有機EL+タッチ対応で“再構築”された新型「MacBook Pro」 現地体験で見えた「PROLED XDR」の真価:本田雅一のクロスオーバーデジタル(4/5 ページ)
AppleがPROLED XDRディスプレイを搭載する「MacBook Pro」を発表した。Macとしては初めてのタッチ操作に注目が集まっているが、実際に触ってみて、本命はタッチ操作以外の部分にあることが分かった。
従来の「トラックパッド」でもできることもある
イベントのタッチアンドトライでは、デモンストレーターが次々とタッチ操作を披露してくれた。振り返ると、性格の違う2種類の操作が混ざっていることが分かった。
1つは、トラックパッドでもできる(これまでもできていた)操作だ。
Webページを指でスクロールする、写真をピンチで拡大して画面の中を見て回る、ウィンドウを横へはじいてタイル表示にする、3本指で上へスワイプして「Mission Control」を開く、「Dynamic Island」を引き下げて「Siri AI」を呼び出したりタップして再生中の曲を止めたりする――これらの操作はどれも気持ち良いのだが、キーボードのすぐ手前に優秀な操作性のトラックパッドがあるMacBookシリーズで、わざわざ腕を持ち上げて画面に触る理由になるかといえば弱い。
15年以上前にスティーブ・ジョブズ氏が「垂直の面に触り続けると腕が落ちそうになる」と言った問題は、この種の操作では何も解決していない。
例外は「iPhoneミラーリング」だろう。Macの画面に表示したiPhoneを、指でそのまま操作できる。iOSのUIはタッチのために作られたものなので、ここでは指の方が自然だ。
トラックパッドやマウスではできないこと
一方で、トラックパッドやマウスで動かす「マウスポインタ」では原理的にできない操作もあった。
音楽制作アプリ「Logic Pro」のデモでは、鍵盤とコードパッド、ドラムパッドを並べた新しい演奏画面で、デモンストレーターが指で“和音”を弾いた。
当然だが、和音は複数の鍵を同時に押さなければ鳴らない。トラックパッドやマウスでポインタを動かして操作する場合、ポインタは画面上に1つしかないので、和音を奏でることはできない。「ステップシーケンサー」にも、指で直接音を置いていける。
1000万ポリゴンの3Dモデルを両手でつかみ、回しながら拡大するデモも同じだ。「Pixelmator Pro」では、左手でOptionキーを押しながら右手の指で図形をドラッグして複製し、そのまま回転させていた。キーボードの修飾キーとタッチを組み合わせるこの操作は、これまでiPadでもMacでも味わえなかった感覚だ。
Final Cut Proでは、タイムラインをピンチで広げたり、編集範囲を指で直接マークしたり、クリップを目的の位置へ置いたりできる。
DaVinci Resolveでは、カラーホイールに指を置き、色温度や色相を追い込んでいくデモがあった。このアプリはAppleのタッチAPIを先行で実装しており、指の動きに合わせてホイールが反応するようになっていた。
MacBook Proに搭載されてきたトラックパッドも、マルチタッチ操作には対応している。しかし、基本は「画面上のカーソル1点を、相対的に動かす」デバイスとなる。
その点、画面へのタッチ操作は、画面上の位置をそのまま指し、しかも同時に複数の点を扱える。この“絶対位置”と“同時多点”が効く場面では、指はポインタにない自由度をもたらす。
こうした作業を、プロがスタジオで行っている作業の「メタファー」として、アプリケーション上で実現することが、タッチパネルをMacBook Proにもたらす理由といえるのではないだろうか。
音楽制作なら、MIDI鍵盤やパッドコントローラー、カラーグレーディングならトラックボールの並んだコントロールサーフェス、映像編集ならジョグダイヤルやリファレンスディスプレイといった専用の機材が手元にあるはずだ。しかし、これらを屋外に持ち出すことは、できたとしてもかなりおっくうだ。
その点、MacBook ProのPROLED XDRディスプレイモデルを「持ち運べるリファレンスディスプレイ兼コントローラー兼鍵盤」と考えると、タッチパネルは「持ち運べるクリエイター向けコントロールサーフェス」になりうる。DaVinci Resolveでカラーホイールのデモを見せていたのは、まさにそうした意図からだと思われる。
アプリ側の作り込みは、Appleの自社開発アプリはもちろん、サードパーティーのアプリでも進んでいる。Appleは自前の「Creator Studio」を作り込んだ上で、「Adobe Lightroom」「DaVinci Resolve」「Blender」「Cinema 4D」「ZBrush」「Shapr3D」「djay Pro」、さらに「Microsoft Office」といった他社製アプリをタッチ操作対応アプリのリストに並べている。
ただし、他社製アプリが正式に対応してリリースされるのは“2026年内”とされている。パートナー各社の対応作業には、1週間ほどで済んだものも多いという。6月のWWDCでmacOS 27の「Sidecar」にタッチ操作を開放していたのも、iPadを使ってアプリのタッチ対応を先に試せるようにするためだったようだ。
余談だが、MacBook ProのPROLED XDRディスプレイモデルはApple Pencilには対応していない。2021年当時、ハードウェア担当だったターナスCEOは「iPadは世界最高のタッチコンピュータだ」「Macは間接的な入力に最適化されている」と語っていた。
Macにタッチ機能を持ち込んだ今も、その役割分担そのものは変えていないようだ。
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