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Apple Intelligenceが変える「アクセシビリティ」の未来 視線で動く車椅子や進化したVoiceOverとは林信行の「テクノロジーが変える未来への歩み」(2/3 ページ)

5月の第3木曜日に制定されている「世界アクセシビリティ啓発デー(GAAD)」。15周年の節目となる2026年、Appleは「Apple Intelligence」を活用した新たなアクセシビリティ機能群を発表した。その最新動向を林信行氏が解説する。

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身体に障害のあるユーザーが「見たままを言えばいい」――音声コントロール

 iPhoneやiPadを声だけで操作する音声コントロール(Voice Control)機能も、Apple Intelligenceで進化する。これまでの同機能では、例えば特定のファイルを選ぶ際、「ラベル名」「番号」などで正確に指定する必要があったが、今回のアップデートで「紫色のフォルダーを開いて」「ガイドを開いて」といったより大雑把な指定でも操作ができるようになり、Appleマップやファイルのようなアプリも、より直感的な言葉で操作が可能になる。

 ただし、初期提供が英語のみ(米国/カナダ/英国/豪州)となっている。

Hikawa Grip APPLE GAAD アクセシビリティ 説明 音声コントロール Apple Intelligence
「tap the orange folder」(オレンジ色のフォルダー)を開いてなど、大雑把な指定で声による操作ができるようになった音声コントロール機能。これまでは、フォルダー名を正確に発音する必要があった

ディスレクシアや弱視のユーザーが、読みたいものを読める――アクセシビリティリーダー

 2025年に導入されたアクセシビリティリーダー(Accessibility Reader)は、ディスレクシア(全体的な発達には遅れはないのに文字の読み書きに限定した困難があること)や弱視のユーザーを対象に、本などの情報をそうした障害のある人たちでも読みやすいように自分好みのフォント/色/余白でレイアウトし直して表示する機能だ。

 今回はApple Intelligenceとの統合により、複数段組/図表/画像を含む科学論文やデータ豊富なPDFのような複雑な文書にも対応する。ヘッダーやページ番号といったテキストのノイズを取り除く「スマートクリーンアップ」、本文を読む前にオンデマンドで要約を生成する機能、そして他言語のテキストをユーザーの母語に翻訳しつつ自分好みのフォーマット/フォント/色のまま表示する機能が加わる。

 こちらも、日本語を含むApple Intelligence対応言語で利用可能になる。

Hikawa Grip APPLE GAAD アクセシビリティ 説明 音声コントロール Apple Intelligence
新しいAccessibility Readerでは、Apple Intelligenceを使って左のような複雑な段組レイアウトが施されたPDFでも、文章がどのように流れているかを理解して、うまく再レイアウトしてくれる(右)

聴覚に障害のあるユーザーが、家族や友人の動画も「字幕で」楽しめる――自動生成字幕

 これまでの字幕は、映画やTV番組などプロが制作したコンテンツに付いているのが当たり前だった一方で、家族や友人がシェアしてきた動画や、自分でiPhoneで撮ったクリップに字幕がないことの方が圧倒的に多かった。

 新しい「自動生成字幕」は、字幕の付いていないあらゆる動画について、端末上の音声認識モデルで字幕をプライベートにリアルタイム生成する。再生メニューや設定から外観をカスタマイズでき、iPhone/iPad/Mac/Apple TV/Apple Vision Proに展開される。生成された字幕がAppleに収集されることはない、と明確に説明されている。

 ただし、最初は英語のみ(米国とカナダ)での提供となっている。

Hikawa Grip APPLE GAAD アクセシビリティ 説明 音声コントロール Apple Intelligence
iPhoneのカメラで撮影した動画にも、自動で音声認識による字幕を付けてくれる機能も追加されるが、まずは英語圏のみでの提供となっている。早く日本語にも対応してもらいたいところだ

ジョイスティックを使えないユーザーが、視線で電動車椅子を操る――Apple Vision Pro

 今回最も「ハードウェアと新世代AIの融合」を象徴するのが、Apple Vision Proの精密な視線トラッキングを応用した電動車椅子操作機能だ。

 ALS(筋萎縮性側索硬化症)や脊髄損傷などで身体の自由が制限される一部のユーザーは、ジョイスティックでの車椅子操作が困難なため、息を使った操作や頭の動きによる操作、多種多様なスイッチを使った操作で代行してきた。

 こういったユーザーにとって、実は視線入力は最も有効な操作方法の1つだったが、これまではiPadのようなタブレットとセンサーを車椅子に取り付けて視線入力を行っていた。しかし、それだと移動中には操作対象が揺れてしまったり、直射日光下では性能が落ちたりするという課題があった。

 ここに対して、Appleが新たに提案するのがApple Vision Proの活用だ。

 Apple Vision Proは、視線認識の精度の高さで高い評価を得ているだけでなく、顔に装着するため位置がずれず、頻繁な再キャリブレーションを必要としない。さまざまな照明条件下で動作し、裏庭やパティオといったある程度コントロールされた屋外環境でも使えるという。

 米国でTolt(トルト)とLUCI(ルーシー)の代替操作システムから対応を開始し、Bluetoothと有線の両方をサポートする(有線の場合は、Apple Vision Pro Developer Strapが別途必要)。

 GeoALSの創業者で、Team Gleason患者諮問委員会のメンバーでもあり、自身も10年間ALSと共に生きてきたパット・ドラン(Pat Dolan)さんは、公式声明で「自分の意思で電動車椅子を動かせる――その選択肢を持てることは、私にとって何物にも代えがたい価値がある。Appleはこの新機能で、最も必要としている人々のために、人生を豊かにする技術を開発している」と語っている。

 Team GleasonのCEOブレア・ケイシー(Blair Casey)さんも「過去10年で視線駆動の車椅子システムは大きく進化してきた。Apple Vision Proの視線トラッキングをこの形で活用するのは、大きな前進だ」とコメントしている。

 なお、この機能は当面米国限定で、Apple Vision Proにおける同機能の国内提供と、対応する車椅子システムの日本展開を待つ必要がある。

Apple Vision Proの視線入力を使って、電動車椅子を操作する技術。正確な視線入力ができるだけでなく、車椅子にマウントした各種スクリーンやコントローラーなど視界を遮るものが少ないのも快適そうで、日本での提供に期待したい

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