しいAI PC」の要件も満たしている。【訂正】


