キャンパスライフをあらゆる人に Appleが「国際障がい者デー」に合わせて公開したショートフィルムが示すこと(1/2 ページ)
Appleが12月3日の「国際障がい者デー」に合わせて、ショートフィルムを公開した。その内容と狙いを林信行さんがまとめた
12月3日は、国連が定めた「国際障がい者デー(IDPD:International Day of Persons with Disabilities)」だ。世界中の人々が、障がいがある人々の尊厳、権利、幸福に対する理解を深める重要な日となっている。
2025年の国際障がい者デー(IDPD)に合わせ、Appleは同社のアクセシビリティー技術を使って活躍する障がい者の人々を大々的にフィーチャーしたミュージカル仕立てのショートフィルムを公開することで、アクセシビリティー機能への理解を訴えかける
Appleが12月3日に合わせてショートフィルムを公開
1985年以来、40年にわたって障がいのある人々のための機能を開発する専属チームを設け、技術開発に取り組んできたAppleにとっても、この日は非常に重要だ。同社はアクセシビリティーを「コアバリュー(中核となる価値)であり、DNAそのもの」と語る。
筆者も、Appleが1990年に出版した書籍『Independence Day』を購入して以来、アクセシビリティー技術に関心を持ち、他社の動向も含めて取材を続けてきた。Independence Day(独立の日)といえば、一般的にはアメリカの「独立記念日」を指すことが多い。しかしこの書籍では、障がいを持つ人がテクノロジーの力で他者に依存することなく、自力で生活し仕事ができるようになる日を夢見て、そのタイトルが付けられていた。
2025年現在、Appleのアクセシビリティー技術は、Mac/iPhone/iPad/Apple Watchはもちろん、Apple Vision ProやAirPodsといった製品群にも広がりを見せている。
提供される補助機能も、視覚/聴覚/発声に関するものから、運動/学習機能に関するものまで非常に幅広い。視覚障がい者を対象としたデバイスの聞き取り調査では、圧倒的に多くの人がiPhoneユーザーだったというデータもあり、Appleがこの領域の技術リーダーであることは間違いないだろう。
そんなアクセシビリティー技術のリーダーであるAppleが、2025年のIDPDに合わせて発表したのは、多くの障がい者が既にテクノロジーの力で「独立」していることを祝福する、ミュージカル仕立ての楽しいショートフィルム “I’m Not Remarkable” by Kittyy & The Classだった。
監督は、2022年にエミー賞を受賞したAppleのアクセシビリティー作品「The Greatest」を手がけたキム・ゲーリッグ(Kim Gehrig)さんだ。音楽はトニー賞受賞作曲家のティム・ミンチン(Tim Minchin)さんが担当している。
出演者はAppleの技術で活躍するリアルな学生たち
このショートフィルムで特筆すべきは、メインボーカルとして歌っている視覚障がいを持つシンガー、Kittyyをはじめとした出演者が世界各地に実在する障がいのある学生たちという点だ。
彼女/彼らは実際に、日々Apple製品とアクセシビリティー機能を使いこなし、自らの力で未来を切り開いている「先行者」たちである。登場人物全員は紹介できないが、具体的に何をやっているのか確認ができた人物とアクセシビリティーの活用事例をいくつかまとめてみたい
キャシディ・ハフ(Cassidy Huff)さん
障がい者権利活動家でコンテンツクリエイターとしても活躍する彼女は、MacBookに固定したiPhoneのカメラを黒板に向けている。
これはiPhoneとMacを連携させる「連係カメラ」(Continuity Camera)機能だ。映し出された黒板の文字を「拡大鏡」機能で拡大して読んでいる。
サミー(Sammy)さん
識字障がい(ディスレクシア)があるサミーさんは、開かれた教科書の文字を読むことに困難がある。そこで彼は、スタンドに立てかけたiPhoneのカメラとMacを連係させ、手元のものを大きく映し出す「デスクビュー」機能を使ってテキストを撮影し、文字認識を行っている。
さらに「アクセシビリティリーダー」というソフトを使い、自分にとって読みやすいフォント(字体)で大写しにすることで読書を可能にしている。
バビア・シャー(Bhavya Shah)さん
スタンフォード大学で数学とコンピュータサイエンスの修士号取得を目指すバビアさんは、視覚障がいを持ちながらスタンドアップコメディアンとしても活躍するマルチタレントでもある。
彼はiPadにリフレッシュ可能な点字ディスプレイを接続し、読み書きを行っている。最新の点字アクセス機能が「ネメス記号」(Nemeth Code)に対応しているため、数学や科学用の点字コードを使って化学などの複雑な計算もこなす。
さらに、点字ディスプレイを接続していない移動中には、iPhone画面を複数の指でタップして文字を入力する「点字画面入力」で文章を書いているという。
ソフィア・モラレス(Sophia Morales)さん
手話パフォーマーとしても活躍する聴覚障がいの俳優であるソフィアさんは、iPhoneの「サウンド認識」機能を活用している。
自分の名前を登録しておくことで、誰かが彼女を呼ぶとiPhoneが認識し、通知と画面表示で知らせてくれるため、すぐに返事ができる。また、ダンスパフォーマンス中には「ライブキャプション」機能で周囲の会話や歌詞をリアルタイムで文字起こしを行い、仲間と一緒に歌ったり、FaceTimeや対面で会話を楽しんだりしている。
ジェイ(Jay)さん
運動障がいがあり、普段は音声で文字入力を行うジェイさんは、声だけでiPhoneを操作できる「音声コントロール」を使って友人と写真を撮る。「センターフレーム」対応のフロントカメラを使うことで、全員にピントが合った写真が撮影できるという。
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