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ベトナム中部紀行。ホイアンとフエ、2つの世界遺産の街を歩く(3/6 ページ)

タテに細長い地形のベトナムは国土の半分が海に面し、ホーチミンとハノイという同国を代表する南北の都市の中間にはいくつもの隠れ家的なリゾートが点在する。中部にある2つの世界遺産の街、ホイアンとフエを訪ねた。

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素朴で人なつこいモノ売りたち

 歩く速さが、いつもよりだいぶ遅い? トゥボン川沿いのバクダン通りを散策しながら、ふとそんなことを感じた。喧騒の都会ホーチミンなどと比べると、ここホイアンはどこかおっとりしていて、ホッとする街だ。

 午後の強い西日を正面から受け、額からアゴから汗がしたたり落ちる。そんな私を見て「これをかぶれ」と名物の葉っぱで編んだ三角帽を差し出すのは、土産屋のおばさんたちだ。通りの脇にシクロを止めて客待ちしているおにいさんが「歩くのは大変だから、乗れ」と私の手を引く。モノ売りの人が寄ってくると一瞬、身構えるが、立ち止まって話してみるとみんな心配になるほど人がいい。お世辞にも愛想がいいとは言えないけれど、日本から観光に来たという女性の1人は「買うからおまけしてよと交渉したら、無表情で一言『定価』と返されて、思わず吹き出してしまいました」と話していた。

ベトナム
葉っぱで編んだ三角帽を売るおばさん

ランタンの優しい光に包まれて

 道沿いに、ランタン(提灯)を売る店が並んでいる。いろんな形があって、いろんな色がある。ランタンもホイアン名物の1つ。骨組みは竹でできていて、竹の厚みを調整することで独特のカーブをつくり出す。骨組みの上に貼り合わせていくのは、紙ではない。布だ。それによってほの暗い、優しい灯りになる。

「日本の提灯は上と下からぺしゃんこに押して畳みますでしょ。でもホイアンのは、こうして真ん中のふくらんだ部分を潰すようにしてタテに細長くして仕舞うんです」と若い店員が実演して見せてくれた。「ホイアンにはベトナム中の人たちがランタンを買いに来るんですよ」

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色とりどりのランタンも名物の1つ
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ランタンに灯がともるホイアンの夜

 ホイアンでは、どこの家の前にもランタンが飾られている。昼間は見逃していたが、夕方になってそれに気付いた。午後6時を過ぎると、どの家のランタンにも灯がともり、やわらかい光が世界遺産の街を包みはじめた。ホイアンは初めて訪れた人がつい長居をしてしまう街──と、前に誰かが言っていたのを思い出す。観光客を気持ちよく受け入れ、ホッとさせてくれるのは、昔から交易のためにいろんな国の人たちが行き交ってきたからかもしれない。次にベトナムに来るときも、きっとまたここで多くの時間を過ごすのかな? そんなことを感じさせる街だった。

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