Wi-Fiルーター「Aterm」のふるさとは先端技術の“試験場” NECプラットフォームズ掛川事業所の中核工場を見てきた【後編】(3/4 ページ)
NECプラットフォームズの掛川事業所の主力工場である「新A棟」は、同社が推進する各種取り組みのテストに使われることが多い。その様子をのぞいてみよう。
人による作業の効率化
人による作業の効率化においても、最新技術を活用している。
作業分配最適化システムを独自開発し、「生産計画」「作業の制約条件」「作業者配置」「作業順序」について自動スケジューリングを実施し、特に倉庫作業では30%の省人化を図れたという。
また、NECのAI画像分析システムを使って作業員の動作を分析することで、人の作業量や作業内容、動線を可視化することで「暗黙知」をモデル化する実証実験も開始している。
例えば物流棟では、AIを活用した現場作業改善の実証実験を進めている。天井に設置した「動画AIカメラ」で撮影した映像を元に、「どの作業者が」「どの作業を」「どこで」「どのぐらいの時間をかけているか」をデータとして収集し、分析を行っている。分析は「人の移動」も対象で、従業員が快適に作業ができるレイアウトへの変更や、作業効率の改善へとつなげることができるという。
今後は、作業の間違いもリアルタイムに検知できるようにすることで、作業品質の向上につなげていく予定だ。
早川氏は「従来は、作業者がビーコンを装着して活動データを収集していたが、正確性や詳細なデータ収集においては課題があった。映像データをもとに、AIに学習させることで、こうした課題を解決することができる」とする。
基板の「表」と「裏」をあえて別々に生産
一方、SMTラインでは「デュアルライン」というユニークな生産方式を採用している。
その名の通り、デュアルラインとは並行して設置した2つの生産ラインを1つのラインのように構成したもので、基板の「表面」と「裏面」の生産を別々に行えるようにしている。2階フロアには、4本のデュアルラインが構築されている。
基板を投入すると、クリームハンダを印刷する「基板印刷工程」、小型部品や異形部品を搭載する「実装工程」、実装部品を接着する「リフロー工程」という順に進み、投入面の実装が完了する。
片面の実装が完成した基板は、「基板反転機」で回転させて、いったんマガジンラックに収納される。これを「水すまし」と呼ばれる部材補給担当者が人手で移送して、生産工程の最初に戻し、並行したもう1つのラインで、完了面への「基板印刷」「部品実装」「リフロー工程」を行うという仕組みだ。
「表面の部品と裏面の部品を実装するには、部品の段取り替えによるラインの停止が発生したり、中間仕掛りが大量に発生したりという課題がある。デュアルラインとすることで、表面と裏面の同時生産によって、これらの課題を解決できる」のだという。
両面への実装が完了した基板は、再びマガジンラックに入れられて、水すましが「AOI(自動光学検査)工程」まで運んで最終検査を行う。最終検査に合格した基板は、マガジンラックに収納され、AGVがオートレーターまで運ぶ。こうして、基板は3階にある後付け部品の実装工程に引き継がれる。
なお、SMTラインへの部品供給も水すましが行っている。
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