第32鉄 ハッピーバースデイ! だから四国へ行こう:杉山淳一の +R Style(5/6 ページ)
「子どもじゃないし、もう誕生日なんかうれしくないや」――いやいや、大人だって誕生日にはイイコトいっぱい。今回は、1万円ポッキリでJR四国が3日間乗り放題になる「バースデイきっぷ」で、四国を一周する旅をご紹介する。
3日目:中村〜松山〜高松、特急に乗りっぱなしでゴールへ!
中村から土佐くろしお鉄道でさらに西へ。終着駅は宿毛駅だ。ここから先は鉄道がないので、バスで宇和島駅へ抜ける。別料金だが仕方ない。別のルートとして、土佐くろしお鉄道を引き返し、予土線で宇和島へ行く方法もある。しかし遠回りで時間がもったいない。何しろ今日が「バースデイきっぷ」有効期間の最終日。高松空港から羽田行の最終便に乗りたい。
宿毛駅を08:17に発車するバスに乗ると、宇和島駅に10:06に着く。さあ、特急の旅を再開しよう。特急「宇和海10号」に乗って松山着は12:13。7分後の特急「しおかぜ18号」のグリーン車に乗り継いだ。松山も見所いっぱい。坊ちゃん列車の伊予鉄道もあるし、道後温泉でのんびりしたい。しかしここも高松と同じ理由で今回はパス。
特急「しおかぜ」は岡山行き。この列車は高松行きの「いしづち」も連結している。本四連絡橋の手前の宇多津駅で分割するのだ。JR四国では珍しい電車特急でもあり、流線型の車体がカッコいい。グリーン車は「しおかぜ」に連結されている。高松行きの「いしづち」に乗らず、「しおかぜ」を選んだ理由は、本四連絡橋を渡ってみたかったから。「バースデイきっぷ」は、本四連絡橋を渡った児島までがエリア内。ちょっとだけ岡山県に入れるというわけだ。
瀬戸内の街を眺めつつ「しおかぜ」は快走する。造船の町、今治付近は、いかにも造船関連という工場や工員向けのアパートなどが並んでいる。室戸や高知、宇和島とは違う、人々の生活に根ざした風景が続いていた。やがて車窓左側、前方に白く大きな橋が見えてくる。本四連絡橋はさすがに大きい。列車はその懐に飛び込んだ。
児島から高松へは特急に乗らず、あえて快速「マリンライナー」に乗った。この列車のグリーン車は2階建て車両の2階で見晴らしがよい。そして運転台直後に展望席がある。本四連絡橋の鉄道部分は高速道路の下にあり、前方の展望は橋桁が連続する。それはまるでなにかのアニメで見たタイムトンネルのようで楽しい。顔を横に向ければ、柱の隙間から瀬戸内海の小さな島も見える。小さな砂浜でくつろぐカップルがいた。まるで南国のリゾートのようだ。もっとも、彼らの頭上にはこの橋がある。さては鉄道好きのカップルだな、とニヤニヤしてしまう。
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