支出ゼロをうたう神戸市、太陽光とバイオガスでダブル発電:自然エネルギー(2/2 ページ)
下水処理場の役割はきれいな水を作り出すことだ。今後はさらに発電所としても機能するようになる。これが神戸市の狙いだ。神戸市は初期投資ゼロで年間3000万円以上の発電収益が得られるビジネスモデルを採用し、エナジーバンクジャパンとの共同事業方式で実現する。
メタンガスは難しい
地方自治体が公有地を利用した発電事業に取り組む場合、公募を計画し、建設事業者を選定するという流れを採ることがほとんどだ。地方自治体側の出費をゼロにする手法もある。主に設備の省エネを推進するために採用されることが多いESCO(Energy Service Company)事業だ(関連記事)。
神戸市とEBJの共同事業はどちらとも違う。なぜこのような事業に至ったのか。神戸市はこれまで下水道処理場からエネルギーを取り出そうと努力してきた。下水処理後に残る汚泥には大量の有機物が含まれている。この汚泥をそのまま廃棄すると出費がかさむ。そこで、東灘処理場(神戸市東灘区)において、汚泥を発酵過程に通し、エネルギー資源として広く利用されているメタン(CH4)を得ようとした。
メタンを得ることはそれほど難しくない。困難だったのは生成したガスに不純物が混入してしまうことだったという。そこで大阪ガスの協力を得て、ガスの精製の研究開発に取り組み、メタン比率97%の「こうべバイオガス」の製造に成功。2008年から天然ガス自動車の燃料としての販売が始まった。2010年にはさらに不純物を減らし、精製後のガスを都市ガス導管に直接注入し始めている。都市ガスの主成分はメタンであり、純度が高いメタン注入はガス会社側にもメリットがある。
EBJは大阪ガスが2010年に設立した100%子会社。顧客側で初期投資を行わなくても再生可能エネルギーを利用した発電設備を設置できるサービスを提供している。
「EBJには初期投資を必要としないビジネスモデル特許(金融スキーム)があり、今回の事業でもこの特許を利用して事業リスクを減らすことができた。神戸市にとってのメリットになる」(保全課)。
発電収益はメタンガスの方が大きい
発電設備の配置と発電量を図4に示す。図4は図2と同じ設備を斜めから描き、完成予想図を重ねたものだ。
太陽光発電システムは垂水処理場の水処理施設屋上(約2万1000m2)に設置する。平らで、日照を遮るものがない貴重な空間だ。出力245Wの太陽電池モジュールを7980枚設置し、約2MWを得る。年間想定発電量は約200万kWh。
バイオガス発電システムの設置スペースは小さい。約200m2だ。ここに出力25kWの設備を14台設置し、350kWを得る。出力は太陽光発電と比較して小さいものの、設備利用率が高いため、年間想定発電量は太陽光よりも大きくなり、約250万kWhだ。さらにFITの買い取り区分が「メタン発酵ガス化発電」となるため買取価格は39円(税別)。太陽光の36円(同)よりも高い。このため、売電収入のうちバイオガス発電が占める割合は58%と大きくなる。
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