iPadアプリを無料化、業務データのスマートデバイス活用を容易に――CFOに聞くFileMaker 12の強み(2/2 ページ)
社内に散在する業務データを集約し、iPhoneやiPadで有効活用したい――。こんな中小企業のニーズに応えてくれるのがFileMaker Proだ。iOSアプリを無料化し、導入/活用のハードルを下げる各種機能を実装した新バージョンについて、同社CFOのビル・エプリング氏に聞いた。
アプリ無料化でiPad、iPhoneへの展開が容易に
―― FileMaker Go 12を無料化した理由を教えてください。
エプリング氏 有償で提供していた前バージョンのFileMaker Go 11(iPad版は3450円、iPhone版は1700円)が、市場に大きな価値をもたらしたという自負はあるのですが、ビジネス向けの展開では手こずってしまいました。ユーザーが増えれば増えるほど、運用管理や決済などの面で煩雑になるからです。
すでに米国では、大手のお客様の病院チェーンが無償のFileMaker Go 12に切り替え、病院の中で全面的にiPadを使うようになりました。無償になったことでiPadを導入する際のハードルがなくなったと喜ばれたようです。
FileMaker Goは単体で使うものではなく、FileMakerプラットフォームの一端として存在するので、無料化がプラットフォーム全体の拡大に寄与することになると思います。
―― 新たなファイルフォーマットにした理由は。
エプリング氏 ファイルフォーマットの刷新は8年ぶりで、抜本的に手を加えて変えています。最善のソリューションをユーザーの方々に提供するために、変更する時期だという判断を下しました。今後、もっといい製品を出していくための基準値が新たにできたわけです。ここを土台に、新たな機能を作り上げていくことになります。
荒地氏 これまで使っていたFileMaker 11のファイルは、ドラッグ&ドロップすればすぐ新バージョンで使える状態になります。今まで使ったソリューションを移行するだけで、ハイパフォーマンスな機能を使えるようになるわけです。
FileMaker Goは、新バージョンでレンダリングスピードが上がっています。iPadは強力なデバイスではありますが、MacやPCに比べると非力であることは否めません。今回、レンダリング速度が向上したので、画像が一覧で出てくるようなデータベースでもスムーズにスクロール表示できるようになりました。
ファイル共有に役立つ「FileMaker Server 12」は64ビットネイティブアプリになり、大規模なデータベースを利用する際の検索やソートなどのパフォーマンスが向上しています。
―― FileMakerのユニークな導入事例を教えてください。
エプリング氏 医療分野は世界各地で関心が高いですね。医師や看護師は院内を移動することが多いので、iPadはまさにうってつけなのです。少し前に、病院の近代化の事例を紹介する機会があったのですが、その中で精神鑑定にiPadを使う事例を紹介しました。ほかにも乳幼児の成長を追跡するのに使うという事例もありました。
オブジェクトフィールドをフル活用している事例で興味深いのは、米バークリー音楽大学です。大学のリクルーターにiPadを配布し、各地で行う学生のオーディションデータをiPadで記録し、クラウドベースのシステム上にアップロードするという使い方です。FileMaker 12はオブジェクトフィールドが強化されているので、2012年にはこのような画期的な事例が増えてくると思います。
荒地氏 日本では、動物のお医者さんが使っているケースがありました。家畜の牧場に出向いて治療をする際、PCを開くのが難しい場合でもiPadなら使えるそうなんですね。カルテなどのデータベースを作って現場でデータを入力し、それをサーバにアップロードしているといいます。
―― ファイルメーカーは、どんな企業に適しているのでしょうか。
エプリング氏 iPadの登場でビジネスのやり方は大きく変化しています。そんな中で、「業務にiPadを役立てたい」「iPadで何かしなければならないと分かっているものの、最初の一歩をなかなか踏み出せない」とお考えの企業にとって、FileMakerはうってつけの環境だと思います。
FileMaker製品は柔軟性があり、最初からシステムの仕様をがっちり決め込むことなく導入できます。後からデータベースを修正できるので、安心して使っていただけるのではないでしょうか。iOS端末への展開についても、無料のFileMaker Go 12があるので、多額のコストをかけてネイティブアプリを作る必要がありません。自社のニーズに合った形にカスタマイズできるので、IT予算がなかなか取れない中小企業のお役に立てると思います。
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