M5チップ搭載の「14インチMacBook Pro」を試して分かった万能性とAIの実力:本田雅一のクロスオーバーデジタル(1/3 ページ)
M5チップ搭載の「14インチMacBook Pro」が発売された。発売の少し前から試用していた筆者が、その魅力を伝える。
M5チップを搭載する新型「14インチMacBook Pro」は、AIの処理能力という新しい価値軸においてデスクトップ級の演算能力を実現している。発売に先んじて評価してきたが、AIだけでなく全方位におけるパフォーマンス向上と、それがもたらす快適さに驚くばかりだ。
M5チップ搭載モデルが最新の「Thunderbolt 5(USB4 Version 2.0)に対応していないことは場合によってはマイナスかもしれないが、対応機器の価格や普及状況を考えると、現時点では大きな不利というわけでもない。
Thunderbolt 5ではないと転送が間に合わない大容量データを日常的に扱うのでなkれば、M5チップ搭載の14インチMacBook Proは幅広いビジネスパーソンや個人クリエイターにとってベストチョイスなMacに仕上がっている。
体感性能の改善につながるCPU性能の向上
動画視聴やオフィスアプリなど、PCを使った日常的な作業に限っていうと今日のPCは実用に十分な性能を備えている。そんな中でも、M5チップのCPUコアはシングルコアにおいてかなり高い性能を確保している。
「Geekbench 6」でシングルコアのベンチマークテストを行うと、M5チップのスコアは4263ポイントとなった。先代のM4チップモデル(3784ポイント)から約13%の性能向上で、PC向けCPUの中でもトップクラスだ。わずか1世代で大きな改善を見せている。
アプリの起動速度、Webページの読み込み、ファイルを開く際の反応速度、そして日常的な操作におけるキビキビ感は、概ねシングルコア性能に依存する。マルチコア性能がエンジンの総出力だとすれば、シングルコア性能は加速力だ。
日常使用において、M5チップ搭載の14インチMacBook Proは加速力の高まりを十分感じられる。
M5チップでは、CPUのマルチコア性能も大幅に強化されている。4基構成の高性能コア(Pコア)の改良の効果が大きいのだが、6基構成の高効率コア(Eコア)も侮れないパフォーマンスを備えている。
Geekbench 6のマルチコアテストでは、これら10コアの合計で1万7862ポイントを記録した。先代のM4チップモデル(1万4726ポイント)から約21%の高速化だ。これはAppleがうたう「マルチスレッド性能はM4比で最大20パーセント向上」と合致する。
そしてこのマルチコア性能は、過去の上位モデルに匹敵する水準に達している。M3 Proチップモデル(1万5257ポイント)は余裕で上回っており、かつてのハイエンドチップであるM1 Ultraチップモデル(1万8405ポイント)に迫る。CPUを使ったレンダリングをテストする「CINEBENCH 2024」では、10コアCPUのM5チップは、12コアCPUのM3 Proチップモデルのスコアを12%上回る。
個人的にはCPU性能をあまり追いかけなくなっていたが、ここまで性能が違うとなると、開発者やクリエイターだけでなく、データ分析を行うビジネスパーソンや、複雑なスプレッドシートを扱う経営企画担当者にとってもプラスとなるだろう。
「AI」ばかりに注目していては見誤るGPUコアの性能向上
M5チップのGPUコアの性能について、AppleはM4チップ比で「プロ向けアプリでグラフィックス性能最大1.6倍、ゲームにおけるフレームレートも最大1.6倍向上」とうたっている。
実際にGeekbenchでMetal APIのGPUベンチマークテスト(Compute)をやってみたところ、M5チップのスコアは7万6700ポイントで、M4チップ(5万6000ポイント)の1.36倍となった。「思ったほどではない」と思った人もいるかもしれないが、性能向上率は処理内容によって大きく違っており、中にはAppleの言う通り60%程度の性能向上が見られる要素もある。向上率が低い要素でも、スコアは少なくとも30%アップしている。平均すると3〜4割のパフォーマンスアップといったところだ。
M5チップのGPUコアには、新たに「ニューラルアクセラレーター」が内蔵された。Appleによると、ニューラルネットワークを用いた推論処理をGPUで行う場合、ピーク時の性能がM4チップ比で4倍以上、M1チップ比で6倍以上と、飛躍的な向上を実現する。
生成AIをM5チップでローカル実行できる利点は、必ずしもプライバシーだけではない。繰り返し試行する場合、ローカル処理の応答性が高まる。もちろん「最後は高品位にクラウドで」ということもあるだろうが、今後は少なくとも試行錯誤のプロセスはオンデバイスで行うことが多くなるだろう。
もちろん、グラフィックス処理そのものも強化されている。ハードウェアレイトレーシングエンジンは第3世代となり、リアルな陰影描写を高速化している。レイトレーシング利用時のグラフィックス性能は、M4チップ比で最大45パーセント向上したという。
加えて、総合性能に大きな影響を与えていると考えられるのが「Dynamic Caching(動的キャッシュ)」だ。メッシュシェーディングのアクセラレーターと共に新世代となり、負荷の高い3Dレンダリングやゲームでも処理のオーバーヘッドが削減され、平均GPU利用率を高め、効率的に性能を引き出せるようになった。
例えば、いよいよmacOS版が登場した「Cyberpunk 2077」は、M5チップでより滑らかかつリアルな映像表現を実現している。
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