2015年7月27日以前の記事
検索
連載

7億円を投資してバイオ燃料の旅客機を飛ばすルフトハンザの本当の狙い秋本俊二の“飛行機と空と旅”の話(2/4 ページ)

地球温暖化の防止へ、エアライン業界でもさまざまな取り組みが始まった。環境規制の厳しい欧州では現在、ドイツのルフトハンザが、バイオ燃料による商業路線でのデイリー運航を実験的に続けている。

PC用表示 関連情報
Share
Tweet
LINE
Hatena

半年で1200回のテスト

 最初に取材に応じてくれたのは、バイオ燃料担当のアレクサンダー・ツショッケ氏だ。まずは彼に、今回のプロジェクトの詳細について話を聞いた。

飛行機と空と旅
インタビューに応じてくれたバイオ燃料担当のアレクサンダー・ツショッケ氏

 彼の説明によると、バイオ燃料によるテスト運航に要する期間は、7月15日からの約6カ月間。A321の2基のエンジンの1つに、バイオ燃料と従来の航空燃料ケロシンを50:50の割合で混合し使用する。

「このバイオ燃料は米国材料試験協会(ASTM)により承認されたもので、機材やエンジンの種類に合わせて調整する必要がなく、どの機材にも使用が可能です。6カ月間でおよそ1200回のテスト運航を実施し、結果として約1500トンのCO2削減を達成する計画です」

 そうツショッケ氏は解説する。なぜ、2基あるエンジンのうちの1基だけなのか? その質問には、こう答えてくれた。

「簡単にいうと、比較のためです。既存の燃料とバイオ燃料とで、長期間飛ばした場合にエンジンにどんな違いが生じるのか? それを正確に調べるには、気候や時間帯などまったく同じ条件で、2種類の燃料を同時に使用してみなければなりません。6カ月をかけて詳細のデータをとり、バイオ燃料の長期的使用でエンジンの寿命やメンテナンスにどう影響が出るかを研究することがプロジェクトの目的です」

飛行機と空と旅
通常燃料とバイオ燃料を同じ条件下で使用し、エンジンへの影響などを調査

燃料はネステ・オイル製

 使用するバイオ燃料は100%バイオマスを原料とし、ナンヨウアブラギリやカメリナ油、動物性油脂から精製する。製造しているのは、この分野で豊富な経験をもつフィンランドのネステ・オイルだ。同燃料を使用するにあたり、航空機のエンジンそのものを改修する必要はない。

飛行機と空と旅
ネステ・オイルのバイオ燃料を右主翼のエンジンに給油

 「ネステ・オイルはルフトハンザの長年のパートナーであり、持続可能な供給・生産プロセスの確保を徹底して欧州議会の基準を満たしたサプライヤーです」と、ツショッケ氏は続ける。「地球環境を守ることがプロジェクトの目的なのに、その材料の製造や調達過程で熱帯雨林を破壊したり、食料となる穀物の価格高騰を招くようなことがあっては、まった意味がありません。それじゃあ本末転倒ですからね」

 開始からすでに2カ月以上が経過し、実験データはどんどん蓄積されている。その詳しい分析にはまだ着手していないが、2012年の1月か2月にテスト運航を終えたあとは速やかに分析結果を公表して次なる実験の準備に入りたいとツショッケ氏は言う。印象的なのは、ツショッケ氏のその淡々とした口調だ。ルフトハンザは社会に貢献する取り組みを率先して進めている──そんな“PR”にはまったく関心がないとでも言うように。

飛行機と空と旅
デイリー運航による実験データは、どんどん蓄積されている

 それは続いて紹介された技術担当ディレクターのフランツ・ヨゼフ・キルシュフィンク氏にも感じたことだった。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る