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Core Ultraプロセッサ(シリーズ3)の「Xe3 GPU」の改良点をさらに深掘り 今後の取り組みもチェック!(5/5 ページ)

Intelが2025年末に一部を出荷する予定の「Core Ultraプロセッサ(シリーズ3)」(開発コード名:Panther Lake)は、「Xe3 GPU」なる新しいGPUコアを搭載する。この記事では演算エンジン回りを中心に、Xe3 GPUをもう少し深掘りしていく。

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Intel GPUの“将来の話”

 今回のイベントでは次世代GPU「Celestial」(開発コード名)の話は一切なかったが、それでも将来提供予定の機能やサービスについての言及はあった。最後に、このあたりの話題について触れておきたい。

ディスプレイエンジン
Core Ultraプロセッサ(シリーズ3)ではディスプレイ出力エンジンに変化はない。一方、ビデオプロセッサ(Xe Media Engine)回りでは、この図にある通りAVC/AV1コーデックにおける10bit映像のサポートの他、ソニー系のコーデックへの対応が追加されている

ニューラルレンダリングのサポート

 1つ目の話は、「ニューラルレンダリング(Neural Rendering)」への対応を表明したことだ。

 ニューラルレンダリングとは、グラフィックスレンダリングにおいて、高負荷なライティングやシェーディングの演算をまじめにせずに、AIの推論パワーに助けてもらって実践する新しい概念だ。

 この概念を真っ先に打ち出したのはNVIDIAで、1月に登場した「GeForce RTX 50」シリーズ(Blackwellアーキテクチャ)は「ニューラルレンダリングへの最適化」をうたっている。

 これを受けてAMDも6月、ニューラルレンダリングへの対応を進める旨を表明し、その一環として超解像技術「AMD FSR(FidelityFX Super Resolution)」においてテクノロジースイート「Redstone」(開発コード名)プロジェクトを公表した。さらにAMDは10月、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)と次世代PlayStation向けにニューラルレンダリングに特化したプロセッサの開発を進めていることを明らかにした。

 この点、今回のIntelによる表明は「うちもニューラルレンダリングをやります」程度のものだった。ただし、複数の静止画からAI推論を使って3Dモデル構築する「Neural Radiance Field(NeRF)」のデモをCore Ultraプロセッサ(シリーズ3)を搭載する実機で披露していた。

FSR Redstone
AMDはFSRに「Redstone」という機械学習ベースの技術スイートを取り入れることを表明している。これはニューラルレンダリング対応に向けた取り組みでもある
AMDのジャック・ヒュイン氏とSIEのマーク・サーニー氏の対談動画。ここで、次世代PlayStation向けにニューラルレンダリングに特化したプロセッサの開発が進められていることが明らかとなった

 ちなみに、ニューラルレンダリングの業界標準化については、Microsoftが強いリーダーシップを取って急ピッチで進めている。具体的には、DirectX 12に「シェーダーモデル6.9」を規定して、その中に「Cooperative Vectors(協調ベクトル)」というシェーダー言語の命令セットを追加する方針だ。

 協調ベクトルという名前だが、ニューラルレンダリングでは「行列×ベクトル」の演算が頻発するので、これをシェーダープログラムの各スレッドで“協調”して大きな演算に束ねて実行する――という所から来ているとされる。

協調ベクトル
協調ベクトルは「長いベクトル同士の計算」「行列とベクトルの計算」「行列と行列の計算」をシェーダープログラムとして“直接”書けて実行出来る仕組みとも言い換えられる

あらかじめコンパイルされたシェーダーの配信

 もう1つの話は「Precompiled Shader Distribution」、日本語に直訳すると「コンパイル済みのシェーダーの配信」だ。

 最近のゲームは、初回起動時にシェーダープログラムのコンパイル作業を行うものが多い。ゲームパッケージに含まれているシェーダープログラム群は中間言語で書かれており、ゲームの実行時に一度、搭載しているGPUのネイティブコードにコンパイル(変換)する必要があるのだ。

 この点でいうと、最近なら「モンスターハンターワイルズ」や「モンスターハンターワイルズ ベンチマーク」の初回起動した際に、コンパイル時間がとても長いことが話題となった。

モンスターハンターワイルズ
モンスターハンターワイルズ/モンスターハンターワイルズ ベンチマークの初回起動にものすごく時間が掛かるのは、シェーダープログラムをGPUに合わせてコンパイルしているからである

 「Steam」など、一部のゲームストアではGPUごとにコンパイル済みのシェーダーコードを自動配布する仕組みが整っているが、他はまだまだという状況だ。Microsoftについては、同趣旨の「Advanced Shader Delivery」というサービスをASUSのポータブルゲーミングPC「ROG Xbox Ally」シリーズ限定で始めたばかりだ。

 「この手のことはGPUメーカーがやるべきでは?」という声を受けて、Intelは他社に先駆けて、Intel Arc Softwareをインストールしたデバイス限定で、インストール済みのゲームを自動認識した上で、コンパイル済みのシェーダーコードを自動ダウンロードしてインストールしてくれるサービスとしてPrecompiled Shader Distributionを開始することを決めた。11月中の開始を予定しているという。

 ゲームの初回起動でのイライラを大幅に緩和する観点で、これはいいサービスだ。

PSD
Intel製GPUユーザーに向けて、事前にコンパイルしたネイティブシェーダーコードを配布/インストールする仕組みが「Precompiled Shader Distribution」だ。早ければ11月内にサービスを開始するという

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