シャープがEVを売りたい理由 CTOに聞く、“シャープらしさ”を取り戻すために今考えていること:SHARP Tech-Day(6/6 ページ)
シャープが、操業111周年を記念して2023年に行ったイベント「SHARP Tech-Day」が、装いも新たに2024年も開催される。本イベントの狙いやこれまでの取り組み、そして未来への挑戦を同社CTOの種谷元隆氏に聞いた。
AIoT 3.0で社会課題の解決のための基盤へと進化
―― シャープはAIとIoTを組み合わせた「AIoT」を提唱していますが、このほど「AIoT 3.0」を新たに打ち出しました。AIoTは、どんな進化を遂げているのですか。
種谷 2024年度から、シャープが進めているのが「AIoT 3.0」です。AIoTは、2015年にさまざまな家電をIoTによってクラウドのプラットフォームにつなぎ、AIによって人に寄り添う、優しい存在へと進化させることを目指してきました。まずは、シャープのTVや白物家電をAIoT化することで、家電の機能やサービスを拡張することを目指しました。
例を挙げると、ヘルシオでは最新のレシピをダウンロードすることができたり、調理履歴を元に各家庭の好みを理解してメニューを提案したりといったことができます。これを「AIoT 1.0」とすれば、サービスをさらに進化させて複数機器との連携や住設機器との連携、他社サービスとの連携によって、新たな価値を提供してきたのが「AIoT 2.0」だといえます。
2024年9月1日時点では991機種がAIoTに対応しており、対応製品の累計出荷台数は国内で900万台を超えています。
こういった広がりをベースに、さらに進化を遂げたのが今回の「AIoT 3.0」です。ここでは社会課題の解決のための基盤として、AIoTが活用されることを目指しており、既に一部では関係団体や企業とともにPoCを開始しています。背景にあるのは、AIoT対応の家電が900万台普及したことで、新たな価値を提供できるようになったことです。
例えば自然災害などが発生し、停電したり、場合によっては地域が孤立してしまったりといったことが国内でも起きています。多くのAIoT家電が接続されたデータをもとに、電気が停止したエリアなどを即座に把握することができますから、自治体や関連団体と連携することで、迅速な救助活動や支援活動につなげることも可能です。
AIoTが防災レジリエンスや高齢者見守り、家事支援、カーボンニュートラルといった社会課題の解決に向けた基盤へと進化し、それを実現するために地域との連携を加速していく考えです。SHARP Tech-Dayでも、AIoT 3.0の展示コーナーを設けて、AIoTがどんな形で社会のお役に立てるのかを紹介する予定です。
―― 「SHARP Tech-Day'24 “Innovation Showcase”」の来場者には、何を感じ取ってもらいたいですか。
種谷 ひと言で言えば「シャープのDNAとは何か?」ということを、来場者の方々に感じ取っていただきたいと思っています。そして、「この技術を使ってみたい」と思ってもらえることが大切だとも考えています。
Game ChangerやNext Innovationという言葉は、振り返ってみると当社が100年以上に渡って、脈々と受け継いできたものです。創業者である早川徳次氏の「他社が真似するような商品を作れ」という言葉も、当社がGame Changerとなり、Next Innovationを起こしたからこそ、他社が追随し真似されることになったわけです。
私がシャープに感じるDNAは、早くユーザーの価値に気が付き、それを技術で解決するという意欲を持った社員で構成されている点だと思っています。これを、今回の展示の中で感じ取ってもらいですね。
全ての展示の中に、当社のDNAが埋め込まれています。それを見たパートナー企業が、当社と一緒にやってみたいと思っていただき、学生にはシャープで働いてみたいと感じてもらいたいですね。
SHARP Tech-Dayは技術展示イベントとは位置付けていますが、技術イノベーションの展示会ではなく、ユースケースイノベーションの展示会であり、そこからNext Innovationが生まれると思っています。
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