沖縄本島に3種類の燃料を使える発電所、島内の電源喪失に備える:電力供給サービス
沖縄電力はLNG火力発電所の構内に3種類の燃料を利用できるマルチガスタービン発電設備を稼働させた。LNGのほかに灯油とバイオ燃料を使って短時間で起動することが可能になる。災害時に島内全域の電源を喪失して停電が発生した場合には送配電ネットワークを起動する役割を担う。
沖縄県にはLNG(液化天然ガス)を燃料に利用できる発電所は1カ所しかない。2012年に運転を開始した「吉の浦火力発電所」で、コンバインドサイクル方式を採用して50万kWの発電能力がある。この最新の火力発電所の構内に、沖縄電力は新たに「吉の浦マルチガスタービン発電所」を稼働させた(図1)。3月20日に営業運転を開始して、発電能力は3万5000kWである。
新たに導入した発電設備は3種類の燃料を使い分けられる点が特徴で、LNGのほかに灯油とバイオエタノールを燃焼させてガスタービンで発電することができる。気体の天然ガスや固体の石炭と比べて、灯油やバイオエタノールのような液体燃料は発電設備の起動時間が短い。
この特性を生かして災害対策や需要ピーク対策などに灯油とバイオエタノールを利用する。沖縄県では特産品のサトウキビからバイオエタノールを製造する取り組みが進んでいて、エネルギーの地産地消を促進する狙いもある。
災害対策では沖縄本島の発電所が全面的に運転を停止するような事態になった場合を想定している。液体燃料を使って短時間で起動して送配電ネットワークの立ち上げに利用するほか、構内に2基あるLNGタンクの保安設備にも電力を供給して防災機能を強化する(図2)。
平常時でもLNGタンクの内部では熱によってBOG(Boil-Off Gas)と呼ぶガスが発生する。このBOGを燃料として消費する役割も担う。夏の昼間には補助電源として稼働させて、需要がピークに達する状況でも機動的に供給力を高めることができる。
吉の浦火力発電所にはコンバインドサイクル発電設備やLNGタンクのほかに、輸送用のタンカーを接岸できるLNG受入バースを備えている(図3)。新設のマルチガスタービン発電設備でも通常はLNGを燃料に使うが、運転中に燃料の供給状態に合わせてLNGと液体燃料を切り替えることが可能だ。
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