ロジクール初の60%キーボード「PRO X 60」がゲーミングでも仕事用途でも“惜しい”と感じてしまった理由(4/4 ページ)
ロジクールから同社初の60%ゲーミングキーボードが登場した。価格は税込みで3万3110円と高価格帯だが、それに見合う性能を持っているのか。実際に試してみたところ……。
G-Hubによるキーマップの変更も
PRO X 60の特徴の1つがフルキーカスタマイズ機能だ。キーマップの変更にはG HubのKEYCONCTROLを使用する。このUIが当初、どうにも理解しづらかったため、ここで改めて説明しておきたい。なお、これはあくまで実際に操作した結果を記したものであり、筆者の理解不足、誤解、あるいはバグの可能性もあることをあらかじめご了承いただきたい。
PRO X 60には工場出荷時設定とカスタム割り当ての2つのモードがあり、Fn+Aキー(変更可能)もしくはKEYCONTROLの画面下のスライドスイッチで切り替える。
キーの割り当てレイヤーにはベース、Fn、Gシフトの3つがあり、ベースはキー単体を押したとき、FnはFnキーを押したとき、Gシフトはロジクール独自のGシフトキーを押したときの挙動を示す。変更したキーマップはカスタムプリセットとして保存できるが、その階層構造が直感的に理解しづらく、混乱しやすい。
例えば、無変換キーを「そのまま押したら半角/全角、Fnキーと一緒に押したらWindowsキー」と設定したいとしよう。通常の感覚だと、(1)割り当てレイヤーを「ベース」にして全角半角を割り当て→(2)レイヤーを「Fn」に切り替えてWindowsキーを割り当てだと思うのではないだろうか。だが、実際に操作すると(2)のレイヤーを「Fnキー」に切り替えても、既に全角半角が割り当てられた状態になっているはずだ。
これはKEYCONTROLの管理が「各レイヤーにカスタムプリセットを割り当てる」という構成になっているためだ。先ほどの設定を実際に実現するためには「無変換キーをそのまま押したら半角/全角になる」というカスタムプリセット1と、「無変換キーをそのまま押したらWindowsキーになる」というカスタムプリセット2を作成し、ベースレイヤーにカスタムプリセット1を、FNレイヤーにカスタムプリセット2を割り当てる、という操作を行わなければならない。
つまり、ベース、Fn、Gシフトレイヤーそれぞれをカスタマイズする場合にはカスタムプリセットを3つ用意することになる。筆者にとっては地動説と天動説くらいのパラダイムシフトが必要で、丸一日悩むことになった。
左上端のキーはロジクールGのロゴが入ったGシフトキーで、デフォルトだとEsc、Fnキーと同時押しで全角半角となる。KEYCONTROL上ではカスタム割り当てができるのだが、なぜかこのキーだけは実際に変更が有効に動作しなかった。筆者は普段から英語配列を使っており、ロジクールGキーの位置にある「`(バッククォート)」とAltで全角半角を切り替えている。そのシーケンスが実現できないことは致命的だった。
各レイヤーでのキーマップはキー単体だけでなく、Shift/Ctrl/Altのモディファイア(各修飾キーとの同時押下)も あわせて設定できる。また、トリガーとなるイベントは「標準」の他、「押す」「保持」「リリース」がある。
通常利用においては「標準」で事足りるが、「リリース」をうまく使えば東プレの「REALFORCE GX1」のKill Swith、Razerの「Huntsman V3 Pro」スナップタップ以上の高速操作ができるかもしれない。これらはあるキーが押されている間に他のキーが押されると、自動的に元のキーがリリースされ、後から押されたキーのみが押された状態になる、というもの。
これはカウンターストレイフ(移動を素早く止めるために逆方向のキーを押すテクニック。逆キーストッピング)の反応をより高速化するサポート機能だが、PRO X 60の場合、例えばDキーの「リリース」にAキーを設定すれば、指を離しただけで反対移動キーの入力が行われることになる。実際の設定ではリリースを設定すると保持(キーを押しっぱなしにした状態)のキーリピートが効かなくなってしまうため、マクロ機能でキー押下げのみを作成し、それを保持の割り当てに設定することで意図する動きができるようになった。
もっとも、ハードウェアチートと認定される可能性があることには注意が必要だ。また、ここで作成したキーマップはコミュニティーに公開し、他のユーザーに利用してもらうこともできる。
ロジクールのプレスリリースでは「CtrlやShiftキーなどを同時押しすることで、1つのキーに最大5つの操作を割り当てられるようになりました。ファンクションキーやG-Shiftを使うと、さらに3倍の操作を割り当て可能になるので、1つのキーに最大15個の操作を登録できます」とあるが、モディファイアは「なし」を含めて4種類、イベントも4種類あるので、組み合わせて1キー、1レイヤーあたり16種類の設定が可能、そのうち最大5つまでを登録できる、ということのようだ。
お勧めできるユーザー層に悩む製品
仕事で使えるか、それともゲーミング特化か──という観点で見ると、PRO X 60には中途半端という印象が否めない。ゲーミングキーボードとして満を持してのタイミングでありながら、フタを開けてみれば昨今の他社先行機種に比べ、見劣りする点が多い。
ワイヤレス接続もサポートしているが、Bluetoothのペアリングは1つのみだ。さらにアクチュエーションポイントのカスタマイズやラピッドトリガーには対応していないという仕様に、肩透かしを感じる人は多いのではないだろうか。
その一方で、ゲーミングキーボードであるが故に犠牲になった機能もある。複数PCとの接続やセキュリティを重視した接続がその一例だ。
もちろん、そのような機能を必要としない人には関係ない、という意見は当然だ。だが、それは「価格相応であれば」という大前提あってのことだろう。
税込みで3万3110円という価格は高級機であり、その価格の見返りとして期待される機能やフィーリングも高い。円安の影響も大きいだろうが、純粋にゲーミングキーボードを求める人にも、日常使いと兼用できる高級キーボードを求める人にも、お勧めしづらい価格で出てしまった製品だと感じる。素直に次の60%キーボードに期待したい。
(製品協力:ロジクール)
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