HARMANの「Sound United」統合がオーディオ業界にもたらす影響 業界再編の呼び水になる可能性も:本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/4 ページ)
サムスン電子傘下のHARMAN Internationalが、Masimoのコンシューマーオーディオ部門「Sound United」を買収する――このニュースにオーディオ業界に激震が走った。このことは、どのようなオーディオ業界にどのような影響を与えるのだろうか。
「Sound United」が保有するブランドは
ではHARMANが買収する「Sound United」は、どのようなブランドを保有しているのだろうか。
Sound Unitedは元々独立した企業で、2022年に医療機器を取り扱うMasimoによって買収された。
日本のオーディオファンからすると、Sound Unitedは「ディーアンドエムホールディングス」を買収した会社と言えば通りがいいかもしれない。ディーアンドエム(D&M)は、「デノン」と「Marantz」の頭文字で、その名の通りデノンと日本マランツの経営統合によって2002年に生まれた会社だ。
デノンは1910年創業で、ミドル/ミドルハイクラスのプリメインアンプなど、コンポーネント形式の伝統的なオーディオ製品が広く知られている一方で、さまざまなジャンルの製品を手掛けてきた。世界的に市場は縮んでいるものの、特にAVレシーバー市場ではヤマハと共に大きな世界シェアを持つ。
Marantzは1950年代に米国で生まれた高級オーディオブランドだ。しかし1970年代半ばから、機器設計を始めとする事業の軸足が日本(日本マランツ)に移り、世界に普及した。
先述の経営統合により、デノンとMarantzは長らく同じ企業(資本)のもと展開しているが、音作りや製品作りの独立性は高く、両ブランドは共通する市場で異なるユーザー層を抱えている。
Marantz/デノンブランドのオーディオ機器は、デノンと日本マランツの経営統合によって誕生したディーアンドエムホールディングスが手掛けている。現在、ディーアンドエムホールディングスはSound Untitedを通してMasimoの子会社となっている
Sound Unitedが保有するブランド(メーカー)の中で、最も特別なものが高級スピーカーメーカー「Bowers & Wilkins(B&W)」だ。1966年の創業以来、ハイエンドオーディオ市場の頂点に君臨してきた。
さらに、Sound Unitedは北米市場に強い「Polk Audio」、高品質なホームシアタースピーカーで知られる「Definitive Technology」、超高級アンプブランド「Classe」なども傘下に収めている。
そして、今回HARMANがSound Unitedを買収する上で大きな意味を持ちそうなのが、マルチルーム音楽ストリーミングのプラットフォーム「HEOS」だ。HEOSはSound United傘下の製品で共通して採用されており、宅内全体、あるいは店舗全体をカバーするオーディオシステムを簡単に構築できることが特徴だ。ある意味で、Sonosの強力なライバルである。
つまり、HARMANにとってSound Unitedの買収は「老舗・名門ブランド」を手に入れると共に、各ブランドが持つ独自の「音作り」や「音響技術」、音作りを出発点とした「顧客基盤」、それに「オーディオ機器のネットワーク化技術」の基盤と、幅広いものを手に入れられる。
得られる有形/無形の資産価値を考えると、3億5000万ドル(約510億6000万円)という買収額は決して高くはない。
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