低速データ通信にも大きなニーズがある――ウィルコムの鈴木氏
WiMAXやLTEなど、データ通信の高速化に注目が集まっているが、“低速のデータ通信にもまだまだ需要がある”と、ウィルコムでソリューション営業本部長を務める鈴木龍雄氏は話す。どの分野で低速通信が求められているのだろうか。
2009年は、データ通信の高速化が進んだ1年といえるだろう。7月からUQコミュニケーションズが下り最大40MbpsのWiMAXサービスを開始したのを皮切りに、8月にはイー・モバイルが下り最大21MbpsのHSPA+サービスをスタート。10月にはウィルコムが一部エリアで上り/下り最大20MbpsのWILLCOM CORE XGPサービスを開始するなど、各社が相次いで高速データ通信サービスの提供を開始した。
このようにモバイルのブロードバンド化が進む一方で、低速なデータ通信もまだまだ需要があるというのが、ウィルコムでソリューション営業本部長を務める鈴木龍雄氏の見方だ。
日々、法人顧客と接する中で、データ通信分野はマーケットが二極化していると感じると鈴木氏。「高速通信分野で法人の大きなニーズがあるのは当然のことながら、一方で低速のマーケットも大きいと感じている」(鈴木氏)
ウィルコムは法人向けデータ通信サービスとして、上り/下り最大20MbpsのWILLCOM CORE XGP、ドコモのFOMA回線を借りて提供する下り最大7.2MbpsのWILLCOM CORE 3Gに加え、最大通信速度が256kbpsの4xや512kbpsの8xといった低速通信を安価で提供している。この低速通信が、大容量の通信は必要ないものの、安価で安定した通信を求める企業から注目されているというのだ。
1つはM2M市場で、大きな伸びを見せているという。ウィルコムはM2M分野に注力しており、エレベーターに実装される通信モジュールについては、国内向けにエレベーターを提供する全メーカー(国内3社、海外2社)に採用されるなど実績がある。低速で安く使いたいというニーズはエレベーターのほかにも、コピー機やガスメーター検針などの分野で増えており、ウィルコムではこうしたマーケットへのアプローチを強化する考えだ。
2つめは固定回線の代替でバックアップ用途に使うケース。例えばATMのバックアップには固定回線が使われていることが多く、店舗が増えるとコストがかさむという。この用途でも大容量回線は必要なく、低速で安定している安価な通信が求められており、4xや8xの引き合いが多いという。
3つめはデパートのバックヤードや流通の倉庫などの屋内での利用だ。PHSは基地局が多いことから屋内浸透率も高く、低速でも安定した通信を屋内で使いたい場合に強いと鈴木氏は自信を見せる。「地下や通信しづらい場所でも、基地局を打って対応することもできる」(同)。
ウィルコムの法人部隊は他の通信キャリアに比べると規模が小さく、新たな市場を掘り起こしながら企業のニーズにきめ細かく対応することで成長してきた。高速化が進むデータ通信分野においても、高速、中速、低速をラインアップし、企業のニーズに合わせた提案を行うことで、新たな市場の創出を目指す考えだ。
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