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なぜ“まだ使えない”Apple Intelligenceを推すのか? 新製品から見えるAppleの狙い本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/5 ページ)

Appleが、毎年恒例の9月のスペシャルイベントを開催した。順当に発表された新型iPhoneでは、生成AIを生かした「Apple Intelligence」が推されてるのだが、当のApple Intelligenceは発売時に使うことはできない。なぜ、発売当初に使えない機能を推すのだろうか。新製品の狙いを見ていこう。

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一気に“2世代”進化した「iPhone 16」

 ここからは発表された新製品を見ていこう。幾つかある新製品のうち、最も大きなアップデートは「iPhone 16」「iPhone 16 Plus」(以下まとめて「iPhone 16」)と、後述する「Apple Watch Series 10」だ。

 Proを冠していない「iPhone 15」「iPhone 15 Plus」と比較すると、iPhone 16はSoC(System on a Chip)が一気に2世代分進化した。ボディーの素材、5倍望遠カメラの非搭載、動画撮影における「ProMotion」対応といった細かい部分を除けば、2023年の「iPhone 15 Pro」「iPhone 15 Pro Max」とほぼ同等か、部分的には超える体験をもたらしてくれる。

iPhone 16
メインストリームのiPhone 16シリーズは、6.1型の「iPhone 16」と6.7型の「iPhone 16 Plus」の2サイズ構成となる
プロセッサ
SoCは一気に2世代進化した「Apple A18チップ」を採用する

 iPhone 16は最大2000ニトの明るいディスプレイも魅力だろうが、アウトカメラに約4800万画素の「Fusionカメラ」が搭載されたことも注目ポイントだ。このカメラはiPhone 15 Proに採用されたセンサーのアップデート版となる。

 約1200万画素の新型超広角カメラも、従来は対応していなかったオートフォーカス(AF)に対応し、マクロ撮影も可能となった。望遠カメラを備えないiPhone 15 Proを超えるものだ。

Fusion Camera
アウト側のメインカメラは、約4800万画素の「Fusion Camera」となっている。画素の一部を切り取ることで、約1200万画素の2倍望遠カメラとしても運用できる
超広角
超広角カメラは新型センサーに変更され、AFとマクロ撮影にも対応した

 カメラにおける体感的な違いとしては、新搭載された「カメラコントロール」に注目したい。

 カメラコントロールは圧力センサーとタッチセンサーを組み合わせたデバイスで、クリック/長押し/スライドといった直感的な操作で、ズームや露出、被写界深度などの調整を可能にする。メカニカルな“スイッチ”ではないため、長期使用での故障の危険も少ないと思われる。

 当初はカメラ操作を使いやすくすることに使われるカメラコントロールだが、ソフトウェアの作り方によって、さまざまな機能を追加可能だ。2024年内には「ビジュアルインテリジェンス」機能が追加される。これは「Google レンズ」のように、カメラで捉えた対象を認識し、関連情報の表示する機能だという。認識処理にはクラウドを使わず、端末内で完結するとのことだ。

カメラコントロール
iPhone 16に新たに搭載された「カメラコントロール」
ビジュアルインテリジェンス
後日実装される「ビジュアルインテリジェンス」はGoogle レンズのような機能だが、基本的にデータは端末内で処理される。必要に応じて、GoogleまたはChatGPTを使って検索や質問をすることも可能だ

 「フォトグラフスタイル」にも改善が加えられている。これまでは“雰囲気を選ぶ”だけだったのだが、iPhone 16では色調やハイライト、シャドウをシンプルなタッチ操作でリアルタイムで調整できるようになった。スキントーンやさまざまな被写体のテクスチャーを、より自然で個性的な仕上がりにできる。

 フォトグラフスタイルは表示時にリアルタイム適用されるため、撮影後はもちろん、後から編集することもできる。オリジナルの写真は別途保存されているので、いつでも元の状態に戻すこともできる柔軟性もある。

 ビデオ撮影ではカメラ位置が縦に並んだことで空間ビデオ撮影が可能になった。機械学習を用いた「風切り音低減機能」も搭載されたので、屋外での撮影がより高品位になるだろう。

 iPhone 16のカメラは「完全に新しく進化した」というよりも「新しいSoCとソフトウェアの力で、iPhone 15 Proのメインカメラをリファインした」と考える方が的確だ。

空間ビデオ
アウトカメラの位置が縦並びになったことで、空間ビデオを撮影できるようになった
風切り音
機械学習で風切り音をカットする機能も備えている

 iPhone 16の“心臓部”である「Apple A18チップ」は、「iPhone 15」「iPhone 15 Plus」で採用されていた「Apple A16 Bionicチップ」からは2世代の進化となる。今考えると、iPhone 15に(順当な)A17チップを搭載しなかったのは「Apple Intelligenceに非対応にするためではないか?」と邪推したくなる。

 このA18チップは“Pro”ではないものの、Neural Engine(NPU/推論プロセッサ)自体はA18 Proチップと同じものを採用しているのでApple Intelligenceが動作する。A16 Bionicチップと比べると、CPUコア(Pコア2基+Eコア4基)は最大30%高速ながらも消費電力は最大30%削減されている。GPUコア(5基)も最大40%高速化されているが、多くのユーザーは最大35%の電力効率向上の方がうれしいかもしれない。

CPUコアの電力効率
A18チップのCPUコアは、同じパフォーマンスであればA16 Bionicチップ比で最大30%の消費電力削減を果たしている
GPUコア
A18チップのGPUコアも、同じパフォーマンスであればA16 Bionicチップ比で最大35%の電力削減を果たしている

 iPhone 16では、前世代ではPro限定だった「アクションボタン」も搭載され、バッテリー持ちの改善、最大25Wの高速ワイヤレス充電、衛星経由のメッセージング機能(米国とカナダでのみ利用可能)が実装された。米国では緊急SOSのライブビデオ機能も導入された。Wi-Fi 7(IEEE 802.11be)への対応も行われている。

 望遠カメラにこだわりがないならば、今年のiPhone 16はかなりお買い得な選択肢だと思う。

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