Google Walletは“広告”のため――キーパーソンが語る海外NFC事情:Open Mobile Summit 2011 San Francisco(2/2 ページ)
海外でも携帯電話を“おサイフ”として使うサービス立ち上がりつつある。米SFで開催されたOpen Mobile Summitのパネルディスカッションから、サービスを展開するプレイヤーの狙いや小売店側の思惑がかいま見える。
小売店のニーズは――インフラ投資は順調に進むのか
モバイル決済サービスの普及には、小売店側のインフラ整備も欠かせない。これについてVisaのモバイル担当トップ、ビル・ガジャ(Bill Gajda)氏は、インフラコストが下がっており、自社も非接触型システムの導入を奨励する施策を展開していると述べた。
携帯電話を活用した決済サービスを成功させるためにはNFCリーダーの設置が不可欠だが、Googleのベディエ氏は、「小売店は、売り上げの向上や効率化につながるなら導入する」と楽観的だ。
しかし小売店にしてみれば、“単に決済が携帯電話ベースに変わる”というだけではない、もっと革新的な変化を期待しているという意見も聞かれた。PayPalのデビッド・マーカス(David Marcus)氏は、「小売店は、(オンライン、オフライン、モバイルという)マルチチャネルの現実を認識しはじめている」と指摘し、決済時(店を出る直前)ではなく、入店時にオファーする――といったことも考えていると話す。小売店は「よりリアルタイムでユーザーに密着した、リッチな体験をモバイルで実現したいと思っている」とマーカス氏。数年がかりでモバイル決済に取り組んできたというCitiのエンタープライズ決済担当マネージングディレクターのディクソン・チュー(Dickson Chu)氏も「小売店は新しい価値を創出すると判断すれば受け入れる」と述べた。
Visaのガジャ氏も「クレジットカード機能を携帯電話上で仮想化し、トランザクションを複製するだけではサービスは離陸しない」と述べるなど、付加価値の部分にチャンスがあると見ているようだ。Visaはかざすだけで決済できる「PayWave」を開発しているが、これは短期的なもので、長期的にはさまざまな決済方法を考えているという。「われわれはオンラインとオフライン、両方のトランザクションをリアルタイムで把握できる。このデータをどうやって活用していくかを考えている」という。例えば過去の購入履歴と現在の位置情報の組み合わせなどにより、新たなコマース体験を提供できるとガジャ氏は予想する。
キャリアは首を突っ込みすぎ?
日本のおサイフケータイはキャリアが旗振り役となってサービスが普及した経緯があり、米国では主要通信キャリアが参加してNFCを推進するIsisが立ち上がっている。パネルでは、モバイル決済でキャリアが果たすべき役割についても話が及んだ。
PayPalのマーカス氏は、通信キャリアはNFC機能のついた端末を顧客に直接訴求できる立場にあることから、役割は「ディストリビューション」だと述べた。これに対し、Citiのチュー氏は、「キャリアはそうは思っておらず、NFCにもっと深くコミットしたがっている」とみる。
Googleのベディエ氏は、「通信キャリアは何になりたいのかが分からず、さまざまなことに首を突っ込みすぎている。あれもこれもではなく、何にフォーカスするかを決断しなければならない」とし、その上で「キャリアはディストリビューションとして成功に必要な部品であり、われわれは協業していきたい」と述べている。
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