「人間型ロボット」「アバター」がAIと出会うと何が起こるのか? 大阪・関西万博「いのちの未来」プロデューサーが語る“アバターと未来社会”:「NEW EDUCATION EXPO 2025」特別講演(1/3 ページ)
6月5日から7日かけて行われた「NEW EDUCATION EXPO 2025」において、大阪大学大学院の石黒浩教授(基礎工学研究科)による特別講演「アバターと未来社会」が開催された。事前申し込みの段階で満員だった本講演の内容を、2回に分けて紹介する。今回は、人間型ロボットやアバターを研究/開発する目的、LLM(大規模言語モデル)が登場したことによるロボット/アバターへの影響と、これからのインターネットについて語った部分を紹介する。
TFTビル(東京都江東区)で6月5日〜7日に開催された教育関連の見本市「NEW EDUCATION EXPO 2025」では、さまざまな講演やセミナーが行われた。
その中でも注目を集めたのが、6月6日に行われた大阪大学大学院の石黒浩教授(基礎工学研究科)による特別講演「アバターと未来社会」だ。石黒教授といえば、自分そっくりのアンドロイド「ジェミノイド」の開発で知られる日本を代表するロボット工学者で、教育や演劇などとの関わりも深い。また、大阪・関西万博のテーマ事業プロデューサーの1人でもあり、シグネチャーパビリオン「いのちの未来」をプロデュースしている。
今回、この特別講演の内容を2回に分けて紹介することにした。この記事では、石黒教授が人間型ロボットやアバターを研究/開発する目的、LLM(大規模言語モデル)が登場したことによるロボット/アバターへの影響と、これからのインターネットについて語った前半部分を紹介する。
本講演は期日前に“満員”となったため、当日聴講できなかった人もいるかと思う。参考になれば幸いだ。
「人間とは何か」を知るために人間型ロボットの開発をしている
石黒教授は冒頭、「自分とロボットの関わり」について次のように語った。
私は1990年代から(自動車の)自動運転の研究に携わり、大学の研究が実用化されるまで20〜30年を要することを実感した。2000年頃からは「人と関わるロボット」の研究を開始し、遠隔操作型や自律型のロボットを開発してきた。2006年には自身の姿を模したアンドロイドを製作した。近年では、こうしたロボットやCGキャラクター、自律型AIを総称して「アバター」と呼ぶようになり、私はそれらを融合した実用的な技術として発展させている。遠隔操作アバターは、物理的な移動を伴わずに世界中での活動を可能にし、自律型は抽象的な指示に従って行動できるなど、両者の境界は曖昧になってきている。
今後アバター技術の実用化は、人口減少による労働力不足を補う鍵となる。日本は島国であり、移民受け入れが難しいため、AIやロボットによる対応が不可欠だ。私はこのような未来を「人間アバター共生社会」と呼び、技術の進展が人間の在り方そのものを見つめ直す機会になると考えている。
人間の進化は単に遺伝子によるものだけでなく、テクノロジーによって急速に能力を拡張することでもある。AIやロボットは人間性を映す“鏡”として、人とは何かを問い直す存在になる。人間型ロボットとの関わりを通じて、人間の高度な認知機能の理解も進む可能性がある。
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