空の上に8席限定のレストラン――ファーストクラスのメニューに新生JALの本気を見た(4/4 ページ)
ある日編集部に「JALのファーストクラスでは極上のシャンパンと空の上でしか楽しめない食事を提供しています。その試食会に来ませんか」という招待状が届いた。待っていたのは予想を裏切る料理やサービスの数々で……。
メインディッシュ3種はいずれも、味だけでなく盛りつけが非常に美しいのも印象的だった。写真を撮りそびれた「和牛のフィレステーキ」はステーキとフォアグラ、リンゴのソテーがハンバーガーのように高く積んであり、鮮やかな赤いリボンのような、揚げたビーツが散らしてある。見た目も味も驚いたのが「メカジキの味噌柚庵仕立て舞茸とともに ふわふわに削ったナッツとパルメジャーノ・レジャーノを散りばめて」。味としては、西京漬けのメカジキをソテーして、白味噌とユズのソースをかけたものを思い浮かべていただくと近いと思う。ここにパルミジャーノ・レジャーノ(チーズ)とマカデミアナッツを削って上からふんわりとかぶせてある。和食がベースになっている魚料理なのだが、おどろくほど華やかな味なのだ。
これらの料理の盛りつけも、キャビンアテンダントが機内で行っている。山本シェフは新メニューを考案するたびに自らが料理を盛りつけるようすを動画に撮り、キャビンアテンダントはそれを見て練習する。機内でもこの動画が繰り返し流れているのだそうだ。
温かいタルト+冷たいアイスの組み合わせ
デザートは「焼きたて温かなジンジャーオレンジのタルト ココナッツとヨーグルトのアイスクリームを添えて」。山本シェフは普段から、「温かいタルト+冷たいアイス」をデザートの基本形にしているのだという。冬なのでかんきつ類を使いたかったこと、オレンジとヨーグルトとココナッツのカクテルがおいしかったので、デザートに仕立て直してみた結果、この形になったそうだ。
JALのファーストクラス用メニューは、前菜からパン、メイン、デザートに至るまで驚きの連続だった。「機内食」という概念を壊す料理の数々は、味が良いだけでなくさまざまなアイデアにあふれており、フレンチレストランでもなかなかこれだけのコースはないと思う。冒頭に書いたとおり、山本シェフは日本料理の料理人であり、彼の店である龍吟に行ってもこの料理は食べられないのだ。「ここでしか味わえない料理を出す」という、JALと山本シェフの狙いが見事に実現されており、ひたすら驚くばかりだった。
……とはいえ、ファーストクラスに乗る機会など、筆者にはおそらく一生に一度あるかないかだと思われる。「ここでしか味わえない料理」の片鱗として、オリジナルのパンだけでも通信販売してくれたら、ファーストクラスに乗れない庶民も楽しいだろうなあ……などと思いながら「龍吟」を後にしたのだった。
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