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有機EL+タッチ対応で“再構築”された新型「MacBook Pro」 現地体験で見えた「PROLED XDR」の真価:本田雅一のクロスオーバーデジタル(3/5 ページ)

AppleがPROLED XDRディスプレイを搭載する「MacBook Pro」を発表した。Macとしては初めてのタッチ操作に注目が集まっているが、実際に触ってみて、本命はタッチ操作以外の部分にあることが分かった。

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PROLED XDRディスプレイは単に「高画質」だけでない

 PROLED XDRディスプレイは、単に「高画質なディスプレイ」というだけではない。

 数値でいえばコントラスト比は1000万:1で、全画面表示時でも輝度は1000ニトを維持可能だ。HDR表示時と、SDR表示時でも屋外利用時はピーク輝度が2000ニトに達する。従来のLiquid Retina XDRディスプレイのコントラスト比が100万:1、HDR表示時のピーク輝度が1600ニトだったことを考えると、着実に明暗差と見やすさを改善している。

 モノクロの階調は、レントゲン写真やCT/MRIといった医療画像を見るのに足る精度を備え、研究/教育用の「DICOM(※1)モード」も用意されている。色再現性は「Display P3」(※2)と「Adobe RGB」の両方にマッチできるよう作られており、「Rec.2020」のカバー率も80%を超える。

 映像/写真/印刷向けの「リファレンスモード」に加え、撮影カメラとリフレッシュレートを同期させる「Genlock」にも対応する。

(※1)Digital Imaging and Communications in Medicine:米国放射線学会と米国電機工業会が共同で策定した医用画像に関する規格で、国際標準となっている
(※2)Digital Cinema Initiativesが策定した「DCI-P3」をベースに、Apple独自の改良を加えた色域規格

数値
Appleは製品情報でもPROLED XDRディスプレイのスペックを数値でアピールしている

 PROLED XDRディスプレイは、画素ごとのチューニングも極めて深い。工場で全パネルを1画素ずつ校正し、そのデータをM5 Pro/M5 Maxチップに内蔵されたディスプレイエンジンに保存しているというのだ。驚くような手間をかけて、正確な色を再現している。トーンカーブも真っ黒からの立ち上がりがリニアで、白に向かうカーブも同様だ。

 加えて、このディスプレイをAppleが「XDR」と呼んでいるのは、周囲の明るさに応じてダイナミックレンジを的確に感じられるよう補正表示する能力があるからだ。

 ディスプレイエンジンは、表示する内容や画素の使用状況、温度とともに、周囲の環境に合わせた補正をかけている。このため、暗室でなくても、画像や動画の色味、トーンカーブを的確に評価できるようになっている。

 同じ仕組みは、有機ELディスプレイで問題になりがちな「焼き付き対策」にも使われている。画素ごとの使用状況を監視しながら、輝度や色を補正し続ける。

 これら全てを含めて、最大2000ニトのOLEDディスプレイは素晴らしい。単にスペックが優れているだけでなく、表示品質そのものが素晴らしいのだ。

ほぼリアルタイム補正
PROLED XDRディスプレイは、ほぼリアルタイムに補正され続ける

 このPROLED XDRディスプレイは、「iPad Pro」用のOLEDパネルを単に大きくしたものでもない。

 OLEDディスプレイは、その特性から画面が大きくなるほど、明るさや色の均一性を保つのが難しくなる。そこでPROLED XDRディスプレイで使っているOLEDパネルでは、画素を駆動するTFT(薄膜トランジスタ)を全て酸化物TFTで構成し、発光材料も大画面向けに選び直しているという。生産は、マザーガラスがこれまでの2倍以上になる「第8.6世代の大型OLEDライン」で行われているとのことだ。

 画面を薄くできたこともあり、M5 Proチップ搭載構成の本体重量は14インチモデルが約1.38kg、16インチモデルが約1.82kgと、わずかではあるが従来モデルよりも220〜320gほど軽量化を果たしている。

 性能だけ見ると、3月に登場した従来モデルと変わりない。しかし、ディスプレイの刷新と軽量化だけでも魅力を感じる人は少なくないだろう。

Mac初の「タッチ操作」は思った以上に“自然”

 それでは、Macとしては初となる「タッチ操作」を、本製品ではどのように実装しているのか。そこを見ていきたい。

 筆者が一番驚いたのは、違和感の少なさだ。

 画面にタッチを載せたPCのUIは、指で押しやすくすべくボタンやメニューを大きく表示するのが通例だ。事前の情報では、今回のMacBook Proでも「操作に応じてUI(ユーザーインタフェース)要素が拡大する」といった話もあった。小さな項目を指で正確に操作するのは難しいからだ。

 ところがMacBook ProのPROLED XDRディスプレイモデルにプリインストールされたmacOSは、見た目はもちろん、ボタンやメニューの大きさも従来のmacOSのままだった。それでも、メニューバーの項目や開いたメニューの中の選択肢を指で狙った通りに操作できる。

 既存アプリの対応が気になるところだが、デモンストレーションの担当者によると、基本的にタッチ(タップ)をクリックに変換しているだけのため、ほとんどのアプリはそのまま動くという。

 その上で、タッチ操作に対応するアプリでは、タッチターゲットを広げたり、一部のコントロールをポップアップさせたりする調整が入っているという。ただし、ほとんど変化には気づかない程度で、画面全体のレイアウトは従来のmacOSのままである。

 タッチ操作の高精度さは、「表示パネルの上にタッチセンサーを貼り合わせる」のではなく、「パネルの積層構造にセンサーを直接組み込む」方式で実装することで実現しており、結果的にセンシングの遅延も低減できたという。

 タッチを検出するコントローラーはiPhoneやiPadで使われているものと同系統のもので、それを含むディスプレイモジュール全体の厚さは、駆動回路まで含めて1mmに満たない。

何の変哲もないmacOS
PROLED XDRディスプレイモデルにプリインストールされているmacOSは、ぱっと見で従来と全く同じUIデザインを取っている

 「画面をタッチする」という新たな操作体系を組み込んだことに伴い、PROLED XDRディスプレイモデルでは画面ヒンジの再設計も行われている。そのおかげか、開いた状態で画面の最上部をたたいても、ほとんど揺れない。それでいて、開け閉めの抵抗が重くなった印象はなく、片手でもスムーズに画面を開閉できる。

 ビデオ通話中に画面へ触れた場合は、カメラ映像へと自動的に手ブレ補正をかける。たたいたときのわずかな揺れまで、カメラ側で打ち消しているというわけだ。

 熱設計にも、タッチ操作を前提にした変更が入っている。排気が画面の前に回り込まないよう、背面から逃がす経路に改めた。これはOLEDパネルが熱に弱いという背景と、指で触れる画面が温かくなることを避けたいという意図も踏まえた改善である。側面の吸気口も小さくなり、手の当たりにくい位置に移された。それでも、性能は従来のM5 Pro/M5 Maxチップ搭載モデルと変わらないという。

 公称のバッテリー駆動時間は従来モデルと全く同じだ。特性上、OLEDディスプレイは白い画面を表示すると消費電力が大きくなりがちだが、白背景の多いWeb閲覧のテストでも差がないとしている。

 カバーガラスにはiPadなどと同様の指紋の付きにくいコーティングを施している。「反射が気になる」という場合は、Apple Storeや一部の量販店でのカスタマイズ(CTO)購入時に「Nano-texture(反射抑制)ガラス」を選択することも可能だ。タッチを使わないのであれば、機能そのものをオフにすることもできる。

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