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M5チップ搭載の「14インチMacBook Pro」を試して分かった万能性とAIの実力本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/3 ページ)

M5チップ搭載の「14インチMacBook Pro」が発売された。発売の少し前から試用していた筆者が、その魅力を伝える。

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バッテリー駆動時間の延長が実現する、真の「モバイルワークステーション」

 M5チップ搭載の14インチMacBook Proのバッテリー駆動時間は、メーカー公称値で最大24時間だ(動画再生時)。これはM4チップモデルよりも3時間長い。

 もちろん、実際のバッテリー駆動時間は使用環境によって大きく変動する。実際のところ、M4モデルであっても実利用環境で50%程度のバッテリー残量まで減らすのに苦労した(つまり、なかなか減らない)。M5チップモデルも、ACアダプターを持ち歩くことなく1日使用できることは間違いない。

 バッテリー駆動時間が延びた背景には、M5チップが3mnプロセスを採用したことによる省電力化に加え、バッテリー容量のわずかな増加(70Wh→72.4Wh)もある。性能が向上したのに消費電力が削減されたということは、いわゆる「ワットパフォーマンス(ワッパ)」が良くなったということでもある。

 「そんなにパフォーマンスは必要はない」という人もいるだろうが、GPUを多用する動画編集のフィルター、AIを活用した音声トラック処理や、GPUを使った画像生成などを頻用する際にバッテリーことをあまり気にしなくてもいいのは、実感としてありがたい。

 ビジネスユースはもちろんだが、モバイルでのクリエイティブ作業においても、バッテリー残量を気にする必要はない。

動画再生時間
動画再生時のバッテリー駆動時間は、性能が上がっているのにむしろ延びている(公称値から作成)

侮れないAIワークロードの改善は“将来性”を示す数字

 M5チップのAI性能は向上した――もう聞き飽きたかもしれないが、このことで筆者が感じたのは、単一の機能改善にとどまらない将来性や応用の広がりだ。

 動画編集の分野では「Adobe Premiere Pro」での作業が大幅に高速化されている。特にAIを活用した音声クリーンアップ機能「Enhanced Speech」の処理速度が、M4チップモデルと比べて最大で4倍高速化される。この機能はざわついた中での音声をクリアにしてくれるため、筆者も気に入っているものの1つだが、処理が速いためプレビューを先頭から始めている間に処理が終わってしまう。

 高解像度化処理で定番のTopazを動画に適用した「Topaz Video AI」でSD映像を4Kにアップコンバートする際は、M1チップモデルと比較して最大7倍の高速化が図れるという。他にも「Logic Pro」に見られるように、オンバイスでのAI活用は今後も広がっていくだろう。

 Premiere ProとTopaz Video AIのテスト結果は、AppleがWebサイトで掲載しているものではあるが、アプリでも数倍の単位でパフォーマンスが上がるとなれば、単に速いだけでなく将来の新機能の登場を促しうる。そしてその新しい機能が登場した時、古いアーキテクチャのSoCでは、遅さや処理品質の低さを感じるだろう。

 守秘義務もあるため公開できないアプリも多いが、今後、CoreMLなどを通じてAIを使った機能を実装するアプリは次々に生まれていく見込みだ。

 なお、AIワークロードを使うメディア処理において、この評価機が”発熱”をしたことは一度もなかった。

公称値
Premiere ProとTopaz Video AIのテスト結果はAppleの公称値だが、それを実感できる性能向上は確認できている

パフォーマンスは「Pro級」 でも価格は手頃

 M5チップ搭載の14インチMacBook Proの価格は、最小構成で24万8800円からとなる。M4チップモデルから価格は据え置きだ。

 Intel MacやM1/M2チップ世代からの移行組には、M5チップ搭載モデルは非常に魅力的に映るだろう。何しろ、CPUのシングルコア性能はM1チップの1.84倍、M2チップの1.64倍と大幅に進歩しており、マルチコア性能もM1チップ比で119%増、M2チップ比で85%増を達成している。初期のApple Siliconから数年で倍近い性能になった計算だ。

 今後、より高性能な「M5 Proチップ」や「M5 Maxチップ」(いずれも仮称)を搭載したMacBook Proが登場することは間違いない。しかし、現時点でもM5チップの14インチMacBook Proは、プロ/ハイエンド以外のあらゆるクリエイティブな作業をこなす人々にとって最良の選択といえる。

 これまで、動画編集や3Dレンダリングといった重い作業のためにPro/Maxチップを備えるモデルを選んでいた人も、SoC自体の性能底上げによって無印チップの基本モデルで大半の作業が可能となった。特にAI処理速度の向上は顕著で、動画編集、写真処理、音声加工といった用途において、待ち時間の大幅な短縮を体感できる。

 約1.6kgの重さや約15.5mmの厚みは「MacBook Air」と比べればボリュームがある。しかし、それは冷却機構や追加のインタフェースポートとのトレードオフと考えればいい。性能的に競合するWindows機となってくると、主にポータブルゲーミングPCとなり、フォームファクターとしては比較にならない。

 場所を選ばずクリエイティブな作業をしたいユーザーにとって、M5搭載MacBook Proは現在もっとも優れた選択肢だ。使っているアプリが、どんなにオンデバイスでの魅力的なAI機能を搭載してきても、当面は快適に処理をこなしてくれるに違いない。

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