“もっと日常にARを”――普及に本腰のau、サービス開発を支援:簡単なサービスなら1日で(2/2 ページ)
KDDIがARサービスの開発支援に乗り出し、普及に本腰を入れる。ARプラットフォーム「SATCH」を立ち上げ、短期間で容易にサービスを開発できる無料のSDKとビューワアプリを提供。“まだARを知らない層”に響くサービスの開発を目指す。
KDDIでモバイルARアーキテクトを務める小林亜令氏は、SDKの開発にあたっては、高機能なARサービスを短期間で開発できるようにすることを意識したと話す。SATCH SDKでは、表示されたオブジェクトのタップで音や動画を再生でき、Webへの遷移にも対応。GPSと連動し、エリアに応じてコンテンツを出し分けるといったことも可能で、スマートフォンが持つさまざまな機能との連携に対応するという。そして「かざしてクーポンを表示するような簡単なコンテンツなら、1日で作れる」(小林氏)のもポイントだ。
3月の提供を予定している「SATSH VIEWER」は、SATCH SDKで開発されたすべてのサービスを1つのアプリから利用できるようにするビューワアプリだ。サービスごとに異なるアプリを用意すると、ユーザーはサービスを利用するためにいちいちアプリをインストールしなければならず、それが普及のハードルになる恐れがある。統合ビューワを提供することで、こうした問題を解決する考えだ。
統合ビューワには、画像認識ベースの「Vision view」、位置情報ベースの「Location view」、Webブラウザとして機能する「Web view」の3つのモードを用意。SATCH SDKで開発されたアプリが自動で登録されるポータルメニューも提供するなど、サービスのレコメンドにも力を入れるという。
SATCHはすでに、江崎グリコやサントリー、森永製菓らの企業が採用を決めており、3月をめどにサービスをリリースする予定だ。
“かざして飛び出す”その先に期待
新たな技術として注目されるARだが、現状は“かざして飛び出す”インパクトをアピールするものが多く、その先にある“ARならでは”のサービスの登場が期待されている。KDDIが無料でSDKを提供するのは、「より多くの人に使ってもらうことで新たなアイデアの登場に期待する面もある」(KDDI)という。
小林氏は、今後の進化のカギになるのは、画像認識の先にある画像理解、ソーシャル、同社の手のひらARサービス「てのりん」だといい、この3つの要素を軸に、さらなるプラットフォームの強化を図るとしている。
仏Total ImmersionのCEO、ブルーノ・ウザン氏によれば、2010年には200万ドルに及ばなかったワールドワイドのAR市場が2015年には15億ドル規模になるという調査結果もあるなど、市場は急速に成長しているという。
今はブランド認知やゲームなどが主な用途となっているが、今後はeコマースや医療、教育の分野など、幅広い分野への普及が見込めるといい、そのためにも“小道具の域を超えた本物のARサービスを開発することが重要”だと指摘する。
ARという“リアルをネットの入り口”にする技術が、KDDIの新たなプラットフォームで、どんなサービスの創出につながっていくのか――。今後の動向に注目だ。
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