なぜ“まだ使えない”Apple Intelligenceを推すのか? 新製品から見えるAppleの狙い:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/5 ページ)
Appleが、毎年恒例の9月のスペシャルイベントを開催した。順当に発表された新型iPhoneでは、生成AIを生かした「Apple Intelligence」が推されてるのだが、当のApple Intelligenceは発売時に使うことはできない。なぜ、発売当初に使えない機能を推すのだろうか。新製品の狙いを見ていこう。
“クリエイター向け”をより色濃くした「iPhone 16 Pro」
Proではないモデルの高性能化が進むにつれて、ここ数年のiPhoneのProモデルは最先端技術を搭載した“先鋭的”なモデルになる傾向にある。今回登場した「iPhone 16 Pro」「iPhone 16 Pro Max」(特記がない限り、以下まとめて「iPhone 16 Pro」)では、この傾向が一層強まっている。
iPhone 16が持つ特徴は全て備えた上で、より高性能なSoCと5倍望遠カメラの搭載、そしてこれらを活用したソフトウェア機能によって、さらにプレミアムなモデルとしての体裁を整えている。
iPhone 16 Proに搭載される「Apple A18 Proチップ」は、基本的により高速に動作するA18チップに、特別な機能を幾つか追加したものだと考えればいい。
まずNeural Engineだが、16コア構成であることはA18チップと同様だが、ピーク時の処理性能がより高められている。iPhone 15 Proに搭載されている「Apple A17 Proチップ」と比べると、ピーク時のパフォーマンスは最大15%高速になっているという。
CPUコアはA18チップと同じPコア2基+Eコア4基構成だ。A18チップとの比較は特になされていないが、A17 Proチップ比で最大15%高速化し、最大20%の省電力化を果たしている。GPUコアはA18チップよりも1基多い6基構成で、A17 ProチップのGPUコアと比べると最大20%の性能向上を果たしたという。ハードウェアベースのレイトレーシング性能も、最大2倍になったとのことだ。
カメラシステムは基本的にiPhone 16と共通だが、5倍望遠カメラがあることが大きな違いだ。今回はMaxではないモデルも5倍望遠カメラを備えているので、カメラ面でMaxモデルと非Maxモデルの差分はない。純粋に画面や本体のサイズの好みで選べるようになった。
高速読み出し可能なセンサーの採用により、ビデオ撮影では4K/120fpsのProRes録画が可能となり、高精細かつ高画質のスローモーション撮影も実現した。その他、プロフェッショナルな撮影に対応できる機能も幾つか追加されている。その一例が「Academy Color Encoding System(ACES)」への対応だ。
ACESは、映画やTV番組の制作における色管理に関する国際標準規格となる。これに対応することで、映像制作ワークフローにおける高品質かつ一貫性のある色再現を実現できる。
iPhone 15 Proに搭載された「Log撮影」もそうだったが、今回ACESに対応することで「映像制作ツール」としての先鋭化が一層進んでいる印象だ。クリエイター予備軍の若年層が”本物の技術”をそのままズバリでなくとも、近い体験として得られるのは悪くない話だ。
本体には4つのスタジオ品質の低ノイズマイクも内蔵され、それらの差分演算により空間オーディオ録音にも対応するという。こちらも、再現性を実機で試すのが楽しみな部分だ。
ディスプレイはiPhone 16 Proが6.3型、iPhone 16 Pro Maxが6.9型と少し大きくなっている。額縁を細くすることで本体の大型化を抑えている。「ProMotionテクノロジー」による最大120Hzの可変リフレッシュレートや、常時表示(Always-On Display)機能は引き続き採用されている。
また細かな点だが、Face IDが従来よりも斜めの角度から認証可能になったという。そして、緊急SOS機能における衛星経由での通信の安定性の向上の他、システム全体の省電力化(iPhone 16 Pro Maxでは最大29時間のビデオ再生が可能)など、基礎体力の強化が図られた。
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