NTT系初の耳をふさがない集音器「cocoe Ear」発表 補聴器でない理由、AirPods Proとの違いは?(2/2 ページ)
NTTソノリティが新ブランド「cocoe」を発表、聞こえづらさを抱える人に自然な音体験を届けることを目的に始動した。第1弾の耳をふさがない集音器「cocoe Ear」は12月23日発売、GREEN FUNDINGにて3万9600円となる。NTTの音響技術を武器に、これまで補聴器やイヤフォンに馴染めなかった層へ向け、新しい音のライフスタイルを提案する。
広告やWebサイトでの表現は慎重に 「AirPods Pro」との違いは?
ただ、Webサイトや広告での表現については、慎重にならざるを得ない。厚生労働省によると、集音器などに関する製品広告などの表現により、「難聴の聞こえを改善できると誤認して購入している例」があり、専門家としても厳しく見られる傾向にある。この点について聞いたところ、中野氏は「そこは熟知している」と回答した。
Webや広告での表現には慎重さが求められる。集音器などで難聴が改善すると誤認させる例があり、専門家の目も厳しいためだ。この点についてNTTソノリティ 新規事業開発室 プロダクトマネージャー 中野達也氏は「熟知している」と回答し、リスクへの十分な認識を示した(出典:厚生労働省)
中野氏によると、集音器は難聴者の聞き取り改善を目的にしてはならず、「聞こえが良くなる」「聞き取りを改善する」といった表現は広告上禁止されている。中野氏は「たとえ(集音器で)技術的に(補聴器に近いことが)できたとしても、うたってはいけない」とし、補聴器と集音器の線引きを厳密に守る考えを強調した。
さらに、中野氏は「『AirPods Pro(2/3)』はイヤフォンではなくiOS側のソフトウェアで医療機器認証を取っている特殊例」を挙げ、「原理は同じだが、NTTソノリティは医療機器としての認証までは取らない立場であり、あくまで集音器として展開していく」姿勢を示した。
「AirPods Pro 2」で導入されたヒアリング補助機能は、「AirPods Pro 3」でも引き続き利用できる。同機を簡易的な補聴器として活用することで、日常の会話や環境音など聞き取りづらい音声を明瞭にし、より快適な聴こえをサポートする機能だ。画像はAirPods Pro 3
消費者への説明について、見た目をイヤフォンのままにしたのは「狙い通り」と話しつつ、聞こえる音量が大きくなることは予告ページや広告で明確に伝える方針を示した。ただし、どの程度の聞こえづらさに対応するかといった表現には法的制約があるため、「はっきり聞こえます」といった一般的な表現にとどめめ、誤解を招かないよう慎重に進める考えを説明した。
また、中野氏は周囲が非常に騒がしい場所で使う場合の安全性についてもアピール。cocoe Earには最大音圧を制限するリミッターを設けていることを明らかにし、耳へ過度な負荷がかからないようになっていると説明した。補聴器は長時間装着を前提とする一方、集音器は「うるさかったらオフにしてください」「聴きたいときだけオンに」とカジュアルな使い方を前提にしているため、取扱説明書でもその点を重視して記述しているという。
これらの説明からは、NTTソノリティの戦略が従来の補聴器やイヤフォンとは異なる“第三の選択肢”の創出にあることが分かる。つまり、AirPods Proはイヤフォンとしての機能が主体であるのに対し、cocoe Earはイヤフォンと集音器を組み合わせた製品といえる。
今回の発表は、聞こえの課題に新しい選択肢を提示するだけでなく、急速な高齢化が進む日本社会における新たな価値づくりとしても意味を持つ。cocoeブランドは、補聴器とイヤフォンの間に存在する“気軽に使える聞こえ支援”の領域を広げることで、音に関する体験をより豊かにすることを目指す。
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