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増加する太陽光発電の事故件数、台風シーズンに行うべき対策と注意点:太陽光(3/3 ページ)
近年増加の傾向にある太陽光発電設備の被災事故。台風シーズンを迎えるなか、設備の安全対策や、万が一のトラブルの際にはどのような対応を行うべきなのか。ポイントをまとめた。
事故を予防する台風接近前の事前対策
台風に起因する事故を未然に防ぐためには、台風の特性(大雨と強風)に応じた対策を講じることが重要である。経済産業省では、太陽電池発電設備に対する台風期前の点検強化を呼び掛けており、その内容は以下の通りである。
- 太陽電池発電設備が電気設備の技術基準に適合していることを確認すること
- 太陽電池発電設備の架台・基礎などが必要な強度を有している事を確認し、また構造、強度に影響する接合部にゆるみや錆、破損がないことを確認すること
- 太陽電池パネルの架台への接合部にゆるみや錆、破損がないことを確認すること
- 電力ケーブルやケーブルラック取付部に、ゆるみや破損がないことを確認すること
- 柵や塀、遠隔監視装置などが、健全な状態に維持されていることを確認すること
- 太陽電池発電設備の点検後、対策の要否を判断し、必要に応じて、基礎のコンクリートの増し打ち、基礎・架台・太陽電池パネルの接合部補強などの飛散被害を防止する対策を行うこと
- 水上設置型太陽電池発電設備の支持物(架台、フロート、係留索、アンカー)について、アンカーとの係留部やフロート間等の接合部に損傷等が無いことや、フロート等の樹脂部材の劣化が無いことを確認すること
またNITEでは、大雨による被害が想定される場合に、以下の事前対策を取ることを求めている。
- 集電箱、パワーコンディショナ、屋外電気設備(キュービクルなど)を点検し、雨水の浸入が発生の恐れがないか確認すること。外郭に亀裂や破損など隙間がある場合には、雨水の浸入を避けるため、穴を塞ぐなどの措置を取ること
- 電気設備が水没、浸水しないように構内及び周辺の側溝や排水口の掃除を行い、水はけを良くすること
- 電気設備の周辺にある崖や法面が豪雨によって土砂流出するおそれがある場合には、補強工事や防護壁の設置、排水ルートの確保などを検討すること。崩壊の兆候が見られる場合には、土地所有者・管理者、自治体へ通報すること
台風通過後の事後対応
NITEでは、台風通過後は速やかに設備の臨時点検を行い、異常の有無を確認することを求めており、電気事故もしくはその疑いがある場合には、当該地域を管轄する産業保安監督部に報告することが必要である。
また、設備の被害が生じた場合は、安全を確認したのち、適切に修理・改修を行うことが求められる。作業の際は、主任技術者等や第三者(公衆)に対する感電・怪我等の二次被害が発生しないよう、慎重な作業が求められる。
なお、一般社団法人太陽光発電協会では、地上設置・事業用の太陽光発電設備が被災(水害)した場合の感電防止及び、被災設備の点検・撤去に関する手順・留意点を示したマニュアルを作成公開しているので、活用願いたい。
設備の被害が生じなかった場合であっても、将来の台風被害予防のため、架台を強化することや、設備や架台の設置位置をこれまでより高い位置に変更すること、排水ルートの改善等の恒久対策を検討することが望ましい。
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