Wi-Fiルーター「Aterm」のふるさとは先端技術の“試験場” NECプラットフォームズ掛川事業所の中核工場を見てきた【後編】(4/4 ページ)
NECプラットフォームズの掛川事業所の主力工場である「新A棟」は、同社が推進する各種取り組みのテストに使われることが多い。その様子をのぞいてみよう。
生産プロセスのセキュリティを重視する「セキュア生産」も
生産面における2つ目の特徴はセキュリティだ。
掛川事業所では「顔認証システム」「カメラによるフロア全域の監視」など、高いフィジカルセキュリティを導入している。新A棟に入るには、セキュリティゲートを通過する必要があり、顔認証かICカードをかざすことで初めて入場可能だ。同様に、同棟の各フロアの生産ラインに入る場合も、同様の認証が求められる。
NECプラットフォームズの全従業員の入退室管理は、基本的に顔認証によって行われる。業務に応じて、入退出可能な区画も個別設定されている。
また、前編でも触れた通り、NECプラットフォームズではサイバーセキュリティとBCP(有事の事業継続計画)の考え方を取り入れた「セキュア生産」を取り入れている。「不正な侵入を許さない」「被害を拡大させない」「異常の検知を逃さない」の3つの視点で、ネットワークとセキュリティの強化を進めているという。
不正な侵入を許さない観点では、「UTM(総合脅威管理)」を活用した境界防御をすることで、サイバー攻撃の脅威を低減している。管理外端末などの接続を排除することにより、情報漏えいやウイルス感染を防止する取り組みも行っているという。
被害を拡大させないという観点では、ネットワークを「インテリジェンススイッチ」を活用したマイクロセグメンテーションによって分離することで、万が一マルウェア類に感染した端末があったとしても、同一ネットワーク上にある端末への“横移動”を防ぐことで二次災害を防止している。
異常の検知を逃さないという観点では、「SOCサービス」を活用した24時間365日の運用管理を行うことで、異常発生時には外部機関による専門的な対処を実施し、異常を検知した場所を迅速に特定できるという。
クリーンな環境で生産
そして、3つ目の特徴はクリーンだ。
作業者が生産エリアに入る際には、必ず「エアシャワーブース」を通過する必要がある。エアシャワーブースは各フロアに設置されており、約20秒間に渡って作業者に風を当てることで、空気中のホコリや異物が入り込むのを防ぐという。
エアシャワー自体は半導体工場ではよく見られるものだが、機器の組み立てラインでもクリーン度にこだわっているのは珍しい。クリーンルームの空気清浄度は「ISO 14644-1」で規格化されているが、新A棟では同規格における「Class 7」相当の清浄度を目指しているという。高い清浄レベルで管理した工場であることが分かる。
物流棟からAGVで搬送される部品についても、エアシャワー付きパスボックスを通過してホコリや異物などを除去してから、実装ラインに供給される。
生産効率は「2022年度比で30〜40%改善」
掛川事業所の新A棟が2023年8月に本格稼働した際に、NECプラットフォームズは掛川事業所全体の生産効率を「2022年度比で30%向上させる」という目標を掲げていた。
同社の大橋氏によると「2025年度には2022年度比で30〜40%の生産効率の向上を実現できている」とのことで、既に目標を達成したようだ。
AMRへの投資は5〜10年での回収を想定しているそうだが、大橋氏は現場での生産量や作業量の変化に柔軟に対応できる体制作りにおけるプラス効果は大きいとも語る。例えばAMRを活用することで「新製品の生産ラインの立ち上げ時」や製品の増産/減産など「変動しやすい需給状況」、そして「顧客ニーズの変化」にも柔軟に対応できるという。
その上で、大橋氏はこうも語った。
国内生産では『少量多品種化』の動きが進展すると見込まれている。NECグループ全体のもの作りも、新たなステップに入ることになる。“超効率化生産”を推進し、物量に頼らないもの作り体制の構築が必要だろう。そのためにも、AIの活用やデジタル化、自働化を(より)推進していく。
ライフサイクルが長期的な製品や、(部材や製造プロセスの)共通化が進んでいる部分についてはロボット化を進めるだけでなく、人の作業を標準化することで、そこにロボットを活用するといったことにも取り組む。
今後、ネットワーク機器の生産ラインでは自動化率50%以上を目標にしていくという。
NECプラットフォームズ掛川事業所は、新たな技術を活用しながら、もの作りを革新し、同時に高い目標を掲げ、それを達成する役割を担っている。挑戦する生産拠点として進化を遂げていく姿勢は、これからも変わらない。
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