「Apple Watch」最新モデル完全レビュー! 「SE 3」の躍進と「Ultra 3」の進化、安定の「Series 11」(2/4 ページ)
Appleから、スマートウォッチ「Apple Watch」シリーズの新モデルが出そろった。エントリー向けの「SE 3」、標準モデル「Series 11」、最上位の「Ultra 3」を林信行さんが試してみた。
Apple Watch SE 3:ベーシックモデルの概念を覆す劇的進化
まずはSE 3から見てみよう。スペックの劇的向上の核にあるのは、Series 11やUltra 3と同じ最新チップ「S10」の搭載だ(前モデルはS8だった)。これによりSeriesと比べて見劣りしていた以下の特徴を一気に手に入れた。
今回、製品としての価値が一気に飛躍したのがApple Watch SE 3だ。プロセッサが前モデルのSE 2が搭載していたS8から2世代ジャンプしてS10になったことで、常時点灯ディスプレイから声の分離まで、これまで上位モデルでしか利用できなかった多くの機能が使えるようになった。表示されている文字盤は新たに追加された「Flow」で、watchOS 26のLiquid Glassの世界観を意識してデザインされている
- 常時点灯ディスプレイ:これまでのSE 2は操作を終えてしばらくすると画面が消え、再び使うには腕を上げるか画面をタップする必要があった。SE 3では画面が消えないので、操作をしていない時でも時刻など画面上の情報が確認できるようになった(ただし、上位モデルと違って秒単位の更新はないので秒針は表示できない)
- オン・デバイスでのSiri:通信をせず単体でSiri機能を使った音声操作が可能になり、Siriの反応が早くなった
- ワン・ハンドジェスチャー対応:操作をする手が荷物を持ったり、何かをつかんでいたりして使えない時に、Apple Watchを装着した側の手の人差し指と親指をタップする動作で電話に出たり、音楽の再生/一時停止を行ったり、腕をクルッと回転させるジェスチャーでかかってきた電話を留守電に回したりできる
- 音声分離:周囲の音がうるさい場所での通話時、話者の声だけをAI処理で分離してクリアな音声で相手に届ける
- 内蔵スピーカーでのコンテンツ再生:ヘッドフォンがなくても本体のスピーカーで音楽やPodcastを聞くことが可能に
- 体温センサー:睡眠時に装着しておくと朝にその日の体温を記録し、排卵期などを含む生理周期を管理できるようになった(体温計として使えるわけではない)
こういったS10搭載による恩恵に加え、今回、新たに5Gの通信に対応し、ディスプレイをカバーするIon-Xガラスも、従来のものより4倍ヒビ割れに対する耐性が高まったり、急速充電性能が倍になって15分の充電で約8時間利用できるようになったりするといったハードそのものの進化も加わっている(バッテリー動作時間は標準で約18時間/低消費電力モードで約32時間)。
さらに最新のwatchOS 26の採用による恩恵もあって、Apple Watchの新たな標準機能となった睡眠スコアの記録や、優美なLiquid Glassの操作画面などが利用できるようになったのも大きな特徴だ。
後述するSeries 11と比べると、例えばECG(心電図を測る機能)や血中酸素濃度を測る機能など、いくつかの一歩踏み込んだ健康ケアの機能が省略されてはいる。
しかし、それでも転倒や交通事故を検出して、ユーザーの意識がない場合には今いる国の救急救命機関や近親者に自動で現在の位置情報などの情報を送信する機能、緊急時にサイドボタンの長押しで緊急連絡をしたり、意識がない状態で救急車に運び込まれた時に血液型やアレルギー反応などの貴重な情報を救命士に教えたりするMedical ID機能を備えている。
さらに、Wi-Fiの電波がない場所に迷い込んだ場合でもGPSを使って出発地点に戻れるように案内してくれる機能を備えるなど、驚くほど多くのあなたを救ってくれる機能を搭載している。
無事に目的地に到着したり、帰宅したりしたことをGPSを使って自動的に保護者に伝えるチェックイン機能も備えており、子供に持たせる時計としてもかなりお勧めだ。
その上で、Apple Watchの元々の魅力であるワークアウト(エクササイズ)などの記録を行ったり、交通案内系などの豊富なアプリを使ったりすることもできる。
テクノロジー好きな人は他製品と比べてどの機能が多い、少ないと比較級で価値を判断しがちだが、正直、業界トップクラスといえる品質の機能がこれだけ凝縮された製品が4万円を切る価格で提供できているのは、すごいといわざるを得ない。
これまでのSEシリーズもそうだが、この価格を実現するためにAppleのブランド企業としての看板に傷をつけないギリギリのところで、製品パッケージの作りなどあらゆるところでコストダウンの努力をしているのが伺える。
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