「X」や「ChatGPT」などが止まった――サービス停止の背後にある「CDN」の障害 ローカルアプリでも用心が必要(1/3 ページ)
11月18日、「X(旧Twitter)」や「ChatGPT」など複数のインターネットサービスにおいて、世界規模の障害が発生した。その背景には何があるのだろうか。
11月18日、「X(旧Twitter)」や「ChatGPT」など複数のインターネットサービスにおいて、世界規模の障害が発生した。この障害は、早々に「Cloudflare(クラウドフレア)」のCDN(Contents Delivery Network)サービスが原因であることが判明した。CloudflareはCDNサービスの最大手事業者だけに、その影響は非常に大きくなった。
Cloudflareのマシュー・プリンスCEOは同日、この障害が「ソフトウェアの問題(バグ)が引き起こした想定外の動作により、ソフトウェアが停止したこと」が原因である旨をブログで明らかにした。
インターネット経由でサービスを提供する企業の多くは、クラウドベースの「SaaS(Software as a Service)」「IaaS(Infrastructure as a Service)」など、クラウドサービス事業者(CSP)のサービスに依存している。そのため、CSPのサービスが停止すると自社のサービスも停止するという依存関係にある。
「ネットにつないでなければ大丈夫でしょ?」と思うかもしれない。しかし、WindowsやmacOSで稼働するローカルアプリでも、最近はライセンス(利用許諾)の確認でインターネット接続が必要なものがある。そのため、ローカルアプリでもCSPのサービスに障害があると動作に影響が生じるケースがある。
詳細な原因は調査中だが、11月18日に発生したmacOS版の「Adobe Creative Cloud」関連アプリのトラブルも、状況的にCSPサービスの障害が原因の可能性もある。
この記事では、これらの事象について解説をする。
「CDN」ってそもそも何?
CloudflareのようなCDNサービスは、ざっくりいうと同じデータを持つサーバを“物理的”に分散配置することで、1つのサーバにアクセスが集中することを防ぐサービスだ。
もう少し具体的にいうと、CDNは大本となるサーバと常時同期するキャッシュサーバが複数用意される。キャッシュサーバは国/地域単位で分散配置され、データのやり取りをリクエストした端末が大本のサーバにアクセスしようとすると、CDNサービスはキャッシュサーバにアクセスを“誘導”する。
サービスの提供者側には1つのサーバにアクセスが集中すること負荷を軽減できるというメリットがあり、利用者側も近くのキャッシュサーバにアクセスすることで応答速度(レスポンス)が向上するというメリットを享受できる。
例えば「誰もが行きたいと思うようなコンサートのチケット」「割引率が高いセール商品」などが販売されるとき、多くの人が買いたいと思い、販売サイトにアクセスが殺到する。そうすると、Webサーバがリクエストをさばききれなくなって、極端にレスポンスが悪くなったり、最悪の場合は落ちてしまったりする――インターネットで良く聞くインシデントの1つだ。
「Webサーバにアクセスが集中して落ちる」という現象は、別にユーザーのアクセス集中だけが原因とは限らない。Webサーバを攻撃する古典的な手法として知られている「DDoS(Distributed Denial of Service:分散型サービス妨害)」は、攻撃者のクライアントから多数のアクセスが発生するため、アクセス集中と同じような結果(=Webサーバのダウン)をもたらす。
こうしたDDoSを防ぐのにも、CDNは役立つ。アクセスが集中する可能性があるインターネットサービスでは、CDNサービスを利用するのが一般的だ。
CDNはどうやってキャッシュサーバにアクセスを誘導する?
通常、ユーザーがWebサーバにアクセスする場合、WebブラウザのURL欄に「https://www.itmedia.co.jp/」といったアドレスを文字列として入力する。すると、Webブラウザはその裏側で、インターネットの基本的な仕組みである「DNS(Domain Name System)」という機能を利用して、アクセス先のWebサーバの「IPアドレス」をDNSを保管している「DNSサーバ」から引っ張ってきて、そのIPアドレスに向かってアクセスを要求する。
CloudflareなどのCDNサービスは、クライアントからこうしたアクセス要求を受けると、必要に応じてデータをキャッシュしたCDNサーバのIPアドレスを返すことでアクセスを振り分ける。これにより、1つのサーバに集中してしまうことを防いでいる。
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